26.バーサーカー再び、テイム
銃をセットで、準備完了。
後は加護を貰ったおかげで、それなりに増えた魔力を使ってここを乗り切るだけ。
気配を辿るともう少しだけ時間がありそうだ。
「狼君たち、先に食事して体力つけておきなさい。あたしももうちょっとお腹に物を入れておくから」
シッシの一番大きいものを出して、食事をさせた。
あたしも急いで混ぜおにぎりを食べた。
この混ぜおにぎりには体力回復と魔力増加が付与されている。
残念なことに、世界樹の葉ほど効果は出なかったが、森の中の薬草を調味料の中に入れることにより、効果が付くようになった。
これも加護の中で得た知識と、鑑定眼鏡のお陰だ。
「ん?リーダー君どうしたの?」
シッシの心臓部分に埋め込まれていた大きな魔石を持ってきて、強請るしぐさを見せた。
「これを食べたいの?」
大きく頷くリーダー君。
力を蓄えるために魔物は魔石を食べるというから、丁度いいのかもしれない。
「頑張って、皆を守るのよ!」
「ウォン!」
バリバリと魔石を食べたと思ったら、リーダー君の体は一回り大きくなった。
それに、毛の色が変わってるのだけど?!
灰色狼から黒狼へと種族まで変化しているし!
黒狼(※名前を付けてください)
群れのリーダー。梨花の従魔
格上の魔石を食べ、灰色狼から黒狼へと進化。
※名前を付けることにより、ステータスがさらに上がります。
あれ?従魔?
召喚術は召喚させるための魔方陣を描いて、召喚させる予定の魔石と体の一部(毛皮・羽・爪など)の上に、あたしの血を垂らして行うことだとは理解している。
そして、召喚獣は召喚術により呼び出しあたしの魔力で存在する。
対して従魔は生存するそのものを従えるってことだよね?
テイムしたということでいいのだろうけど、信頼関係か上下関係で発生するものなのかな。
この辺りはこれを乗り切ったら、マルク隊長にでも教えてもらおう。
先に名前を付けて、戦いに備えねば。
名前、名前・・・。
リーダーだから、リデルで。
「リーダー君、君は今からリデルだ!」
「ウォン!」
戦いに備えて他のみんなにも魔石を食べさせたかったけれど、どうやらそれらを解体して取り出す時間がなさそうだ。
おいでになすったか!
「みんな気張っていくよ!」
「「ウォー―――ン!」」
始めはデカい哺乳類たち。
角ウサギから始まり、大熊、シッシ、コカトリス。
「鶏肉!」
島にない肉!確保せねば!
「ちょっと、逃げるなコカトリス!」
10匹ほど確保したところで、森に逃げ帰られた。
「何でよ!根性なし!」
仕方ない。村人の為にシッシでも・・・。
だから、なんで逃げ帰るかな。
首を狙って撃って、首を狩るだけの方が肉に傷がつかないから、美味しいよね?
門がある後ろの方から、首狩り人とかボソッと聞こえてちょっと納得いかない。
哺乳類が森に逃げ帰る中、バラバラとやってきた虫たち。
どうやら欠損している虫もいるから、混乱状態で逃げた哺乳類たちにやられたポイ。
中々いい仕事をしてくれている。
さあ、あやつの手先の虫なんて、蹴散らしてくれる!
バーサーカー再び!!
「あんたたち、邪魔!」
ヒャッハー!
って、ヤンキーたちが叫びたいの、なんだかわかるよ!
アドレナリンが大量に放出されて、楽しくなってきたんだけど――――!
狼たちを見れば、ちゃんとリデルを中心に5匹が二チームで連携を取り戦っているし、負けてない。
安心して戦えるよ!
世界樹があった根っこから伸びてきた魔力の蔓が、段々と短くなっている。
さあ、どうすんの?
まだやる?
「世界樹!これ以上まだやるなら、沈めるよ?」
「マルク隊長!」
「あ、はぁい!」
なんで上擦ってるかな。こんなに優しく対応してるのに。
「婆様の家の裏の根っこ。あれ、燃やして!」
「あ、いや、それは!」
「あれが元凶だから。あれがある限り、この町はスタンピードがこれからも起きるよ。どちらを選ぶかはあなた達が決めて」
「良かろう!燃やすのじゃ」
「しかし、婆様!」
「あれのせいで、ここ100年皆がどんな目にあったか。どこからも捨てられた町。今更、枯れていたものを燃やしたところで、何か変わるのじゃ」
「ですが、燃やしたとなると、国が黙っておりません!」
「国?皆を飢えさせ、魔物の餌としてここに住まわされているだけに過ぎない我らに、何の義理があろうか。我らは捨てられた。それを今自覚したに過ぎぬ。違うか?」
「隊長!」
「マルク隊長!」
「よし!手が空いている者は、火を持て!今こそ、悪の根源である根を断ち切る!」
「「燃やせ、燃やせ!」」
「我らの同胞、親、子を奪った悪の根源!今こそ断ち切れ!」
枯れてから100年も経つというのに、燃えない世界樹の根。
シェルターから出てきた住民も手伝い、燃やせるものをあらゆる場所から持ち寄り、その上に火をかける。それでも火が付かない根に、皆で戦いを挑むように火をつける。
あたしもそれを見て、根が広がる森を見据えた。
門の外にある世界樹の根を。
「リデル達、暫くの間任せたよ!」
右手で銃をぶっ放しながら、左手に最大の魔力を乗せる。
両手から片手になった為に、コントロールが乱れあたしに近づく虫たちが増えてきたが、少々ならあたしは傷つかない。だけど護衛をするつもりで集まってきた狼たちが可愛いので、任せてみた。
さあ、この左手でもくらえ!世界樹の根!
「切断!」
激しい地響きと共に、深さ二mほどの断裂を生み出した。
その長さ何十m。
やりすぎた?!
「魔物か!」
「何だぁ、あの地響き!」
「おお、燃え始めたぞ!」
「さあ、今だ!皆更に火をくべろ!」
混乱しながらも世界樹の根を燃やしている町人たち。
あちらの戦いも、もうすぐケリがつきそうだ。
こちらも断裂が出来た時点で、蜘蛛の子散らすように虫たちは森へと逃げ帰って行く。
森の重たかった空気も軽くなったようで、良い風が吹き始めた。
あたしたちの勝利だ!
読んで頂き、ありがとうございました。
次回「27.クエスト達成と祝福」




