チーレム男の雇われ正妻
~あらすじ~
マルタはチーレム男・エリクに雇われて正妻をしている。主な仕事はハーレムメンバーと家計の管理。今夜もマルタは眠る前にストレス発散にエリク人形を殴る。
こんにちは、チーレム野郎の正妻をしているマルタです。
チーレムって言葉は知っていますか?
チート(世界のバランスを崩すほど卑怯)な魔法かスキルで俺TSUEEEで、世の男性陣の夢であるハーレム(複数嫁)がいるよって意味です。
ok。これでチーレムの意味はわかりましたね。
このチーレムって奴には男の夢だけに、現実問題、嫁たちによる仁義なき戦いが没発し、嫁たちをおいて逃げ出す事例があります。私の夫・エリクもそんな嫁同士の仁義なき戦いに疲れ果て、彼女らを管理する正妻として私を雇いました。
私の前にいた正妻はどうなったか気になります?
彼女は嫁たちの戦いをとめられなかったので、今では一介のハーレム嫁に降格しました。いくら夫の本命でも、新しい嫁たちに夫の関心を奪われて、今では顧みられなくなった古女房。若い嫁たちのように夫に甘えても空返事であしらわれています。
1日が72時間くらいあれば5人以下の嫁と過ごす時間もあるかもしれませんが、現実には24時間です。新嫁が逃げないようにするのが精一杯です。
チーレム夫が動けば新しい嫁ができる活躍をしてしまい、新たな嫁との親睦を図っているうちに古い嫁たちは放ったらかし。そんな状況で「あたしこそが夫に一番愛されてる」と勘違いした新嫁VS古嫁の仁義なき戦いが自然発生。
とまあ、そんなこんなで不満たっぷりな放置嫁と勘違い嫁をコントロールして、仁義なき戦いなんて起こさないようにするのが私の仕事です。
ですから、仁義なき戦いが起きないように睨みをきかせて恨まれている私は、ストレス解消に眠る前に寝室で魔法で身体強化して、エリク人形(自作)をサンドバックにしてストレス発散をしています。
このエリク人形。エリクは雇用主なので文句が言えませんから、できるだけ本物のエリクを再現しようとこだわった一品なので、この髪に使っている金糸の色や質感には自信があります。この金糸一束で平民の月給が軽く飛びますからね。
それを天然でお持ちのチーレム男はなんて、けしからん奴なんでしょう。
ドカッ
バキッ
「ウゴッ!」
ウゴッ?
何の音でしょうかね?
ところで、なんでストレス解消に叩いているのが人形で、パン生地やパスタ生地じゃないのかって?
パン生地やパスタ生地でもいいですが、あのチーレム男への怨念が籠もっちゃうと思うんですよ。他の人への怨念ならともかく、あの男への怨念ですからね。食べたら男でも惚れてしまうチートがかかってしまうかもしれません。そんなの誰にも食べさせたくないです。
チーレム男のチートがどこまで作用するかわかりませんから、被害者を増やさない為にも口に入るものだけでも奴のことを考えて作ったものは廃棄しなくてはいけません。
仕事は困難、賃金は雀の涙。こんなに大変だとわかっていたなら、賃金をもっともらってもいいはずです。
これじゃ、ブラックなお仕事です。
やってられますか!
「はあっ! 破邪天昇!」
「ぐはぁぁぁ!!」
怒りのあまり思わず、必殺技を出してしまいました。エリク人形は空気の入れ替えで開けていたガラス戸からお空のかなたへと飛んで行きます。
それにしてもまた変な音がしましたね。
さて、ストレス解消しましたし、寝ますか。
防犯上の問題からガラス戸を閉めて、一人で寝るには大きすぎるベッドに向かいます。元正妻が使っていたベッドは使いたくなかったので、私用に買い換えたベッドは本当は契約妻である私しか使わないのでこんなに大きくなくてもいいんですよね。でも、チーレム男の寝室と扉で繋がっている正妻の寝室のベッドをシングルベッドではいけないとチーレム男や使用人たちに言われまして、仕方なくこの大きさにしたんですよ。
ですが、天蓋付きのクイーンサイズのこのベッド。1メートル近くあるから、のぼるのに一苦労なんです。
「ん?」
床に転がっているエリク人形。我ながらよくできていると思います。本物そっくりです。
これがここにあるということは・・・・・・。
「おやすみなさい」
私はベッドにもぐり込み、明日の激務に備えて休むことにしました。チーレム男の正妻の仕事は本当にブラックな仕事です。休める時にしっかり休んでいないと仕事になりません。明日も古女房たちを朝から宥めないといけませんから。
チーレム男は新しくできた嫁のところで眠っていることでしょうし、大丈夫、大丈夫。雇用主、殴ってないって。
殴ったのは部屋に無断で入り込んだ犯罪者だから、大丈夫♪




