第4話 女神と俺と俺
「お前から俺に教えることは他に何があるんだ?」
「そうですね…こっちの世界のフミヤさんが死ぬとあなたは24時に月曜に戻る、くらいですかね」
そこまで話すと五限の予冷が鳴る。
っち。さすがに入学式当日から授業さぼるのは目立つな…てかなんで初日から授業、しかもバリバリの古典があるんだよ。
「あー、とりあえず教室に戻るぞ。おまえが先に帰ってくれ」
「?なぜです?」
「入学式から男女二人っきりって怪しいだろ」
「なんですかそれ。思春期ですか。異性と一緒にいるだけでからかわれるかもーって考える自意識過剰タイプの思春期ですか」
「うっせ。こちとらそれなりに思春期は卒業しとるわ」
「全然そうは見えませんけどね。」
「ほら行った行った」
「はいはい」
先にアホ女神を行かせ、ちょっと遅れて教室に入る。あと一分で授業スタート。危ね危ね。
「なぁなぁ。さっき遠寺さんとでていったよな。なに?知り合い?」
席に座ると、春城が尋ねてきた
「あーほんの少しな。」
「へー、かわいいよなぁ。狙っちゃおっかなぁ。」
「バッ!!お前、まじでやめろよ。いややめてくれ。お願いします。」
「何だよ東も狙ってんじゃねぇーか」
「いや、断じて違う。」
何も知らないとはいえ自分があんなアホ女神に恋慕を抱くなんて考えただけぞっとする。何としても阻止せねば。
「ほら、えーと、尚江さんとかかわいい、というかきれいじゃね?」
とりあえず話題をそらそう。
「えー、お前ああいう子がタイプなの。なかなか強烈だったけどさ。性格すごそうじゃね?」
確かにあれだな。現実の僕っ娘ていうのはそこはかとなく地雷臭がする…
だがしかし、まだまだ経験の浅い子供のようだな春城。俺はこの18年間で自分がどういう子を好きになるか分かった。俺は見てくれがいい子というのは、相当中身でマイナスポイントを稼がない限りまあ好きになる。そして見てくれがよくはない子であろうとも俺にやさしい子には好きになってしまう。
つまり、顔も性格もマイナスに振り切らない限りはどんな女の子も魅力的なのである。
そしてマイナスに振り切った女の子、というのは、俺はこの18年間でかかわったことがない。あ、さっき初めて性格マイナス振り切りはみたけど。
以上の経験則から、僕っ娘という非現実的属性を彼女が持っていたとしても、性格がねじ曲がっていても問題ないと言える。QED。なんのだよ
「何ボーとしてるんだ東。」
「いや、我ながらガバガバだなぁと」
「ガバガバな何を考えていたのかな?授業中に」
「へ?」
見回すと、皆こっちを向いており、春城だけがうつむいていた。
おい、いつの間に授業始まってんだ。
おい、あの女神死ぬほどにやにやしてんぞ。先生、アイツを注意すべきだと思います。
「東君今日はきみに全て問題の解答権を与えよう。」
「…その権利は放棄することが
「できるわけなかろうが」
結果、初日から【危機管理ガバオ君】と担任から呼ばれるようになった。
これはPTA案件であると信じたい。
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「おい、ガバオ、一緒帰ろうぜ!」
「おい、次言ったら俺の人生掛けてお前の人生つぶすからな」
「そんないう!?わかったわかった。言わないよ。てかお前僕って言ってなかったっけ?」
「あ…遠寺も誘うから先に行っててくれ。」
「おい…まあわかったよ」
にやにやしながら春城は階段を下りる。まじで勘違いしてそうで怖いな。
それに、一人称どうしようか。どうしても俺、が出ちまうぞ。
「何してるんですか、ガバオ君」
俺は無言でそいつの頭をひっぱたく。
「あー!また叩きましたね!!DVだ!DVガバオだ!!」
「俺は【お前が叩かれたら、叩かれたお前に原因がある】って親から言われたからな。逆に言えば、おれが叩いた相手は、そいつに叩かれる原因があるってことだ。」
「うわっそれは普通にひきますね」
けっお前にひかれても痛くもかゆくもないわ。
それより、
「おまえ、俺の人生を何回も見てるんだよな?」
「ええ、まあ」
「ってことは俺が死んだ原因とかタイミングとかも知ってるってことだよな。教えてくれ。そしたらだいぶ楽に死亡回避できるし。」
俺の記憶があるのは人生一回分。こいつ曰く、俺は何回も人生をやり直してる。そしてそのやり直した分までこいつはみてるはず。なら俺の人生の死因の教えることくらいできるだろう。
「フミヤさん、いや今は京一さんか。あなたは自宅の二階に上がる階段の数を覚えていますか?」
「前の家なら12段だな」
「ぴょっ…え、と、学校の屋上に上がるときの階段は何段かおぼえていますか!!」
「11段だな」
「うう…」
「あいにく景色記憶だけは得意なんでね。」
「それを勉強にいかせればよかったで
「で?何が言いたいんですかねぇ!!女神様!!」
「あの、確かにあなたの人生の最初の最初はちゃんと見たんですよ。ですけどね!?そこからあなたが何回も死んじゃうもんだから!!」
「もんだから?」
「ほとんどみてません!!!」
「君は叩かれるのが好きなのかな?ん?」
「暴力反対です!!!今手上げたら叫びますよ!!」
このアマ!!!
