11.錬金釜と謎の葉
朝ご飯を食べてから、錬金釜に嵌っている。今作っているのはパンだ。
小麦を見つけたからよし!と思ったところで、酵母がないことに気が付いた。仕方ないからナンみたいなにでもいいかと思ったが、なんと!果物を入れるだけで、酵母もどうやら作ってくれるようだった。
パン 錬金材料 《小麦と水とリンゴに塩少々・卵・バター》
本当ならばバターとか牛乳とかあればもっと美味しくできるんだろうけど、あったとしてもきっと冷蔵庫の中だっただろうから、今はない。卵も朝食べてしまったから、卵抜きで作ってみるしかない。
量はどれぐらいいるのかわからないまま、以前作っていたホームベーカリーの感覚で入れた。もしも出来なかったら、フライパンで焼きなおせばいいやと開き直り、スイッチオン!
焼き上がり時間10分。
何か文字が出てきたと思ったら、出来上がりの時間を教えてくれるようだ。
こんな短時間で発酵までしてくれるとしたら、めっちゃ高性能たと思う。
10分間眺めているのもどうかと思うので、冷蔵庫のお肉を確認しておこうと思う。何故なら食べたから鑑定出来るようになったのはいい。ただ表示されるようになった肉の名前が、動物なのか魔物なのかわからない種族で出るのだ。
昨日食べたお肉は『シッシ』という肉らしい。鹿や猪に味は似ていると鑑定では出るのだけど、どちらもどんな味かと言われたら、わからないとしか答えれない。だから昨日は煮込んだのできっと正解だったのだ。
そして朝食べたのが、『ブーブー』豚っぽい(バラ)と出た。塩コショウだけで薄く焼いてみたけれど、臭みなどなく噛めば甘みがあるとても美味しいものだった。量もたくさんあったので、これでベーコンを作る予定だ。
小売りされるぐらいのブロックに切って食べやすい大きさに切るのだ。なにせこの肉が一番大きくて冷蔵庫を占めている。90cmほどの正方形で、厚みが20cmほどもあるのだ。正直どうやって冷蔵庫に入ったのか謎である。出すときに自分が下敷きになりそうなほど、重量があるのだ。
仕方ないので冷蔵庫の下に布を敷いてその上にまな板を置き、冷蔵庫から落とすようにして出すしかなかった。
当然すごい音がする。
鶏さんが何事かと駆け込んできたくらいには。
ごめんね。非力で・・・。
あたしが悪いんじゃないと思うんだ。日本人女性の平均的な力で、このお肉が持てるほうが、おかしいのだから。
コッコ。
わかった。と頷いて外に出た鶏さん。わかってもらって何よりだよ。出来ればどんな設定になっているのかわからないけれど、もっと小さめに収納してもらえると助かるよ。前にいた人は、どれだけ怪力だったのだろう。もしかしたら物を運ぶ魔道具がどこかにあるのかもしれない。鶏さんに聞いてみよう。
「パンが焼けました」
あれ?錬金部屋に行かなくても、キッチンでも聞こえるの?凄いなぁ。こんな近未来的なシステムがあるこの世界は、とても進んだ文化なのだと感心した。
「パンが焼けました。急いで錬金釜から出してください」
感心している場合じゃなかった。折角のパンが焦げてはダメだ、急いで出さないと。
お肉を切るのは一時中断し、急いで錬金部屋に行く。
中に入れば、焼き立ての香ばしいパンの匂いが充満して、幸せな気分になった。
窯を開けると窯の形通りの真四角なパンが出来ていた。
美味しそう。
ホームベーカリーで作った時でも、焼き立ては格別だ。しかも見た目はふんわり柔らか食パンぽい。
ただ取り出そうにも窯はとても熱そうで、パンだけを取り出せそうにない。鍋つかみみたいなのも周りにないし、どうしたらいいかな。
周りを見渡し、代わりになりそうなものを探していると、ポンッとなにやら飛び出す音がしたと思ったら、パンが窯から出てきてた。
蓋を開けたら飛び出すシステム?それなら、勝手に出てくるようで出来そうな気がするけど、不思議だ。
何度か焼く中でわかったことだが、もう一度ボタンを押せば固焼きパンになるという、パンの焼き具合などが変えられることに気が付くのはもう少し先のことだ。
さて、これでパンはOK。あのお肉と格闘しよう。
キッチンに戻って早速お肉を切り始める。錬金釜の大きさは量によって変えることが出来るが、何となく見たことのある大きさにしようと思う。売られていたベーコンの大きさがどこもあまり変わらないのは、あれぐらいの大きさが一番作りやすくて、美味しいからだと思うのだ。
図ったことなんてないから、大きさは目分量でだいたいこれぐらいかな?
5㎝×20㎝ぐらいの大きさで、厚みは5㎝もあればいいよね。ということは、厚みもこれから4等分ぐらい切らないといけない。
肉切り包丁なんてあるのかな?
色んな引き出しを開けたら、これかなという長くてちょっと特徴的な包丁があったので、試してみた。
こ、怖いぐらい切れるんだけど、これ。
押さえているお肉は確かにごつくて弾力がある固まり。だけど豆腐のようにスウーと切れる。思わずお肉を叩いてみたよ。
うん、肉。
絶対に手が当たらないように、切らないとね。
全部を同じ大きさに切った後は、思わずそのまま座り込んだ。どうやら長く息を止めていたようだ。
疲れた。
だけど、座り込んでいる場合じゃない。一先ず使わないお肉は冷蔵庫にしまって、錬金釜にセットするまではやってしまおう。
さて、力説されたお肉。ある程度使っておかないときっと今日でお肉は足される。ただベーコンは密封して冷蔵庫保存が基本。冷蔵庫の中が減ることはない。他はどうしようか。
他に作るモノを考えながら、まずはと錬金釜にブーブーのバラ肉と塩、そして・・・、あの葉っぱそんな大層な名前だったんだ。ただ名前がそうだからと言って、あたしが思っている効果とは違うかもしれないから、そこはスルーしておこう。
世界樹の葉をそっと入れて、錬金のふたを閉めボタンを押した。
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