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月曜に初めて月曜に始まる  作者: 荻戸 凌丞
第一章 入学式の帰りに目の前で死ぬ男
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第1話 初めての日

「好きです!付き合ってください!」


 一世一代の勇気を振り絞り目の前の女の子へ思いを伝える。生まれて18年、一度も告白したことのない俺にとってこの告白はのどから心臓が飛び出るほど緊張するものだった。女子に自分から話しかけることなど一年ぶり。


 卒業式終了後の校舎裏、いかにもな雰囲気ととともにOKが出ると信じこの場を選んだ。お願いします神様、仏様、天使様。どうか俺の灰色の三年間に報いを!!!


「ごめんなさい。私もうすぐ天使になるから…!」


 女の子はテレテレと意味不明なことを言って去っていった。


「神などいない。仏の顔は一度もない。天使ってなに?いるなら連れてこいよ…」

そうつぶやきながらアスファルトを踏む足取りはどこか、というかかなりおぼつかない。


 なんだよ!なにが「天使になるから…」だよ!完全に俺のこと相手にしてないじゃん!

いや確かに少しだけ俺はクラスから浮いてたかもしれないけどさ…

 …偶然大学も同じになって柄にもなく運命感じたのに。結論、今までの自分の信念と違うことしたらやっぱにろくなことにならんな、うん …はぁ。


 そんなことを考えていると横断歩道に差し掛かる。ああ、トラックが来てる。これに跳ねられれば異世界(笑)とかいけんのかな…

目の前には赤くともる信号、ああ、足を踏み出せば異世界に…





 なんて思って死ぬ奴がどこにいるんだよ。こちとら地面にはいつくばってでも生きたいんじゃ。男子、おっと、元男子高校生の生(性)への執着なめんなよ。それに俺を轢いたら運転手さん路頭に迷っちゃうかもしれないし。自分が原因で他人の人生狂わすとかこの年でそんな十字架背負いたかねーよ。

目の前をトラックが通り過ぎる

 しっかしどうしようかなぁ。あの人と大学同じだし気まずいなぁ。


 左手側から甲高い摩擦音がする。音のするほうに首を向ける。そして次の瞬間、0距離のトラックが俺の左腕に触れ、聞きなれないおぞましい音とともにメノマエガマックラニナッタ

「もしもーし、聞いてますかー」


「えっ」


 聞いたことのない女の子の声が聞こえると同時または瞬間遅れて目の前にある光景が広がる。動揺しながら見回す。明らかに現世ではありえなかった空間。明るくも暗い。漆黒に覆われているようで随所に七色の光がちりばめられている。そんな幻惑的な空間。上にも下にも横にも境界線がない。にもかかわらず俺はそこに立っていた。そして一つの感想を抱く。


 もしかして、俺死んだの?


「ちょっと聞いてなかったんですか、まったく、性格に難ある人ってのは知ってましたけど難聴ってことまでは知りませんでしたよ。あ、それともなんかトラウマで耳聞こえなくなっちゃった系ですか?」


「えっ、いや、いま、えっと、ここどこ?俺死んだの?は?え?」


 思わず目の前の女の子に問う。年は自分とそう変わらなそうであり、生で見るのは初めての金髪のロングヘア。いや、金と白の間というほうが適切か。背中まで伸びる髪は金の糸のようで、バックの漆黒によりさらに輝いて見えた。いや実際は、背景の光により照らされているだけなんだろうが、俺にはそれさえも神々しくも思えた。

 …その後ろにあるなんか見たことあるお菓子のゴミが若干の邪魔をしていたが。



「ああ、意識が戻ってない状態で私しゃべってたんですね。失敬失敬。私の美しさに免じて許して下さい。テヘペロ」

 

 キャルンッという擬音でもついてそうな態度で謝るその人。いや人かどうかも怪しい。あとテヘペロって今時どうなんだ?


