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異世界生活で錦鯉と同棲中!?  作者: 億田夢人
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 報酬の20ギガを手にした私達は再びアルベールの街へ戻って来た。初めてギガ単位のお金を手にしたが私のパーティは5人組の結構な所帯なので食べる寝る遊ぶしかしていなかったらあっというまにこのお金は無くなってしまうだろう。なので3日ほど宿屋でみんなと休息をとってから私はミルと2人で依頼場にクエストを物色しに来た。


 「モエミさん、これなんかどうかしら?」


 そういうミルの横顔は超絶美人で今日もメイクがばっちりと決まっている。初めて出会った時の少年っぽい感じは払しょくされていた。


 「ん?ん~?復讐?『親の仇の悪人ムシュターゴを倒してください:報酬10M』?」

 「ええ」


 「やってられないでしょー、こんなことしてたったの10メガだよ?」

 「ですが、何か事情があるのでは?」


 「ダメダメやらない。それに相手の関係者に恨みを買うかもしれないしこういうのはねイタチごっこなんだよ。関わらないほうが無難」

 「......モエミさんって結構薄情なのですね」


 「なにそれ?そんなんで薄情とか言われたくないんですケド」

 「では、これはどうでしょう?『伝説の剣ドラグーンスレイを譲って戴いた方に10ギガ』」


 「......ドウヤッテミツケルノデスカ?......ミル、心当たりあるの?」

 「ありません」


 ずこ~


 「ん?『警備員募集!強い方に愛すべき村の警護をお願いします!:報酬1晩につき3M』?これがいいかなあ」

 「モエミさん3メガですよ?」


 「うん、1回あたりは安いけどね。こうやって決まった収入があるほうがいいよ。それと5人もいるんだから警護をする人は交代でやったりとか他にも手の空いたメンバーで別の依頼もできるし」

 「なるほどさすがモエミさんですわね」


 「うん、え~と依頼人は......ボリノーク伍長ってこないだの?」

 「そうですね......じゃあ、村の警護っていうのは......」


 「ガンゲーロの街なのかなあ?あれって村というより栄えてて文字通り街って感じなんだけど」

 「どうします?モエミさん?」


 「んー、他にも探してみましょうか」


 さすがにまたガンゲーロの街に行くのはしんどすぎる。他のメンバーはどう思うかわからないけど私は気が向かなかった。


 「『強者募集!俺のパーティに入らないか?報酬は出来高制』......なにこれ?」

 「書いてある通りじゃないですか?掲示板にパーティメンバーを募集する。よくあることです」


 「へえ、そうなんだ。私は何もしなくても勝手にメンバーが増えて......ラッキーだったんだ」

 「......モエミさん、何もしてはないと思いますが......これなんかどうでしょう?」


 「んーなになに?『恋のキューピット募集!片想いのあの方と結ばれることが出来たなら成功報酬10ギガ!』ええっ!10ギガも!いいじゃんこれ!?」

 「じゃあ、モエミさんこれにしましょう!」


 「......ちょっと待って。依頼者:ミル・バーン......っていつのまにこんな依頼だして......ミル、あんたなにしとんのじゃ!!」

 「10ギガでこっしー様を譲ってくださいませ」


 「ダメダメダメだめえー」

 「どうしても?」


 「当たり前でしょ」

 「ちぇ」


 「全くちぇじゃないでしょ。お腹へったなあ。とりあえず何か買ってみんなのところへ戻りましょうか?」

 「そうですわね」


 私とミルは人数分のパンとなんだかわからないが味だけはおいしいオカズを買って泊まっている宿屋に戻った。ここの宿屋は素泊まり1人当たり3メガ。アルベールに初めて来たときから幸運なことにずっと同じ部屋に泊まっている。


 部屋に戻るとユンちゃんしかいなかった。かたや鯉に戻って水槽の中にいるとか、かたやガーゴイルの姿になって空中を浮いているのか、いずれもそういうことはなかった。


 「ユンちゃん、こっしーとロキは?」

 「うん?決闘しに行ったよ」


 「へ?なんで?」

 「さあ、わからない」


 「どこに決闘しにいったの?」

 「多分、川だと思う」


 「川って近くの?」

 「うん」


 「止めなきゃ!あの二人が本気でやりあったら......ロキは多分死ぬ」

 「え!?」


 ユンちゃんは私の言葉にびっくりしている。私が『ロキは多分死ぬ』と言い切ったからだろうか。でも、それは間違いのないことだ。この世界のこっしーはレベル9999。チートじみた桁違いの強さなのだ。直接、剣を振ったところは見たことがないが彼が発する魔法の言葉は完全超越、支離滅裂で彼の言葉通りの事が起きるのだ。例えばロキに対して『今すぐ死ね』などと言えばロキの心臓が急停止してしまうかもしれない。


