第19話 悩み人
火曜日。恐怖の月曜を乗り越えるものの後4日もある平日に絶望する曜日。
ハウエバー、今週の俺は最強である。理由は明白、春城のことを監視せずに済むからだ。
昨日は目安箱づくりなんていう意味の分からんことで時間をとられたからな。
今日は遊ぶぞー!何をするか。そうだ。漫画のネタバレを書いてみようか。ただのネタバレじゃない。まだ発売前の話のネタバレだ。これをすることによってネットで一躍有名人に…ならんか。多分作者から聞いたとか言われたりするかもだし、そもそも展開を予想してるやつもいるだろう。それに、俺の自己顕示欲が満たされない。
たまーに湧くよね。顕示欲。普段は割と抑えてるんだけど。
言ってしまえば俺は三年後からの未来人なわけで、それを生かして一山当てたいんだけど。いかんせん宝くじなんて買えなかったし。となると未来人のメリットなんてなくないか?
そんなことを考える昼下がりの授業。
ただでさえ一回聞いたことある授業なのに誰が真面目に聞けるか。
キーンコーンカーンコーン
お、終わった。いやぁ、やっぱ五限はぼんやりしてるに限る。
あ、ちゃんと一週目、春城だったころはちゃんと聞いてたよ。ホントダヨ。
「東」
そんなことを考えているとクラス一の運動神経のモテ女から声を掛けられる。
「これはこれは。男子を差し置いてうちのクラスの女子からの告白数第一位の尚江様じゃないですか。今だ告白どころかまともな女子との会話ゼロの俺に何の御用ですか?」ニコ
「ふふふ、もともとの顔は良いのにその下卑た笑顔で台無しにするのはもはや君固有の才能だよ。いつも眠そうなのもマイナスポイントだ。しかしえらく機嫌がいいね。どうしたんだい?」
別に眠くねーのに。何を言っとるんだこいつは
てかよくこいつ今のセリフから俺の機嫌がいいって思えたな。まあ合ってんだけど
「今週一週間は時間ができそうだな。で、尚江は何の用なんだ」
「いやその前に、女子との会話ゼロ、というのが気になったんだが?君はこの一か月、恵瑠、そして僕と喋ってるじゃないか。自分でいうのもなんだがこれでも人気はあるんだぞ?」
「いやお前の場合は女子人気だろ。男子から告られたって話聞いたことないぞ」
「いやいや、上の学年からは割と告白されるんだよ」
ああ、こいつの中身を知らないからか。外見は確かに健全というか健康的というか、非の打ちどころはないからな。それに常に笑ってるし。それが魅力的に見えるのだろう。
だが
「お前は中身がかっこいいからな。男として一緒にいたくない。」
「ずいぶんな良いようだな。僕だって女子なんだぞ?そういった言葉に傷つくこともある…」
「わ、悪かったよ。あー、うん、外見は女の子らしいぞ、うん。」
「ふふ、では本題に入ろうか。」
おい。人からほめ言葉カツアゲしといてなんもなしか。こういう時はもっと、【え///】みたいなギャップを見せる時だろ。全くわかってないな。
「昨日設置した目安箱に一枚入っていた。」
「何が」
「そりゃぁ、悩みの相談についてだろう」
ええー。さすがに早すぎないか?昨日の放課後設置して今日の昼休みには投函されたってことか?