ていうかまじかよ、最後の頼みの綱まで切れちまったよ。まあそもそも綱って呼べるほど太い期待でもなかったけどさぁ。これまじで前情報なしで春城の死亡回避せなあかんのん?
「大丈夫ですよ!私のサポートもあるし!」
「おっなんか能力的なのもってんのか?」
「一人より二人!!!ですよね!」
「もうお前に期待するのやめるよ」
「何ですかその顔!!」
「だって考えてみろよ!!こちとらわりかしフツーの高校生活が終わったと思ったら殺されて、わけわからん女神に言われて、違うやつの体に入って、その世界の俺を助けろって言われてるんだぞ??!しかもその死亡についての前情報なし!
しいて言うならループができることが恩恵なのかもしれないけど、俺が何もしなかったら永遠に抜けられないループじゃん。俺が助けなかったらこっちの俺死ぬ運命らしいし!」
「永遠の命をてにいれちゃましたね!世界中の、いや人類の悲願を達成しちゃいましたよ!」
「これで喜べたらなかなかのサイコパスだぞ…お前は知らないだろうけど、一生高校生って絶対つらいぞ」
もうこのトンチンカン女神には何を言っても無駄な気がする。
そんなこと喋り、というか俺が嘆いてるうちに春城と合流する。
昨日死んだ時間はもう過ぎてる。てことはあのトラックにひかれることはなくなったってことだよな。一応気を付けて帰るか
「ねぇねぇ、遠寺さんてどこ出身なの?」
「ああ、私はここからとおーい国で生まれたんですよー」
「えっハーフなの?」
「まあそういう感じですねぇ」
こんな具合に帰り路は二人でしゃべっている。俺はほとんど会話に入っていない。まあしゃべり相手がこの女神と自分っていうのもなんだかなぁ。
ここまではさり気なく昨日とは道を変えて帰っている。交通量も多くなく、あまり車の通らない道を選んだつもりではあるが油断は禁物である。
春城の家に帰りつくにはあの横断歩道を渡る必要がある。
たとえ信号を守ったとしても、突っ込まれたら一巻の終わりである。
そこで俺は考えた。
名付けて「靴紐ほどけちゃった、待ってて」作戦である。
1.俺が横断歩道の近くで、靴紐がほどけたふりをする。
2.結ぶ振りして完全に車の通りがなくなるのを待つ
3.車がいなくなって渡る
ふふふ、完璧な作戦である。あとは春城とアホ女神の両親を信じるのみ
横断歩道が見えてきた。俺は二人より前に行き、しゃがむ。
「あっ靴紐ほどけた、ちょっと待ってくんない?」
「あっ俺漏れそうだから渡った先のコンビニで待ってるわ!」
いや作戦の破綻が早い!!
「頼む、後生だ!待ってくれ!」
「えーフミヤさん先行っときましょうよ!」
おいアホ女神、なんでお前がそっち側なんだよ。俺の意図を汲んでくれよ!!
「いや、まあ待ってと言われたら待つしかないか!友達だしな!」
おお、さすが俺。心がきれいだぜ!どっかの金髪モサモサ女神とは違うぜ
「なんか失礼なこと考えてません?」
「いや、金髪モサモサ女神とか考えてないよ」
「ムキ―です!!なんですかその言い草!!」
頼むから邪魔だけはしないでくれ女神。
靴紐を結ぶ振りをしながら車が来なくなるのを待つ…
よし、いまだ
「サンキュ!渡ろうか!」
「やばい漏れる漏れる!!」
春城は渡った先のコンビニに入り用を足す。何とか間に合ったようだ。
それに、ここから家までは車がほとんど通らない住宅街。とりあえず車で死亡は回避したみたいだ。
俺と女神もコンビニに入る
「まったく、東さん靴紐結ぶのにどんだけかかったんですか。ぷぷぷ。けっこーお子様ですよね」
うそ、だろ。こいつ、俺が作戦に気づいてないのか?いや作戦と言えないほどおざなりなものだし違和感バリバリだったのに。
「…ごめん、今まで言いすぎたかもしれない」
「ふぇっ?」
「お前は現世に降りてきてまだ一日もたってない。いわばまだ0歳なんだよな」
「なんなんですか、その目!その慈愛に満ちた目!!」
「…ごめんな…」
「いや謝られても意味が
女神が言葉を止めたのは俺が原因なのか?
俺が目を丸くし女神の後方を見たからか?
それとも店内に鳴り響く最悪の入店の音のせいか?
さっき春城がトイレに入ったあたりには、黒塗り横長の、それこそ霊柩車をイメージしたような車が突き刺さっていた。
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