「あ、えっと、いや、べつに、大丈夫です。」


 その神々しさとフランクさのギャップに気圧されながらもなんとか言葉を発する。


「ですよね!わざわざ私が謝ることもなかったですよね。さぁ、私を無駄に謝らせたことについて謝ってください!あ、頭を地面にこすりつけるまでしなくていいですよ?なんていったってわたしはとっても慈悲深いんですから!」


「はい?」


「ていうかあなたさっきから、すごくしゃべりが下手ですね?会話のキャッチボールがなってませんよ?あー私の美貌に見とれちゃったんですかー?それならしょうがないですね!だってわたしはとっても美しいですし!」


 徐々に、というか、それはもうすごい勢いでその子への敬意、畏怖、そしてわりと生まれていた好意、etc.が俺の胸の内から消滅していった。


「すみません一ついいですか?」


「あ、どうぞ」


「あなたは俺を殺せますか?」


「え、質問の意図がわかりませんけど、無理ですよ?というかここでは痛みっていう概念ないですし。ていうか痛い痛いって現世の人うるさすぎですよ、何でもかんでも。どんだけ痛がり屋何ですか。一回くらい痛みを味わってみたいですよぉ」


 その言葉を聞き安堵するとともに、張りぼての敬意さえも投げ捨てた。


「なぁ、俺って死んだの?」


「いきなり敬語やめるのは正直イラっとするんですけど」


 女の子のさっきまでのMAXの笑顔に、青筋が張り付く


「はやく答えてく、だ、さ、い、よ。」


「チっ。そーです。あなたは死んだんですよ。事故にあって。」


「ちょっと待て、今舌打ちした?ねぇ、舌打ちした?」


「細かいこと気にする男はモテませんよ?あっ、ごめんなさい…」


 申し訳なさそうに謝る。さっきのテヘペロと比べ物にならないくらい申し訳なさそうに


「おい、まるで俺がモテてなかったみたいに言うのやめろ」


「モテてたんですか?」


「…で?なに?俺は今流行りの異世界転生でもするの?できれば天国でのんびりしたいんだけど」


「露骨に話題そらしましたよ…ていうか天国なんてないですよ…あったとして自分が天国に行けるほど善人でしたっけ?まあいいや。

はぁ、やっと本題に入れます。春城フミヤさん。あなたにはある人を助けるために現世に行ってもらいます。」


「はいっ?現世って、俺が今まで生きてきた世界?」


「それ以外に何が?」


「いや、もっとファンタジー色あふれる夢の冒険世界とか…」


「そういう世界はあることにはあるらしいですけど、そこの世界の人自身が転生してるんじゃないんですか?」


「おいおいおい、じゃあなんで俺はトラックにひかれて死んでんだよ。いや望んで死んだわけじゃねぇけど、トラックだぞ?もはや異世界行きのドリームトレインと呼んでも過言ではない、あのトラックで俺は死んだんだぞ!」


「うわっ自分の妄想と違ったからって人にあたってますよこの人。あのですね,まだ話の途中なんです、よく聞けやdeath」


 おかしいな、死なないらしいこの世界でなんで俺は殺気を向けられているんだ?


「フミヤさん、あなたに記憶はないでしょうけど、あなたは今のところ軽く二桁超えるくらい死んでるんですよ」


「?というと?」


「ですから、あなた様々な理由で何度も死んでるんです。天命以外で!それを何回もやり直しているんです。でもあんまりにもだらだらやり直すからあんまりしたくないんですけど、記憶を持たせたまま現世に行かせようとしているんですよ」


 俺の中でいくつもの疑問が浮かぶ。天命って何?決まってるものか?やり直しの記憶がないのは?なぜ今まで記憶を持たせなかったの?



