19.世界樹
家で魔力を使う時はスイッチを押すことが多い。あんな感じで魔力を押し出してみる?
それだと触れてないと流せてないから・・・。
それならばこの世界樹に抱きついて、魔力を押し出してみればわかるかも?
早速とばかりにくっつき、腕を大樹に回してみる。
あたしが何人いるだろうと思えるほど大木。
だけど触れてみればわかる。生命があまり感じられない。
注意深く足元を見れば枯葉が積もっており、靴が沈んでいた。
周りの花々が枯れることなく、潰されることなく咲いているのに、自分がいる一角だけが季節が違うかのようだ。
水を上げるといっても、要は魔力の塊が欲しいのだと思う。
帰りの体力ぐらいは残したいからね。
吸いすぎだけは勘弁してよ。
『元気になって』
労わるような気持ちで声を掛ければ、これ幸いとばかりに吸われている。
ちょ、ちょっと!遠慮しなさいよね!
手先が足先が冷えていく感覚に陥り、急いで手を離したがそのまま膝をついた。
冷えていく身体をどうすることも出来ず、ただ自分の中の熱が消えていく。
・・・なんで。
――意識が途切れた。
『相変わらず理不尽なことをする。
相手の都合など全く考慮されない。
人の命を吸い取り生きようとする。
なんて浅ましい。
これだからこの世界に魔女がいなくなるのだ。
滅されたいのか?世界樹よ』
『お前もだ。アル・アトラーンティース。
言いなりになる必要など何一つない。
大事な稀代の魔女を失いたいのか?』
『優しい落ち人よ。そなたに幸あれ。――加護を与える』
額から熱が吹き込まれて行く。
それが体中に巡った時、魔力の使い方、この世界の言語が脳に組み込まれて行くのがわかった。
そして今は読み取れない知識があり、時期が来れば封印が解けるように、読み解くことが出来るらしい。
そして知った一番の驚きは、世界樹が魔力食いだと知ったことだ。
世界樹はあたしも調味料の如く使っているけれど、とても貴重な物。
世界樹を枯らさないように、育てるためには魔力が必要となる。それらを補うために国で魔力が多いものを巫女として崇め、巫女に魔力を与えさせていた。
――巫女は次々と命を散らした。
子を産み育てる者が減れば、魔力を持つ者を減らすのは自然の摂理。
今の現状は、予想できたことだ。
ふーん。
だから得体の知れないあたしを餌食にするって?
ふざけるな。
あたしから名を奪い、
人との繋がりを切り、
人生どころか、命を奪う。
そんなものの為に、あたしは生きているわけじゃない。
あたしの命の身代金分は貰っていく。
使えるようになった風魔法で、枝を何十本も切り落とした。
これで50年は枯れないみたいだから、もう来ない。
自分のケツは自分で拭けばいい。
あなたが世界をコントロールしようとしなければ、
必要以上に、魔力を吸い上げすぎなければ、
そこに生きる者だけが必要な分を育て、与えていたならば、
もしかしたら・・・。
すべて~ならば、なんて空想の世界について吟味するつもりはない。
あなたがあたしの人生を奪った。
その事実だけが、あたしが分かっていればいい。
もしかしたら、今の知識もわざと植え付けられたもので、確かなものではないかもしれない。
――それでも、あなたがあたしの命を吸い取った事実だけは本物。
だから、来ない。
妖精たちも何かをしようとするならば、今すぐこの洞窟を火の海にするだけ。
それだけの力が今のあたしにはある。
「さあ、あーさん、帰るよ。こんなとこ長くいる場所じゃないし」
コッコ・・・。
「あーさんにも事情があるのはわかったから、取り合えず家に帰ろう。一人で帰って戻れなかったら、森ごと焼き払ってしまいそうになるからね」
コッコ。
帰りはまさかまさかのバーサーカー。
ストレス発散とばかりに、色んなものを倒したよ。
普通に魔力を魔法にすることは簡単に出来るようになったけれど、それよりも魔術具の方が魔力消費が少なくて済むし、コントロールしやすい。だから水鉄砲の如く、放射しまくった。
明日はマジックバック作ったら、ワイバーン保存して、酒を造るんだ!
造って、飲んで飲んで倒れるまで飲んで。
泣いてなんかやるものか。
この世界で楽しく、生きるのだ。
その為に完全防御が出来る結界とか、どんな怪我でも病気でも治せるポーションとか、どんなものでも切れるナイフとか、旅をしながら快適に過ごせる家とか、作ってみちゃうのも楽しいと思う。
それらが出来たら、この島の探検の旅に出よう。
いざという時の為に、蓄えは大事だから。
読んで頂き、ありがとうございました。




