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月曜に初めて月曜に始まる  作者: 荻戸 凌丞
第三章
18/25

第18話 部活開始

大抵の新高1がクラスにも慣れ、五月病を発症する月となりました。ただでさえ学校に来ることが億劫になるのが五月。しかしそんな五月を抜けたとしても次はあめ、雨、アメの梅雨が来る。それを踏ん張ったとしても次は太陽さんが気張り始めるもクーラーをつけるには微妙な7月。全く日本の季節というものは。四季折々だと言えば聞こえはいいが実のところは4種類の地獄を提供してくる。

さて問題です。こんなことを考えている今の俺の機嫌は良いでしょうか悪いでしょうか?

正解は


「なんか東、今日機嫌いいな。珍しくニコニコして目もとがってないぞ」


この死に急ぎ野郎の言う通り今の俺はかなり機嫌がいい。機嫌がよすぎて季節のことを考えてしまうレベルである。

ちなみに今は昼休み。春城と弁当を食っている。この一か月でこの二人で食べるのが当たり前となった。わがアオハル部部員で同じクラスの女神、尚江、は別々で食べている。

っていうか尚江はわかるが、女神のやつよくクラスの女王と一緒に飯が食えるな。俺絶対気使って飯が喉通らねぇぞ。


「おい、聞いてるのか?こっちは朝っぱらからひどい目にあったのにさぁ。銃のはじめの朝なのに演技悪ぃ。」

項垂れる春城。

実は、俺がこんなに機嫌がいいのはそのおかげである。

春城は今朝、階段から転げ落ちたのだ。幸い俺下敷きになったことで怪我もなく済んだ。

なぜ俺がこれでハッピーかって?

もちろん人の不幸は蜜の味、というゲスな理由ではない。

自分の場合を考えてほしいのだが、高校生の時に階段から転げ落ちたことがある、という人はどのくらいいるだろうか。かなり少ないはずである(俺調べ)。

よって今朝春城が階段で転んだのは今週の死因であったと思われる。そしてまじで偶然俺が助けた。

従って今週一週間、春城が死ぬ心配をしなくて済み、ほぼ確実に来週を迎えることができる。

以上のことから俺の機嫌はこのやりなおし生活上一番いいのである。

いやー月曜の一発目でクリアとかマジで最高だな。この一週間何しよう。

春城の監視もしなくていいし。オラ、ワクワクしてきたぞ!


