第5話 永遠の死と永遠の生
落ち着け、落ち着け、落ち着け。
まずは春城がどうなってるかを確認するんだ。
やけに心臓の音がうるさい。こんなに俺の心臓は元気だったか?落ち着け。
「フミ、京一さん。あっちです!」
女神が店の奥、春城が吹っ飛ばされた方を指さす。
ジャリジャリと音を立てながら近寄る。
二回目ともなると、少しではあるが人が死ぬことに耐性がつく、のかもしれない。初めて春城が事故にあった時よりは落ち着けていた。
「店員さん救急車をお願いします。」
「は、はい」
店員は顔を真っ青にして裏に回る。今の俺はどんな色の顔だろうか。自分では落ち着けているつもりだが、ってこんなこと考えてる場合じゃない。次のために頭を回せ。
春城を見る限り多分死ぬ、即死ではなさそうだが。ならまた今日の24時に戻るだろう。
前回は後ろの横断歩道、そして二回目はその近くのコンビニ。大体同じ時間帯だった。それに同じ車。乗ってた人は…どうなんだ?前回の運転手ははっきり覚えている。なんせ目の前で轢いてたからな。
振り返り車を見ると運転手はいない、と思ったが違った。運転席で身をかがめ震えていた。
「すみません。ちょっといいですか」
「ちがう、違う、わざとじゃないんだ。」
「?店に突っ込んだことですか?」
「っそ、そうだ!店に突っ込むつもりなんかなかった。ただアイツを脅かすつもりだったのに。急にガキの顔が思い浮かんでそいつを殺したくなって。金髪のガキが目に入った瞬間意識が飛んで…そっから気づいたらここに突っ込んじまってて….」
「あいつって?」
「ってめぇには関係ないだろ!!」
そういうと男はドアを開け外に走る。
と同時に女神が店から出てくる。
「逃げてますけどいいんですか?」
「ああ、別にここで捕まえたって何の意味もないし。あと、捕まえようとして痛い目見るのはごめんだ」
「喧嘩弱いですもんね」
したことないってーの、喧嘩なんて今どき。
「案外冷静そうで驚きました。ふつう元自分が死んだらもっとショック受けません?」
「ぜーんぜん。グロ映画を生で見てるようなもんだろ?」
「いやそれそこそこきついですよ」
実際に二回目っていうのは何でも慣れる。どんなにおいしいものも。どんなにつらいことも。一回目のほど心を動かさない。それがいいことなのか悪いことなのかはわからんが、今回は良い事ととらえておこう。
「じゃ、おれは帰るけど、23時にこの近くの公園に来てくれ。場所大丈夫だよな?」
「え、あっはい。あ、その…」
「なに?」
「いや、えっと、ほら、事情聴取?とかされないですかね!」
「されるかもだろうけど明日だろ。屋外カメラもあるみたいだし。
で、その明日はまだ来ない。」
「そーですね…」
「23時、ちゃんと来いよ」
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家に帰り、布団に転がる。
さて、どうやって明日に行くかね。
前回とほぼ同じ時間。同じ車。同じ人。まあ車が同じだから当然なのだが。
これは完全な偶然で起きた事故ではないはず。そして前回の事故を避けた結果が今回の事故…
もし、春城の死亡が完全に回避できないのなら、俺が東の体に乗り移ったところで何の状況も変わらない。そんな意味のないことをさせるのがあの女神ってんなら話は別だけど、アイツはアイツで俺のサポートで現世に来てるんだからあり得ない。ならこの死亡回避はただの人間の東でもできるってことなのだと思う。だが…
考え込んでいると約束の時間が近くなる。軽く飯食ってから行くか。昼からなんも食ってないし。
リビングに降りると二葉ちゃんがいた。
「あ、やっと来た。」
「ん?なんか用あった?」
「ううん、やっとご飯食べれるって話。すっかり冷めちゃたし」
まじか。待ってくれたのか。
申し訳ないと思う気持ちとこんな良い子と十数年暮らしてたのか東!という嫉妬の気持ちが胸のうちでせめぎあう。
「今日、どうだったの?」
「えっ」
「ほら、入学式とか、クラスメイトとかいろいろあるし…」
「そうだなぁ。えっと、学校がきれいになってた」
「え?」
「あ、きれいだった!」
「へー他には?」
「そうだなぁ。一応友達もできたけど…」
「よかったじゃん。!私は心配だったよ。お兄ちゃん、人に気を遣いすぎて自分から友達って全然言わないし」
「そ、そだっけか?」
「他には他には?」
うわっいい笑顔
うーむ、帰りのことが印象強すぎてほとんど覚えてない。
だがこちとらフミヤだったころから兄貴だったんだ。下の子の質問にはしっかりと答えねば兄貴の名が廃るってもんよ。そうだ…あっ
「そういえば、僕っ娘がいたな!」
「僕っ娘?」
「そうそう、一人称僕の女の子。まあ美人だったから許される所業なのかもしれな
「へ、へー!!そーなんだ、ふーん...あ、二葉食べ終わったから行くね?」
先ほどの屈託のない笑顔から一変。ひきつるような笑いをし2回に上がっていく。
え、ええー。
あ、もしかして俺なんかやっちゃいました?
