4.ハイテクな家だけど、魔力吸われすぎ
朝、鶏さんの美声で起きるという、初めての経験をした。
「鶏さん、ひよこちゃん、おはようー」
コッコ。
ぴよ。
ぴよ。
挨拶ができる異世界の鶏、凄い。
正直まともな思考回路になっているという自信がない。それでも今日を生きなければならない。あの紅い月の元で寝るということがなかっただけ、良かったと思う。今日の夜もまたあの紅い月なのか確認することにして、まずは腹ごしらえだ。
昨日から果物林檎しか食べてない。お腹がとても空いている。
コッコ。
足元にこつんと何かが当たったと思ったら、鶏さんが足であたしを呼んでいた。
「どうしたの?」
コッコ。
そう言って差し出してくれたのは卵。
「これ食べていいの?」
コッコ。
おお!卵ゲット。
焼くためのフライパンだとか調味料などがないか、家の中を探索することにした。
寝ていたソファからお尻を浮かして、台所らしき場所へ移動しようとすると、鶏さんに呼ばれる。
コッコ。
「あ、ごめんね。鶏さん達も朝ごはん食べないとダメだよね。今ドアを開けるね」
コッコ。
どうやら正解らしい。ひよこさんたちを連れ、鶏さんは出て行った。
「ありがとうね」
それでは今更ながら家の中を探索。
眠ったソファの奥を見ればすぐにキッチンがあった。これが目に入らないとか、昨日はどれだけパニックだったのだろうか。
少しだけ肩の力が抜けると生理現象が襲ってくる。
台所はわかったけれど、トイレは何処よ!
それらしきドアを開ければ、そこはお風呂場。
朝日が斜めに入り陽の当たり方が絶秒なのか、木の香りと緑のコントラストがとても好きな場所だった。
凄く好み!
じゃない!
今はトイレが先。
隣のドアを開ければ、目当ての場所だった。
ふぅー。
この年で色々と始末に困ることにならなくて良かったよ。
ただ、何というか。この後どうしたらいいのか。
流石に鶏さんに紙どこ?とか、流し方は?なんて聞いて答えてもらえるわけないし、マジで困った。
良くわからないボタンを兎に角押してみるしかない。
この赤ボタンは、びゃぁっ。
・・・。びっくりした・・・。お湯が出てきたよ。めっちゃハイテクなんだけど。
じゃあ、この青いのは水ってことかな?
じゃあ、この緑はなんだろう。
「紙を作りますか?」
はい?
「作る場合は魔力を流してください」
はい?
「魔力が不足しています。魔石を入れなおすか、魔力を入れてください」
謎な答えが返ってきた。返ってきたけど!魔力という言葉にビビッと来たよ!わかんないけど、もう一回押しながら何か流すイメージすればいいのよね?
よし!爆発はしないでしょ!
エイッ。
トイレットペーパーがストック合わせて12ロール作れるイメージを流してみた。
「魔力の補給完了しました。作成します」
その言葉の後、換気扇だと思っていた穴から、目の前の棚にトイレットペーパーが積まれて行った。
どこから作られてるわけ?!
???が一杯だけれど、それよりもトイレからでることを優先したい。
赤・・・お湯 青・・・多分水 緑・・・トイレットペーパー ならば、黄色は流すのはず!
水が出てきて流れる音がして、あたしの目的は達成した。
あたしは今、達成感に包まれている。
やればできる子!
ぐぅぅっぅ―――。
胸を張ってる場合じゃない。台所で食材何があるか探さないと。
フライパン大・小に鍋も大・小。これだけあれば何とかなる。目の前にあるのが、多分調味料。
サラサラとした白い粒が塩で、ちょっともったりした感触の粒は砂糖で、このミルに入っているのが胡椒かな?これだけあれば、どうにかなる。
後はこの棚の中に何が入っているのか確認。缶詰みたいなのがあれば嬉しいと思いながら開けたが、そこにはお皿があるだけど、何もなかった。
じゃあ、この箱みたいなのは冷蔵庫?ドアらしき場所がないけど、どうやって開けるのだろう。
「魔力が不足しているため、開けることが出来ません」
なるほど?トイレと同じってことかな?
何処かスイッチなのかわからないから、ペタペタと魔力、魔力と押し出すイメージで触る。
どうやら中央で開くものではなく、左端から開けるタイプのようで、そこにスイッチらしきものがった。
トイレの時はあまり感じなかったが、これはかなり魔力を必要としているのか、何かをズリッと引き出される感じがした。立ち眩みの予兆のような感じがした。
どんだけ奪うの。
「長らく魔力が補充されてなかったため、中身は処分いたしました」
そしてこれだけ奪って起動させておいて、中身が空っぽとか!
鬼か!
そうか、そうですか。ヘドロ化した中身を見ない、片付けなくて良かったと、思うことにしよう。
怠い。恐らくラノベとかによる数々の定説だと、これが魔力枯渇というやつね。
お腹空いたし、食べないという選択肢はないから、とにかく塩と胡椒振って、卵焼きだけでも食べよう。その後、昨日食べた林檎をデザートにしよう。
火をつけるのにも魔力を要し、かなりヘロヘロになりながら卵焼きを作って食べた。
濃厚な卵でとてもクリーミーで美味しい。
胃を膨らませるには全く足りていないけれど、この卵は滋養強壮にいいのか、怠さが抜けてきた。
流石話が分かる、鶏さんの卵だ。
お礼ついでに外に出て、林檎を取っておこう。
後、他に何か食べ物がないか、探さないと。お昼に林檎だけとか、食べられるだけましだけど、ちょっと寂しい。
まずは生きるために、足掻かないと!
読んで頂き、ありがとうございました。
ブックマーク&評価ありがとうございます。
本日もテンション上がったので、2回更新です!
明日からはペース落ちます。