初めての外
スライムとなり、城の外に出ることにした私達。城内の従者も驚いていたが、「楽しそう」と、目を輝かせて言ってくれた。
正門から出ると人間に怪しまれるので、裏口から出ることにした。背が低いので、扉を開けるのにとても苦労した。
「せーのぉ!」
「「んぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐ」」
「おらあ!」
「…」
「…」
私達は、初めての『外』に啞然とした。小さいからか、とてつもなく広く感じた。
「なんていうか…その…。」
「ど、どうする?俺から言っておいてなんだが、何をすればいいんだ…。」
「どうしましょう。」
その場で立ちすくんだ。これだけ広いと、今どこにいるのかもわからない。
「人間は『村』にいるんだよな。」
「はい。」
「行ってみようぜ。」
と、いうことで、私達は一番近い村に行くことにした。
「ここですね。」
『シルア村』というところにやってきた。しかし、なんだか異様な雰囲気が、村の奥から感じ取れた。
「わかるか?」
「ええ。」
魔王様もわかっていたようだった。
「や、やめろお!」
しばらく村を歩いていると、どこからか男の声がした。家の中から聞こえる。
「山賊にでも入られたのか?」
「そうでしょうね。」
とりあえず入ってみることにした。
木でできた扉は鍵がかかっておらず、スライムの私達でも簡単に入ることが出来た。開けると、早速人間がもめていた。
「おうおうおう。やっぱり山賊か。」
「なんだ、お前たち。スライムのくせにノコノコ歩いて来やがって。」
山賊が私達に気付いた。だが、私は動揺することもなく、短い手で山賊に薬を投げつけた。
「があっ!な、なんだこれは!」
山賊の周りが煙で見えづらくなった。私が今投げたのは、モンスターの言葉がわかるようになる薬だ。
「へへ、こんな体で投げる薬もよけられないとは、さすが人間だな。」
「随分口の悪いスライムじゃねえか。」
「何が悪い。私達は魔王一族のものだ。」
「はあ!?」
山賊はなかなかに驚いているようだ。
「俺が魔王だ。こっちの、ちょっと角があるのが、子分のドラゴン。」
私は、ちょっと角がはえていたのか。
「は、はあああ?い、威張ってるだけだろ、殺されんのが怖いから(焦)。」
「勝手にそう思っているがいい。事実ではない知識を自らの意思でもっているだけだ。」
「その気になれば、姿を見せてもいいんだぜ?」
「ふん。そんなことをいってもこいつ(村人)から奪ったのは返さないぞ。」
「そ、そんな。」
村人は、かなり焦っている。それだけ大事なものを盗まれたのだろうか。
「お、言ったな?」
「な、なんだよ。」
「じゃあそれを持ち帰ってみろよ。」
「ええっ!」
「はあ?」
魔王様は、何か策を持っているのだろうか。
「い、言われなくてもそうするぜ。」
そういって山賊は一目散にかえって行った。
「な、なにするんですか!僕の数少ない食料が!」
「ほう、もっていかれたのは食料か。ならば、あの魔法でもかけとくか。」
「え?」
すると魔王様は、ニヤリと笑い、こう言った。
「お前のを山賊に盗ませてお前だけ困った顔を見るより、どっちも不幸にさせたほうが、困った顔を1つ増やせるだろ?」