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5.あたしって順応性あるよね

ドアを開け外に出ると、眩しいくらいに陽が照っていた。

体感的に朝の7時ごろの感覚でいたが、外はどう見てもお昼前の暖かさと陽の強さだ。

眩しい!し暑い!


自分の来ている服を見れば完全防備の冬仕様。

ダウンコートにマフラー、手袋。中にはニットのジャケットにヒートテックのインナー。

そりゃそうだ。寒さ厳しい夜からここに来て、そのまま寝たとはいえ、春か初夏らしき季節に着る物じゃないね。

急いでダウンコートとニットジャケットを脱いだ。

マフラーは眩しさ防止に帽子代わりにしてみた。手袋も外したいところだけど、触る物によっては危ないので、我慢してつけておく。


さあ、食料を求めて出発!

まずは確実に食料がある鶏さんが昨日案内してくれた林檎らしきものがなっている場所へ行く。

確かドアを出て左方向へ。太陽らしきものがあるので、地球で言えば東方向。よく見れば、何かわからないけれど、果実が沢山なっているのが分かる。小川を挟んで少し向こうには陽が良く差し込んでいる森があった。

近くまでゆっくり歩いて近づく。間違いなく食べられる林檎を千切って、齧った。

うん。やっぱり美味しい。

昨日は必死であまり不思議に思わなかったけれど、鈴なりに出来ている林檎って凄いね。成り方はミニトマトに似ているかもしれない。こぶし大の大きさとこの重たさでよくツルがキレないものだと感心した。

2つほど食べたところで、気になっていた隣の実を観察する。

黒に近い紫の丸い粒の塊が、房のようになっている。スモモの大きさぐらいある、ブドウ?

食べて大丈夫かな?

一粒とって匂いを嗅いでみる。

嗅いだ匂いは間違いなくブドウ。皮をむいで少しだけ齧ってみようかと思ったが、皮がかなり薄いらしく、張り付いて取れない。

これは皮ごと食べるタイプものらしい。

仕方ない。齧って確かめるしかない。女は度胸!


お、美味しい!

先ほど林檎を2個食べたから、意外にお腹がいっぱいだけど、これはあと一つなら食べられる。

喉が渇いていたから、喉も潤って一石二鳥だね。

数が沢山あるから、絞ってジュースにしても美味しそう。

そうそう、飲み物が問題。

こんな自然豊かな環境だから、水は大丈夫だと思っている。ただ、水も体質が合わないとかないか少量飲んで確認しておかないと。ある意味食べ物以上に死活問題になるからね。

保険のためにもこれらの果物は後でまた取りに来るとして、家の周りを一周してみよう。


そのまま家の裏に向けて歩こうかと思ってやめた。家の裏手は大きな山になっており、茸などの山菜が豊富そうだけれど、どんなものが出るのかわからないので、最後にしたい。ひょっこりと何かの動物が出ているとかあったら怖い。

なので、家の前の方にある何かが埋められている庭?畑らしき場所に向かった。


よくわからない葉っぱが沢山。

雑草なのか、野菜なのか、勝手に自生している何かなのかも、全くわからない。

取り合えず引っこ抜いて、確認してみるしかないよね。

異世界あるあるの鑑定があったら、生きる可能性が上がるのになぁ。


あ、鶏さん発見!

「鶏さん!これ食べられる?」

え、俺?みないな顔をした鶏が驚いたようにこちらを見た。

あれ?昨日の鶏さんじゃない。

いや、思うところはそこじゃない。なんで鶏に表情があるのかってことだよ!

一人突っ込むしながら答えを待つが、残念ながらその鶏さんからは答えは得られなかった。

どこかに行っちゃった。

残念。

仕方ない。やっぱり引き抜いてみるか。


手袋はしているからいきなり被れることはない。

せいの!

デカい、人参?小さい大根ぐらいある。

ツルが伸びているから、イモ類だと思って引いてみたのに意外だった。

もう一つぐらいあってもいいし、こっちの蔓も抜いてみよう。

せいの!

え、なんで?ごぼう?しかも細くなく、木の根っこだと言われたら頷ける太さだよ。これ、食べられるようになるのかな?育ちすぎて、気を齧るような固さだったりしたら、がっかりなんだけど。


こうなったら、こっちの蔓も抜いてみないと気が済まない。

気合入れて!

え、待って。先の方が千切れそうなんだけど。サツマイモのように連なって出てきたのは玉ねぎ。新種どころの騒ぎじゃない。これがこの世界の野菜の常識なんだろうか?

人参、ごぼう、たまねぎが一つの野菜から伸びた蔓に生るとか、この世界は食べ物が豊潤なのかもしれない。

――深く考えたところで答えが分かるわけがない。それならばここで生き抜くことが大事だ。


それに。

元の世界のことも断片的に覚えていることがあると、今気が付いた。

野菜や果物など、一般常識はしっかり覚えている。身についていると言ったほうがいいのかもしれない。

逆にわからないことは、それなりにある。

苗字、年齢、職業(会社勤めなのは覚えている)、家族構成、友人など、地球との未練を断ち切らんと言わんばかりに、望郷の念にかられるような記憶が全くないのだ。

だから元の世界に早く帰りたいという強い意志が芽生えないのかもしれない。ここに来てから一度も戻らなければと思えないのだから。


勝手な予想だけど、この世界の物を口にしたからこそ、この世界で生きていけるし、何となく理解が出来るのだと思っている。この世界に身体が順応するのに必要だったのだと思う。

この世界に馴染んでしまえば、元の世界に戻っても適応できないんじゃないかと。

これが思想誘導であったとしても、この世界で生きるしか今は術がないのだから、受けれてしまうほうがいい。それに、この不思議な環境が嫌いじゃない。


ということで!

お昼はポトフもどきを作ってみよう。

作ったら鶏さんも食べるかな?


読んで頂き、ありがとうございました。


次回からペース落とします。

明日からの仕事始め、バタバタします。

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