それだけ重大な悩みならこんな怪しい部活動じゃなくて先生に相談しろよ。山田とか親身になってくれると思うのに。独身で時間もありそうだし。
「早すぎる、と言いたげだな。まあ君は見てないかもしれないがクラスラインで部の説明と悩みがある人は気軽に相談するように呼び掛けたからね」
「え、クラスライン?」
「ああ、君もクラスの一員なら一読くらいしてほしいものだよ」
「…ない」
「え?」
「俺、クラスライン入ってない…」
その場が、といっても二人の会話だったのだが、静まり返る。天使どころか悪魔が通って俺をぶっ刺して行きやがった。
「うぇい!!何話してんの!?」
ここで登場、春城くん。
「おい春城、お前クラスライン入ってるのか?」
「え、そりゃそうだろ。お前は…あ?!」
おい、なんだそのやっべ、という顔は
「えーとさ、ほんとはお前のこと俺が追加するってクラスの人に入ったんだけど、忘れてたわ、あはは!今から誘うよ」
殴りたい、この笑顔。まさか自分の顔についてこの感想を抱く日が来るとは
「いや、いい。」
「え、なんでだよ!不便だろ?」
「事務連絡はお前経由でしてもらう。お前にはその責任あるよなぁ?」
「別にいいけど…なおさら入った方がいいじゃねーか」
「い、や、だ」
この感覚はわかる人にはわかるだろう。というか分かれ。一回自分のことが忘れられた場合、あ、思い出した思い出した、と言われるともっとつらいパターン。どうせなら最後まで忘れててほしい。
これでグループラインに入ったととしても、【あ、東のやつ今更入ってやんのー】と思われる。それが嫌だ。自意識過剰というやつもいるだろうが仕方ない。俺が意識してしまった時点でこれはもうどうすることもできないのだから。
「まあ東は置いといて、永久は何の話してたん?」
「ああ、簡潔に言えば本格的に今日から部活動開始、ということだ」
「は?なんで今日から?明日からでもいーじゃねーか」
「悩む人がいるなら一刻も早く解決すべきだろう?ここで引き延ばすのはこっちの都合だし、何より男らしくもないだろう?」
いや、お前女じゃん。どんだけイケメン臭漂わせんだよ。俺が女子ならうっかり惚れてるぞ。
ったく、さっさと終わらせて自由時間を確保せねば
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「紹介しよう。悩み人の後藤 凪だ」
「あ、あの、友達から尚江さんのことを聞いて、悩みを聞いてくれるって…」
「違う違う、凪。聞くだけでなく解決までするんだよ!!俺たち5人でね!!」
放課後部員5人全員が集まった後、尚江が連れてきたのは、小動物のような女子生徒、後藤凪である。まあこの子は学年でも有名だったし、俺でも知ってる。伊達に3年間同じ学年で学校生活を送っていたわけではない。
「キャー!かわいいですねぇ!ほんとに同学年なんですか?!」
「けどいくらなんでも早すぎない?まだあの箱おいて一日もたってないのよ?」
秋田先輩と全くの同意見。活動早すぎるって。もっとゆったりとさぁ。
「で、後藤さんだっけ?あんたの悩みって?」
「あ、その…」
…あーなるほどね。
「おい春城、ちょっと出るぞ」
「え、なんでだよ」
「何ででもだ。尚江、終わったら連絡ヨロ」
「ああ、わかったよ。助かる」
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「おい東。なんで部室から出たんだよ。俺は部長だぞ?話を聞く権利あるんじゃね?」
「さすがに女子だしな。俺らが聞いてたら言いにくいことでもあるんじゃね」
「あ、なるほど。例えば?」
「え?そう、そうだな…まあベタかわからんけど、告白の手伝いとか?」
「あ、そゆこと。けどオレあの人のこと知らないんだよなぁ」
「まあクラス違うしな。簡単言えばいい人だよ」
「いいひと?」
「ああ、自習中に喋って奴らに対して静かにしよう!といっても嫌われないくらいの人望だったよ」
「だったよ、ってお前えらく具体的だし何で過去形なんだ?」
そりゃぁ見たからな。1年の時同じクラスだったし。
学級委員長という肩書は割と小うるさく、疎まれやすい人間がなるイメージであったが彼女は違った。
その仕事はこなし、しかもそこについての妥協はない。
そしてなんといっても俺の知る限り彼女に敵はいない。
これは八方美人とかではなく、シンプルに非の打ちどころがなかったからだと思う。
能力面で決して突出した人ではなかったが、誰にでも優しみんなに好かれていた。
そして何より、可愛い。その可愛さは1000年に一度とかいうアイドルに匹敵するほどである。小動物のような体、目、そのすべてが男女問わず庇護欲をそそるのだろう。
かくいう俺も多分惚れていた。何なら今も危ういくらいだ。
「他のクラスのやつから聞いたんだよ」
「うっそだぁ」
「は?なんで?」
「お前俺ら以外しゃべる人いないだろ?」
…こいつ表面上は熱血というかそんな感じのときあるけど、あれだな。根が悪いやつなんだな。うん、クズ。火の玉ストレートぶち込んで人を傷つけるクズだ…過去の俺なんだけどさ。
「人が喋ってんのを聞いたんだよ。それはいいとして、後藤さんのことだよ。やっぱり告白の手伝いと思うか?」
「なんか違う気もする。けどよ、もしそれが当たってた場合さ、俺らワンチャンあるくね?」
「はぁ?」
「だってさ、誰かに告白する手伝いっていうのは普通友達にやってもらうだろ。
けどわざわざアオハル部に来た。てことはだ、うちの部員に対しての告白って考えるのが自然じゃねーか?」
こ、こいつ、いつの間にこんなに頭よくなったんだ?なかなか辻褄はあってんじゃないか。
え、どうしよう。これは告白を待つのが正解なのか?それとも男らしく俺から行くのが正解なのか。どっちが…
【メールが来ましたよ!!早く見てください!見ないと二葉ちゃ】ポチッ!
「あ、尚江からだ。戻ってきていいってよ」
「お、おい東、今の着信音
「戻るぞ!!」
女神ぶっ飛ばす。
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