第10話 勧誘
投稿予約したと思ってたのに投稿されなかった。
あれは夢だったのか?
【口が軽い】。この単語の意味は、おしゃべりで、言ってはいけないことまで言ってしまう(引用元 goo辞書)というものである。口が軽い人、というのは往々にして人からの信用を得難く、秘密の話にも入れてもらえない。
かくいう俺も秘密の話にはあまり入れてもらえない少年だった。このことから俺の他者評価は、いらん事をペラペラ喋る、という実に不名誉なものだったと思われる。
しかし、しかしである。俺も喋ることと喋ってはいけないことの線引きはしていた。何なら普通の人よりもくっきりはっきりラインを引いていたと思う。そのラインは、【相手から喋るな、と言われた内容は話さない】というものだ。なぜなら人に言われたくないなら口止めをすべきだし、しないのならそこまで重要度の高くない事柄だろう、と考えていたからである。
だが、たった今わかった。喋るなと言われない限り喋るやつ、そいつのことを世間一般で【口が軽い】くそ野郎と認定しているのだということが
「おい、ふつう男が涙目で思いを語ったことをペラペラしゃべるか?あ?」
「き、切れるなよ。別に友達だしいいじゃん。」
友達ぃ?こちとら自分から友達認定することがちょっと怖い性格になってんだよ。
自分は友達と思ってて相手からは知り合い認定されていた時の寂しさと言ったら。
こいつはまだ未体験だから簡単に友達友達言えるんだな?あと一年半経てば地獄を見るんだぞお前は。
あと、それ抜きにしてもここにいる人たちを友達と思えるかわからん。
尚江の一人称は【僕】で、しかもこう、自分に自信満々な感じをガンガン出してくるから恋愛感情はわかない。そしてこのクラスではかなりしゃべる。だが女子なので友達かどうかは保留。
女神はアホ女神なので友達ではない。
春城に至っては過去の自分なわけで友達かと言っていいのかわからない。こいつに付き合ってるのもそもそもループ脱却のためだし。
あれ?俺一か月たつのに友達といえる人0なの?やばくない?そんな人が部活なんて作っていいの?
「東。僕らは友達だろ?何か悩みがあったらいつでも相談してくれていいんだよ?
この僕にかかればどんな悩みだってたちまち解決さ」
う、うわー。まぶしいくらいのイケメンスマイル。女子なのに東並のイケメン度。
てか何で悩み?あ、職員室で泣きながら話すなんて悩みがあるって思われてもないか。
あとさらっと友達認定されてた。いやぁ、異性との友情って俺あんまり信じてないんだよなぁ。だから友達かどうかはやっぱり保留で
「東!何にやけてんだよ!」
「気持ち悪いですね。主に目つきが」
げっ、俺の本能が、女子と何らかの関係を築けてうれしい、と感じてしまったのか?
あとさり気にキモイていうなアホ女神。
「は、はは。悩みっていうか、出来たらでいいんだが尚江は俺らの部活に入んない?」
つーかこいつ駄目だったらあと2人も部員探さなきゃならなくなる。ぶっちゃけ【青春とは何なのかを研究し、実践する】ってふわっふわな怪しい部活入ってくれる酔狂な人がどのくらいいるのか。
「そういえば、東たちが作る部活ってどんな部活なんだ?」
「それは、部長から説明を」
正直恥ずかしくて言えたもんじゃない。先生の前では半分くらいトリップしてたし
「おう!まかせろ!俺が作ろうとしてるのは青春部!青春とは何なのかを研究し、実践する部活だ!」
この4人の周りに天使が通ったのかな?
そりゃこんな意味わからん部活内容の部活はそんな顔されるわ?
尚江のやつは俯いてプルプルしてる。こいつ、そんなにツボったか?
「ぷー!!なんなんですかその部活!ていうか部活なんですか?!よくそれで話が通りましたよね!私だったら絶対
「あはは、なんて言ってるかわかんないよ遠寺さん」
「がっ!!あ、あの、とっても痛いんですが。お、女の子にアイアンクローって普通の男子なら、で、できないと思うのですが…」
「あ、すまんすまん」
お前が余計なこと言うからだろーが。それに俺はお前のこと女の子認定してない。推定年齢100歳以上だぞ?自重しろおばあちゃん。
ゲシッ!!
涙目になって足を蹴るのをやめてくれませんかな大女神様。
…泣くくらいなら最初から変なこと言うなよ…
まあこいつは入部させるとして問題は尚江だが、
「ふふふ、面白いな東。何する部活か全く見当もつかない。
抽象的な言葉で部活動の内容を語るなんて勧誘する側の人間がすることではないのに!!
