02
バコッベキッドカッ!
「ハアハア...なんなのこのスライム、全然倒せないんですケド!」
私とこっしーは村までの道中でスライムに遭遇したが何回殴っても倒せない。
「それはですね。モエミ様のステータス、パワーが0だからですよ。何度殴っても相手へのダメージは0です」
「え!?こっしー、なんでわかるの?」
「モエミ様、戦闘中、難しいかと思いますが、前方で手を十字に切っていただければGUIが表示されますのでそこで確認できますぞ。」
「あ、ほんとだ。え!!私LV.0(ゼロ)じゃん。次のLVアップまで...9999万9999の経験値が必要!?なにこれええ!!!」
「おそらくバグかと」
「はああ!?普通こういう異世界物の主人公ってチートじみた強さで俺TUEEEE状態なんじゃないの?」
「そのかわりわたくしがチートのようですね。LV.9999でカンスト状態です。モエミ様」
「はあ?従者が最強ってなんなんすか、これ?」
「...少々、お待ちを。...メタモルフォーゼ!」
ぼわわわん。
こっしーは鯉のくせにそう唱えるとなんと人間に変身した。
見た目はイケメンの魔術師。
紫のローブを見に纏っている。
「うほーーーー!超いい!私の好みだわ!」
「...当然でございます。モエミ様、全てはあなたのイメージ通りでございます。」
「早いとこあのスライムやっつけちゃって!」
「御意。...炎よあのものを焼き尽くせ!」
こっしーがそう唱えるとスライムは一瞬で燃え尽きてしまった。
「うわー、すごい」
「ざっとこんなものです。モエミ様」
「よっしゃあ、私にも経験値GET!ってたったの1ポイント?」
「あとスライムを9999万9998匹倒せばレベルアップですぞ、モエミ様」
「気が遠くなりそうなんですケド」
しかも今のバトルを見たのかどうなのか、サーーーっとスライムたちはいなくなった。
「まいったなあ、しばらく、こっしーに腰ぎんちゃく状態じゃん。私は役立たずじゃん」
「わたくしに任せてくださいませ」
「うん、こっしー頼りにしてるよ!」
なんとも情けない私とこっしーは村に到着した。
「とりあえず宿を見つけるか、暗くなってきたし」
「御意」
『ご休憩処』の看板の建物を見つけた。
「あ、あそこにしよう」
中世の建物風なのに中の内装は和風だった。
カウンターらしきところの受付嬢に声をかける。
「すいませ~~~ん!2名様1泊オナシャス!」
「...1名様1泊、1.5メガなので全部で3メガになります」
「は、3メガ?」
「お持ちでないのでしたらお泊りできません。あしからず」
受付嬢は事務的にそう言った。
「...こっしー、3メガってなに?」
「この世界の通貨でございます。モエミ様」
「あんた持ってる?」
「持っていません、モエミ様」
「つまりあたしたちは1文無し?」
「そのようでございます、モエミ様」
「はあ!開始直後から一文無しスタートって厳しすぎるじゃん!」
「...依頼場で誰かの依頼を達成すれば報酬がもらえるようです」
「...それしか、ないか。いくよ!こっしー!」
「御意」
「またのお越しをお待ちしております」
受付嬢は事務的にそう言った。
『闇夜のスナギルドスの尾びれ 報酬100メガ』
依頼場の掲示板に書いてある高額報酬の依頼を見つけた。
「これ、いいじゃん!こっしーに任せて儲けよう!」
「御意でございます。モエミ様」
「なになに...出現場所はスナギルドスの谷...か。どこにあるんだろ」
「この村から100km北でございます。モエミ様」
「はあ、100キロ!...死ぬわ!」
「大丈夫ございます、モエミ様。わたくしの魔法があれば...」
「お!どんな魔法があるの!?ワープ?テレポーテーション?」
「台車召喚でございます。モエミ様」
「台車?台車ってあの台車?」
「御意!...台車!召喚!」
ぼわわわーん。
私たちの前に台車が現れた。
「モエミ様。お乗りください」
「ハハハ、苦労をかけるね。こっしー」
「ご自宅の池でおいしいエサを施していただいたモエミ様の為ならばどんな苦労も厭いません」
そう言うとイケメン魔術師はすごすごと私の乗った台車を駆け足で押しはじめた。
「モエミン様の為ならばっ!♪どんな苦労も厭わないっ!♪のめりこめる、のめりこめる!♪」
イケメン魔術師こっしーはなぜか歌いだした。
わけのわからない歌詞だったが不思議とイヤじゃなかった。
あの自宅の池の鯉がこんなイケメンに変わるだなんて。
この異世界も捨てたものではない。
冷えてきたのでこっしーはニカッと笑うと私に自分の紫のローブをかけてくれた。
野宿を重ねるに数日後ようやくスナギルドスの谷についた。
いなかったらどうしようとの心配をよそに谷についたら無数のスナギルドスと思われる翼の怪獣が谷の間を飛んでいる。
「あ、あれよね」
「そのようです」
「じゃ、私は隠れてるからこっしーお願い」
「御意」
私はこそこそと岩場の陰に隠れた。
「出でよ。光の槍よ。かのもの達に降り注げ!」
こっしーがそう叫ぶと上空から無数の光の槍がスナギルドスの群れに降り注いだ。
一瞬にして十数匹はいたと思われるスナギルドスは全滅した。
「すご~~~い!もしかしてこの世界ではこっしー最強!?」
「ありがとうございます。モエミ様」
スナギルドスのご遺体から綺麗な状態の尾びれを3個チョイスした。
そして何日か野宿を重ね依頼場に帰ってきた。
「ちゃーす、ちゃーす!スナギルドスの尾びれ3個持ってきたよ!おじいちゃん!」
私は依頼場で関係者と思われるおじいちゃんに声をかけた。
「おおおお、これはこれは」
「1個100メガで3個で300メガくれる?」
「1個しか買いとれんぞい!」
「そんなあ。...じゃあさ、3個で150メガでいいから!ダメ?」
「ぬぬぬ、おぬし中々商売上手だな。いいだろ、ほれ150メガだ」
依頼場のおじいちゃんがハンディの端末を操作すると私のGUI画面の通貨残高が0から150mgという表示に変わった。
「やったあ!これでやっとフカフカのお布団で寝れるし暖かい食べ物も食べられる!」
「おめでとうございます!モエミ様!」
「私は何もしてないけどね!ありがとう!こっしー!これからも頼りにしてまっせ!」
「御意!」
私たちはホクホク顔で宿屋に向かったのであった。
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