妹にする話じゃなかった!僕っ娘とか!完全に弟と話す気分だった!
弟とそんな話をするのかって?弟の趣味を完全に自分と似たようなのにして楽しくお話をしてましたが何か?ちなみに師匠越えよろしく弟は俺とは比べ物にならないほどのお宅になりました。
あれだな。もしこれがクラスメイトとか赤の他人なら、おっ嫉妬かな?なんてウキウキできるのだが二葉ちゃんから見て俺は兄貴だからなぁ。なんかこう、KOIが始まる予感がないんだよなぁ。
考えても見てほしい、妹姉がいる方々。自分のコイバナに不機嫌になる姉妹。その反応で、姉ちゃん俺のこと好きなんじゃねっとかなってたらもう捕まるだろ。
うーん、次二葉ちゃんととしゃべるときは内容を先に考えておこう。
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さて、公園についたのだが…
なんでいないんじゃあの遅刻女神は!
いやまて、まだ5分前。遅刻じゃない。大丈夫、普段はふざけてるけど時間には厳しいタイプって線もある。そう思い込もうとするも、頭に浮かんでくるのはへらへらしながら【遅れちゃいました、テヘペロッ】とはにかむ女神。よし、もしもしてきたらチョップだな。
「遅れちゃいました、テヘペ
「言わせん!!」
「あいぎゃぁぁぁ!!!なんですかなんですか!人のセリフが終わるまでにゲンコツって!今時げんこつする人何てあなたの父親くらいですよ!!」
「そうその通り!!俺はそうやって育てられたんだよ!」
「だからって遅刻したくらいでげんこつなんてします!!?」
「いやまぁ言うほど遅刻には怒ってないんだけど…」
ほら、あれだよ、予想がドンピシャで当たった時って自分の思う以上に力は言ったりするじゃん?それそれ….
「さすがにげんこつはやりすぎた。すまん。」
「そうですよ。いくら前世で女子にビンタされて土下座させられたからってとってもかわいい私に八つ当たりするのはよくないですよ」
「ちょっと待て。何その土下座×ビンタっていう地獄の屈辱セット。俺知らないんだけど」
「あー私もいつだったかは覚えてないです。ぼんやりあなたの人生みてたら急にビンタされて土下座してたから、ふふっ、あんまりにも、ぷっ、笑えて」
「その記憶を今すぐ消せ」
全くなんなんだその記憶は。俺は女子に土下座させられたことなんかただの一度もない、はず。え、これ、あまりにも忌まわしき記憶すぎて俺が忘れてるパターンとかじゃないよな?
うん、俺は土下座なんてしてない。膝をつきかけたことはあるが、土下座まではしてない…
やばい、思い出したら割ときつい。
「とりあえず、これからの行動をきいてくれ」
「はぁ」
女神には俺の考えたことを話す。
まあかなり端折ってだが…
「なんかえらくしょぼいですね」
「うるせ。これでだめだったら次考えるだけだよ」
「ダメだった時死ぬのは元自分なんですが」
「まあ元俺だし、そこはしょうがない。それに成功しても失敗しても俺自身が痛い目みんだぞ?」
「日頃、いや前世の行いですね」
おいおい、前世知ってるやつからのその言葉ってふつうそこそこのダメージ食らうぞ?
まあこの女神の言うことだからそうでもないけど」
「なんか言いました!?」
「お前にどう思われても何言われても気にかからんって言った。」
「こういうときって、いやなんでも?って言葉濁しませんか?!ふつう!」
「普通にとらわれちゃ普通にしか生きられないぜ?」
「普通に生きれない末路があなたの人生じゃないですか」
っく、こいつ痛いところを突きやがる。いやね、俺個人としては普通に生きてきたつもりなんだけど、傍から見たらそうじゃなかったというか…人との普通がかみ合わなくて地獄を見るってよくあるよね!
「あ、もう5分前ですよ」
「お、わかった。いやぁ、もどるとわかってて戻るのはドキドキするな。どんな感じだろ」
「えらく余裕ですね、まったく。人が死んでるっていうのに」
「春城を助けなければあいつは永遠に死に続ける。そして俺は永遠に死ねない。
どっちも地獄だよなぁ。」
「そーゆーもんですかね」
「まだこちとら未成年だからよくわからんけどな」
ザクッ!!
「うわぁ…痛そうですね…」
しょうがない。今確かめておかないとあとでもっとひどいことになるんだから…
腕の治っていく切り傷を見ながら俺は言う。
「刃物の扱いにはこれから死ぬほど気を付けるわ…」
「涙目でいわれると説得力が増しますね」
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その言葉を発した瞬間目の前の景色が変わる。
というか俺の体勢も変わってる。
我布団に来たり。
時計を確認する。
2017:04:10 10:30
はい、月曜日です。おはよう今日。全然寝てないけど。公園から一瞬でワープしたみたいだった…うん?今何時だった?
2017:04:07 10:30
月曜日に戻るって時間はランダムなのかよ…そーゆーの教えろよ怠慢女神!。
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