「あーえーと疑問はいくつかあるんだけど、それは置いとく。

 つまり俺がやるべきことは俺が現世に戻って、天命以外で死なないようにすればいいってことか。ん?ちょっとまて。さっきお前、ある人を助けろって言ってなかったか?」


「はい」


「なんで俺が死なないようにするために人を助けるんだ?」


「…人が人を助けるために理由がいりますか?」


 こいつ、いい笑顔なにいってんの?てか


「あんた自身は何者なの?」


「あー、私はですね…しょうがない、教えて差し上げましょう。私は、とってもえらくかつとっっっっても美しい女神なんです!!」


「OK。で、ある人を助ける理由は?」


「こいつ、流しやがりましたよ。もっとこう、女神様美しい!最強!とかないんですかね

「胸膨らまして言え、ド貧乳」


「あーあー!!!言っちゃいけないこと言いましたね!!セクハラ!セクハラですよ。だからモテないんですよ!!!」


「うるせー!!別にモテたくねーし?女だけが人生じゃねーし?」


「私はあなたの人生を見てるんですよ?あんなことやこ


「すみませんでした。話をお続けください」


「弱っ!!どんだけですか。プライド微生物ほどもないですね!

ええと、なんだっけ…

ゴホン…ある人っていうのはですね!」


「ある人っていうのは?」


「春城フミヤさん!あなたです!……あの、その振り上げている拳を下ろしてくれませんか。なんか高圧的というかあなたのほうが偉そうで嫌です。」


「まじめに答えろ…」


「はぁ…察しが悪いですねぇ。さすがモテない男選手権シード!」


「ほんとにここに痛みってものがないのか確かめてもらおうか?」


「だからその拳を下ろしてくださいって。全く短気な男は…

えっとですね、あなたには、東 京一あずまけいいちさんの体に乗り移ってもらいます」


「は?」


「あヤバイ、あと30秒で移転開始だ。ええとほかに言う必要のあることは…」


 女神はちらっと後ろに目をやる。そこにはごみに埋もれかけた、国語辞典何冊分かの厚さの本が置いてあるが…


「よし、大丈夫です!ほかに必要なことがあればメモを置いときますので!」


「いやちょっと待て!全然説明してもらってないし!その後ろにあるやつ絶対説明書的なのだろ!読ませろ!なんで俺が東の体に?!おいっ」


「あと10秒-」


「おまえ!覚えてろよ!次会ったら痛みってもんを教えてやる!」


「頼むから次は一発で天命全うしてくださいねー、あー疲れました。アイスアイス。今日はハーゲンダッツにしましょう!何味にしようかなぁ、あっこれいいかも【マイスイート 春摘紅茶香る 白桃タルト】うーん、私にぴったりの響き」


「まともに仕事しねぇでハーゲンダッツ食ってんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


(俺声は奴に届いたのだろうか。いや多分届いていないのだろう。もし届いていたらあんな笑顔でパクパクアイス(ハーゲンダッツ)を食べれるはずがない………)

「はっ」


 目が覚める。

 なんだかおかしな夢を見た気がするなぁ。全く。女神が適当な仕事してアイス(ハーゲンダッツ)を食うわけないじゃないか全く。ほんと、俺疲れてたのかな?、全く。


 ブツブツと独り言を唱えながら体を起こすと紙切れが一枚ひらりと床に落ちる。




 ●だいじなこと

 ・あなたは、きょうからさんねんかん、あずまけいいちとして、おなじくらすのはるじょうふみやをしからまもってください

 ・このせかいのはるじょうふみやがしぬと、もういちどやりなおしです。



 まるで小学生が書いたような拙い字で、そしてご親切に全部ひらがなで書かれていた。

 誰のいたずらだよ、全く、しょうもないなぁ。

 部屋をぐるりと見わたす。


「あれ?いつのまに模様替えしたっけ?あはは」


 思わず独り言をつぶやく。頬に汗がツーッと伝う。

焦る心を押し止められず姿鏡に体を映す。


「あの……….説明不足ド貧乳くそ女神ぃぃぃぃぃ!!!!」


 鏡には、それはもう、外見純度100%東 京一が立っていた。



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