6.解体後の謎のお肉、食べるの?
さて、野菜を引き抜いたのはいいけれど、これを抱えて家に入るのは問題外だ。家が汚れるというよりも、あたしの着替えがない。既に少し遅いけれど、これ以上土に塗れると着替えに困るのだ。お風呂に入り最悪コートにくるまって寝るとしても、流石に昼間から裸族になりたくはない。鶏さんしかいなくてもだ。
食器入れの中にボールみたいなのあったかな?なければ大きめの鍋で運べばいいか。キッチンの水回りはしかっりしていたし、シンクは広かったから、野菜を洗うのも楽でしょ。アメリカンサイズのキッチンなのは、野菜のせいか。
感心しながら家に入り、お皿と一緒に並んであった食器水切りカゴのような物を持って外に出た。きっとこれが野菜の水きりなのだろう。
それなりに重い野菜たちを運び、とにかく調理をすることにした。
調理と言っても塩、砂糖、胡椒のみ。家探しもっとすればお酒ぐらいは出てくるかもしれないけれど、他のものはダメになっている確率が高そうだから、もう少し心の余裕が出てからにする。可能性があるなら、たぶんあるだろう地下倉庫かな?
水は舐めて飲めることは確認済みだ。
なので、野菜たちをそれなりに切り、炒めて火が通ったら水を入れて煮込む。味付けはシンプルに塩胡椒。肉類は期待できないから、とにかくゆっくり煮込んで野菜のうま味を出すことにしよう。
一時間ぐらい煮込んだところで、スープをスプーンで掬って味を見る。
うん。もう少し塩を入れて整えたら、良い感じ。キノコ類が入ってないからもっと淡白な味になるかと思ったけれど、野菜の味が濃いのか、しっかりと滲み出ている。玉ねぎの甘みとごぼうの大地の味、人参の栄養素の色で、見た目も悪くない。緑色が欲しいところだけど、あの上に生えている葉っぱは食べられるのだろうか?微妙な気がする。
でもまだ陽が落ちる夜までには時間がある。お昼はこれでいいとして、夜までにもうちょっと食材を探してみよう。
他の畑らしき場所を巡って、どんなものがあるのか確認することにした。
先ほどの畑の周りは、同じようにツルが伸びているモノが多い。何が出てくるかわからないけれど、同じものなら明日のほういいので、違う種類の物を確認する。
木らしきものに巻き付きながら出来ている赤い実は、トマト?大玉と言われるものよりも、一回り大きい。その横には、なすびとカボチャ、その横にはピーマンとキューリがあった。
どれもあたしが知っている野菜よりも一回り、二回りも大きい。凄いね。ここに住んでいたいとは大食いだったのかな?それとも収穫が楽でいいとか、沢山作ると面倒とかそんなものぐさな人だったりするのかな?
そんなわけないか。
取り合えず一種類ずつだけ収穫することにする。日持ちもするものばかりだし、あの冷蔵庫も活躍するでしょ。
さて、他には。
葉っぱ類の野菜みたいだけど、ちょっとこんなに誰が食べるというのだろうか。
ほうれん草?キャベツ、白菜、ネギ、小松菜?巨大すぎてさっぱりわからない。
あ、鶏さん。
ああ、なるほど。鶏さん達のご飯も兼ねてるのか。だけど、こんなに大きいのがいるほど食べるの?
コッコ。
声を掛けてくれたこの鶏さんは、どうやら部屋に案内してくれた鶏さんらしい。ここのボスかな?普通サイズの鶏さん達を従えている感じだしね。
コッコ。
「なに?」
羽で差してくれた方向には、卵があった。
「貰っていいの?」
コッコ。
夕飯に卵ゲット!
それならばもう少し欲を出して。
「食べられるキノコどこにあるかわかる?」
コッコ。
待ってろ。とばかりにどこかに行った鶏さんたち。
流石異世界というべきか。多分普通の鶏さんではないのだろう。それでも協力関係が築けるのだから、問題なし。
それどころか、本当に天使じゃなかろうか。
それぞれに違う種類の茸を持って、鶏さん達が帰ってきた。
「ありがとう!明日一緒に取りに行っても大丈夫?」
コッ。
「ええと、ダメってことかな?」
コッコ。
「そうなんだ。森の中だから危険なの?」
コッコ。
「でも、鶏さん達は行けるんだよね?あたしでも大丈夫な気がするけど」
コッ。
「無理?」
コッコ。
あたしってそんなにこの世界では最弱なのだろうか。常識を知らないという点では、間違いなく底辺だろうけど。ちょっと落ち込む。
シュンとしたのが分かったのか、慰めるようにお土産だとばかりに袋が差し出された。見た目は麻袋のようなものだけど、さて、何が入っているのか。
恐る恐る中を開ける。
「○%×$☆♭#▲?!」
折角、貰ったのだから、ここで、倒れたら、あかん・・・。
だけど、だけど、無理!!
「鶏さん、これ貰っても何もできない。触れない、捌けない、どうしていいのわからないよ・・・」
コッ・・・。
そんなに哀れまれても、泣きたい。
え、違う?
コッコ。
家の壁にある出入口のようなところに、袋の中身を鶏さん達が運んで入れた。
後で考えたら鶏が自分の大きさ以上の獲物を担いでいるということがおかしいのだけど、そんなことさえこの時は気づかなかった。それぐらい死んだ動物の頭を見てしまった衝撃は大きかった。
鶏さんが青のボタンを押すと、中で何かが動き始めた。
一体何が起こってるの?
鶏さん達が何かを見守るように見ていたが、5分後には音がしなくなった。
コッコ。
「大丈夫って、何が大丈夫なの?」
もどかしそうにしながらついて来いという鶏さんの後を追い、家の中に入っていった。
そして、冷蔵庫の前で一鳴き。
どうやら中を開けて確認しろという。
ドアを開ければ、昨日まで何も入ってなかった中に、ラップされ包まれたお肉が鎮座しています。
コッコ。
これを調理しろと?
あの一連の流れによるとこのお肉は、あの袋に入っていた動物?の肉ということ。鹿のような顔して歯が狼のような肉食獣の顔をしたあの・・・。
綺麗に解体され、見た目も美味しそうな霜降り肉から、赤みの歯ごたえ在りそうな肉まで各種揃っております。
食べられるんだよね?
他の鶏さん達もソワソワしながら家に入ってきた。
どうやら好物のようです。
お昼野菜メインのポトフ予定だったのだけど、ここで肉なしなんて選択肢はない、ね。
この世界の鶏さん達は、肉食だった。
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