今までになかった部活だ!いいだろう。入ろうじゃないか!君らの部活に!」
そこそこ気になること言われた気が。それに部活の内容に関してはお前の言葉を参考にしてんのに。わすれたのか?
まあいい。この変人がよくわからないもんに手を出すってことはこの一か月でなんとなくわかってた。部活もまだ決めてないようだったし、これなら入ってくれると思っていた。
「実はさ、部活を認めてもらうには部員が5人必要なんだよ。あと一人、誰かいい人いないか?」
「あと一人?あなたとフミヤさん、永久さん。あと二人じゃないですか?」
「お前も入るんだよ。」
「は?嫌ですよ!!私には茶道部に入るっていう崇高な使命が
俺は人差し指、中指、薬指を立てる。傍から見たら急に指三本立ててどうした、という図だが、こいつには伝わるはず。
「私も青春部、入りたいです!!」
はい、買収完了。一点の曇りのない笑顔だなこいつ。お前の崇高な使命とやらはアイスさん三つで済むのか。
コソッ
「アイス3000円分ですよ?」
前言撤回。こいつの崇高な使命の対価は、男子高校生の財布には重たい。
「ふむ。そう言えば昨日陸上部に体験入部させてもらっていたとき、もめている人がいたようだよ。おそらくだが退部の話をしていたようだ。もしやめたとしたら、ほかの部を探してる頃じゃないかな。うちの学校は絶対部活入部だし」
「まじか!!名前わかるか?」
「確か、秋田 美郷、だったよ」
「あ、女子か…今日あたってみるわ」
「東!俺もついてくぜ!!」
当たり前だ。俺が初対面の年上の女の人とうまく喋れると思ってんの?
・
・
・
・
・
昨日の明日である水々しい今日、4月26日の昼休み。俺と春城は、秋田先輩の勧誘に二年の階に来ていた
「えーと、一組はここかなと」
春城、もとい、過去の俺、すげーな。普通に教室に入って「秋田先輩クラス知ってますか」って聞いてたぞ。怖いもの知らずか
俺なんて同学年でも他クラスに入るの嫌だし。あの珍獣を見るかのような目。あんな目で見られたら、心拍数上昇、のどの渇き、発汗、その他もろもろの症状が出てくるわ。
「すみませーん!!秋田先輩っていらっしゃいますか」
返事がない中でクラスの端からツカツカと歩いてくる。
「声がでかいのよ。あたしが秋田 美郷だけど、誰あんたら。面識ないんだけど。」
あ、怖い。なんか冷たい。
いくら俺好みのモデル体型黒髪ポニテだろうとも口が悪いのはNG。恋のドキドキじゃなくて恐怖のドギドギを感じるレベル。
それに釣り目のせいか目つきが悪い。目つきに関しては人のこと言えんが。
「あ、俺は春城っす。こっちは東。部活の勧誘に来ました!」
「はぁ?…ちなみに何の部活?」
「えっとですね」
そこから春城は、青春部のこと、部員が5人必要であと一人足りないこと、明日までに集めなければならないことを話した。
話自体はちゃんと最後まで聞いてくれ、馬鹿だと一蹴しないあたり普通にいい人なのか?いや別に悪い人認定したわけじゃないけど。
「青春部ね…別にいいわよ?。席置くだけならね」
俺としてはそれで全然ウェルカムなんだけど。何かこの人、えらい暗いな。
口が悪い人って俺の経験上明るい人が多いんだけど
…一応聞いとくか.。タイミング的に悩みはこれしかないだろ。
「あ、あの、やっぱり前の部活のこと気になりますか?」
「は?」
ギロリという音がしたかのように睨まれる
やっぱり聞かんけりゃよかった。やめて、殺すような目やめて!花の女子高生のする目じゃないです!
「いや、なんとなくそんな雰囲気が」
「ふんッ別にいいのよ。昨日… 終わったし」
「は、はあ」
ま、いいか。幽霊部員になってくれるなら別に問題ないし
「これに書けばいいのね?」
「あ、はい」
こうして、無事、秋田美郷先輩の入部届をゲットしたのだった。
この小説に対して「面白い!!」もしくは「続きがきになる!」と思った方はブックマークをお願いします!
また、評価はこのページの下側にある【☆☆☆☆☆】をタップすればできます!
この評価は作者の励みになりますので是非とも宜しくお願いします!
どんな感想でも反応があればより良く小説を書こう!と思えるのでご感想もよろしくお願いします!