 そんなことができてしまうのか、どれくらいのことができるのか、こっしーの魔法の言葉の効力は私はずっと確認していなかった。今までは私を守ってくれるために使ってくれていたので確認する必要がなかったというか確認を怠る理由となっていたのだ。


 「あああ、わたくしの為にこっしー様とロキが決闘を......あああ、わたくしはなんて罪深き女なのでしょうか、およよ」


 またミルは勝手な解釈をし自分に酔い浸っている。そんなことはないと思うけど。


 「ミル!行きましょ?」

 「はい、わたくしが止めなければわたくしの為に争わないでって」


 「......」



  ☆



 河原につくと人とは思えぬスピードでロキとこっしーは一戦交えていた。いや実際、二人とも人ではないんですケド。


 「そいやああ!!」

 「ふん!ふん!」


 ロキはミルと戦った時と違ってガーゴイルの姿になり上空から容赦のない攻撃でこっしーのクビを狙って執拗に攻撃している。


 「ほ、本気だ!」


 私はその戦闘を見て思わず叫んでしまう。


 「ふん!ふん!」


 だがそのロキの攻撃はこっしーに一切通用していない。こっしーの手からはうっすらと透明なシールドらしきものが張られていてロキの爪攻撃にあわせてうまくはじいている。


 「な、なにあれ?あれがこっしー様の本当の実力......」


 ミルはこっしーがロキの攻撃を捌いているのを見てぶるぶると震えていた。その様子を見て私は何かイヤな予感がした。


 「ま、待ってくだされ!!」


 ミルはこっしーとロキに向かって叫ぶ。すると2人はハッとして私達の存在に気が付いて戦いを中断する。


 「こっしー様、わたくしとお相手をお願いいたします」


 ミルはそう言うと両手をねじりこんで上空に突き出した。するとみるみるうちにミルは真紅の甲冑を纏った重騎士の姿になる。


 「ちょっと!ミル!やめないさい!」

 「モエミさん、わたくしも武人のはしくれ。こっしー様と戦いたくなりました」


 私のイヤな予感は的中した。でもまあ、こっしーがうまくいなしてくれるだろう。こっしーがミルに負けるわけがない。


 「バーン・フラッシュ・ソード!」


 ミルは甲冑の腰の部分にぶら下がっている鞘を取り出し握りこんでそう叫ぶ。


 「こっしー様、もしわたくしがこっしー様に勝つことができたならわたくしと交際していただけませんか?」


 また、ミルはそんなことを言う。そしてこっしーは私の方をちらっと見る。だからなぜに私の許可を求める必要があるのか。私は思わずイラッとしてこくっと頷いてしまった。どちらにせよ、こっしーが負けるハズがない。


 「いいでしょう。ですがミル様。わたしめも本気で参りますよ?ミル様はお強いので戦いが長引けばどうなるかわからないので」

 「ありがとうございます。こっしー様の中でわたくしの評価がそんなに高かったとは光栄に存じ上げます」


 「はい、ミル様はお強い。だからわたしめも本気で参りますので」


 こっしーは再度念を押してミルに言った。それは万が一ケガや命を奪うかもしれない事態になっても責任は持てないということなのだろうか。


 「はい、わたくしも本気です。有事の際はお覚悟を!......てやああ!!」

 「ふん!!」


 ミルはジャンプし大きく振りかぶって光の剣を振り下ろしにかかる。それにあわせてこっしーは光のシールドを両手から展開し薙ぎ払う態勢をとった。


 「バーン・オフ・ソード!!」


 どかっ!!


 ミルはこっしーの両手から放つ光の壁にミルの光の剣がぶつかる寸前にそう叫んだ。光の剣がすうっと消えミルの両手に持つ鞘がこっしーの鳩尾に突き刺さっていた。


 「峰内です」

 「ぐぅぅぅ......ふ、不覚」


 どしゃああああ


 こっしーが倒れた。私は何が起こったのかわかっている。こっしーとミルの戦いを刮目していた。だけど一歩も動けない。こっしーが負けた?嘘だそんなハズはない。負ける理由がない。意味がわからない。チートじみた強さなのに負ける?ウソでしょ!!


 「やった!!勝ちましたわ!!」


 ミルは大喜びで飛び上がり私の方へ走ってきた。


 「モエミさん!!わたくし勝ちましたわよ!?こっしー様とお付き合いしていいんですわよね!?」

 「ミル!あなた汚いよ!あんな戦い方!卑怯じゃないの?」


 「戦いに卑怯も何もありません。勝てばいいのですわ、勝てば!!」

 「うう」


 「今日からわたくしはこっしー様の恋人になりますのでご理解の程宜しくお願いいたします!」


 勝ち誇った顔で私にそう言うミル。


 「ううっ......」



 こっしーなんで負けちゃうのよ。ああ、なんで私こんな条件、飲んでしまったんだろう。私の後悔をあざわらうのかのようになぜか川の先ではズドーンと花火が打ちあがっていた。




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