「全然聞いてねぇな…おい東、お前覚えてんのか?」


「え、何が?」


「今日から活動開始だろ!アオハル部!」


「げ、そうだったな」


「げ、ってなんだよ、げ、って。俺は楽しみだぜ!!俺の青春の始まりだ!」


うへぇ、まぶしいこやつ。俺の貴重な自由時間が自分で作った部活動に侵されていくよぉ。





「やばいやばい、もう全員着てんのかな」


放課後になり、ついに部活動開始。だが春城には先に部室に行ってもらっていた。

何でかあいつは部室を知らなかったので、教えておいた。山田のやつ、言っとくってたのに。

まあいい、初めて部活の始まり始まり


ガラッ


「ごめんごめん、ちょっと遅れたー」


「ちょっと京一さん遅いですよ!!皆もう席についてます!!」


「へいへい」

部室であるここ、多目的室Bは教室の構造が理科室のようになっている。つまり一つの大きな机に3・3で向かい合えるようになっている。

部室を一望すると、春城、秋田先輩、その向かいに尚江、女神が座っていた。


「失礼します」

「ん」

とりあえず空いていて一番近い秋田先輩の隣に座る。

一つの机に6人座る設計であるがそれでも普通の教室よりも隣の人との距離が格段に近い。 

というか50センチもない。

うわ、こんだけでドキドキする。

嫌でも仕方なくない?きれいな先輩の隣に座ってるんだよ?たとえ恋愛感情無くても並の男子高校生ならドキドキしちゃうだろ。

よく考えれば俺は19だが恋愛経験の関しては中学二年生の範疇を変えないレベル。

やっぱりドキドキしてもしょうがない。

あと単純に口の悪い先輩の隣っていうのもこのドキドキの69%くらいある。ヤダ、半分以上じゃん。


「よし、じゃあ全員そろったことだし、自己紹介からするか!俺は春


「大丈夫よ。あたしはここにいる全員と喋ったことあるし、あんたら同じクラスなんでしょ?じゃあ紹介も何もないわ」


「あーそうっすねー。よし、すわれ春城」


「お、おう」


「……………………何する?」



全員の沈黙からの秋田先輩が言った。

自己紹介をしないとなると特にやることはない。

いやホントは部活、をするのが普通だがその活動内容が【青春とは何なのかを研究し、実践する】という謎の活動理念なので具体性に欠ける。

ま、頑張れ部長。


「東、あんたが指揮とりなさいよ。部長なんでしょ?」


「え、俺違いますよ。春城っすよ」


「え、そうなの?てっきりあんたかと思ったけど」


「やだなぁ美郷先輩、部長は俺っすよ!春城は副部長!」


「あ、そーなの。よし、じゃあ東、あんたがまとめなさい」


「いや、今の流れで俺に来るのはおかしいでしょ!?」


「部長はどっしり構えとくもんなのよ。ほら、早く早く」


「いや、さっきと言ってることが


「ん?なに?」


「いや、何でもないです」


ぐぅ。こういう強引な人だから部員のみんなに邪険にされるんだ!もしかしたら陸上部のあのギャルズはそんなに悪い人じゃなかったのか?もしかして本当に先輩に非があったんじゃね?


「よし、じゃあ頼むわよ」ニコッ


「…わ、わかりましたよ」


こんな安い愛想笑い一つで絆される自分が憎い。ひいてはそんな程度の笑顔で絆されるような俺という人間を作り上げてきた環境が憎い…やっぱり美人はせこい。たとえ、切れ目で真顔が怖かったとしても、笑顔一つで男を動かせる。美人の笑顔はプライスレスだからな。どうしても体が言うことを聞いてしまう。

おっと、とりあえず話さないと


「えーと、この部活の活動理念は、青春とは何なのかを研究し、実践する、ていうのなんだよ。で、ここにいる人との親睦を深めるのもかねて、一人ひとり、自分の思う青春とは何かっていうのを言ってみてくれ。じゃ、まず、め、遠寺から」


ここにいる人たちは大概人見知りしない勢だからな。しいて言えば俺ぐらい。


「えー私ですかぁ。そうですね。私にとっての青春…うーん…この世界にあるアイス全種コンプリートですかね!!!ちなみに今は日本のアイスコンプを目指してます!!」


失敗した。最初にこいつに振るんじゃなかった。

こいつ人間としてまだ一か月程度だし、しかもどんくらいこっちにいるのかもわからない。

だから青春じゃなくて人生の目標を言いやがった。

何でこんな奴なのに友達は作れんだよ!?


「ふふ、やっぱり恵瑠は面白いな。確かにアイスを何も気にせずに食べれらるのは今だけも知れないな。恵瑠は今しかできないことをするっていうのが青春って言いたいんだね?」


いやいや尚江、解釈がえぐいよ。拡大して類推してもまだ足りないくらいの解釈だよ。


「じゃあ次は僕だな。僕は、人助け、こそが青春だと思うよ」


「へえ、その心は」


「うん、人助けっていうのは自分一人では成り立たない。助けを求めるものと助けるもの双方がいて成り立つ行為だ。そしていろんな人との関わり合いを通して人は成長していく。その成長期間のことを青春であると僕は思う。」


お、おう。なかなか珍しい考えというか、ひねくれなのか真っ直ぐ過ぎるのかわからんな尚江は。まあ人助け自体は俺も嫌いではないけど…いや人助けに好きも嫌いもないか。



「あたしはこの前その青春を失ったからパス」


つ、ツッコミづらい。あんたが足を怪我したのはかなり前だろと。

さすがに精神的なのもあるか。円満退部でもなかったし。


「わ、わっかりましたぁ!じゃあ次春城!ほら、かましてやれ!」


似合わない前振りをして空気を戻す。大丈夫こういう時にこの青春バカは本領発揮する。


「えーおほん。俺の青春とは、友達と、そしてそうでない人とともワイワイすることだ!!」


うひぇぁあ。女神とクオリティが変わらんレベル。だがナイス。これで空気は完全にお前の者になった。さすが俺。


「ていうのも!やっぱ社会人になったらワイワイすることにも責任持たなきゃいけないし、大学生活っていうのも大人な騒ぎになると思うんだ。だから今まだ少年少女の心を持っている高校のうちにみんなでなにかをしたいんだ!!」


…要は陽キャになりたいってことだろ?

じゃあ陽キャと友達になればいいのに。

それができないから今の俺が形成されてるんだけど


「なるほど。そんで具体的な活動は?」


「え?」


「いや、そのみんなでワイワイっていうのはわかったから、その内容は?」


「そだな…みんなで遊びに言ったりキャンプしたり!」


「…それを活動報告に書けると思うか?おれは山田から週一で出せって言われてんだぞ?」


「知ってるよ?ありがとな!!」


「すがすがしさは陽キャ並みだなおい。とりあえずもっと考えろ!!」


「えー俺部長だぞー」


「ならなおさら考えて物を言ってくださいお飾り部長!!」


「ぬ、じゃあ東の青春って何なんだよ!!」


「う」


全員がこちらを見る。やっぱり俺も言わなきゃだめだよな。

青春ねえ。こっちは既に高校の青春とやらは体験してるんだよ。

そしてそれをそのまま言ったらドン引きされること間違いなしなんだよ。

おい、なんで女神笑ってんだ。

そんな俺から言わせれば、正直なところ……

こうやって男女で何かしらの話をしている時点で青春を謳歌してるんだよ。しかも平和に喋ってるんだよ?土下座を強要する女もなしで。これを青春といわずして何を青春というのか。けど、さすがに【男女でしゃべってるのが青春です!】は気持ち悪い気がする。

下手したらクラスでのあだ名が【年中発情期】になってもおかしくない。

となるとこれしかないか…


「俺の青春は…」


「「「「青春は?」」」」


「人助け、かな?」



…………


「パクリとかサイテーですよ」

「東見そこなったぜ」

「君には面白い答えを期待したんだが」

「…」


侮蔑軽蔑失望呆れ。

様々な感情が一気に俺の体に突き刺さる。

だって、正直に自分の気持ちを言えない世の中なんて、もうパクるしかないじゃん!!


「それで、どうしたの?」


二葉ちゃんは興味津々に問う


「結局尚江って人の意見をまず実践するってことになったんだ。具体的には目安箱。悩みがある人はそこに投函するんだと。

今日はそれの作成設置で終わったよ」


「それにしてもあそこまでフミヤさんを馬鹿にしといて自分はパクリなんてほんとひどかったですよ。」


夕食の餃子を口に運びつつ女神がのたまう。

くそ、たとえ正論だろうとこいつに言われるのは腹立つな。

けど二葉ちゃんのいる前で暴言を吐くこともできないし。


「しゃーねーだろ。前のこというわけにもいかねーし」


「そういえば目安箱ってなんか聞いたことあるような…」


「お、二葉ちゃん、勉強熱心だね。目安箱っていうのは江戸幕府八代目将軍吉なんとかさんがとったの政策の一つで、困ってる人はここに意見を書いて入れてくださーいていう箱なんだよ」


「それってマジなんですか?」


「マジかは知らん。俺の知識センターで必要なレベル。故に人物名もほんのりでしか覚えてない。」


「じゃあお兄ちゃんたちは学校の将軍なんだ!!」


「うん、そういうことだ!」


「いや絶対ちがいますよね?わたしでもそれは違うと分かりますよ?!」


「うるさいな。二葉ちゃんが言ったことは正しいんだよ」


「普通ならとんでもないシスコンですけどあなたの場合…


「おい、それ以上言うな。俺を慕ってくる女の子なんか実際初めてなんだからな仕方ないだろ」


「お兄ちゃん目が怖いんだけど…」


「ああ、ごめんごめん。二部ちゃんがかわいすぎて目がびっくりしちゃったんだよ」


「か、かわいいって。どしたの急に?」


「京一さんほんとにキモイです」


…しょうがない。自分を慕ってくる女の子にはどのくらい優しく接するのかなんて授業で習ってないし。

これが現代の学歴社会、偏差値教育の弊害なのか?!


「あなたそこまで点数高くなかったですよね」


うるさい脳みそにアイスが詰まってるダ女神が。


ゲシッ


ダ女神は手が出るのも速い。

あ、足か。




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