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異世界生活で錦鯉と同棲中!?  作者: 億田夢人
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 「う~」


 私はイライラしていた。ミルがこっしーの隣から離れないからだ。私達はミルの実家を離れた後再び、アルベールの街に戻って来た。


 「こっしー様、お荷物お持ちいたしましょうか?」

 「い、いえ、結構です。ご婦人にそのようなことをさせるわけには......」


 「遠慮なさらずとも良いのに......」

 「......」


 ミルは姿形こそ以前の重たそうな鎧を着て重騎士の格好をしているが言葉使いや仕草はお嬢様っぽい感じのままだ。彼女なりにこちらのほうがこっしーの好みだと感じたのであろう。私的には『それがし』のほうが良かったんだけどな。


 「ん、んー!この辺でお昼にしましょうか。私、何か、買ってくるね」

 「では、わたしめも」

 「わたくしも行きますわ」


 「はあ......じゃあ、ユンちゃんとロキは場所取りお願いね」

 「はあい、モエミおいしい奴ねえ!」

 「わかった」


 私達はトコトコと市場を物色して回る。ふと私の後ろのこっしーに目をやると隣にはニコニコしながらミルが歩いている。


 「......はあ」


 なんだか滅茶苦茶モヤモヤするんですケド。これからずっとこれが続くんですかね。


 「ねえ!二人とも何が食べたい!?」


 私はそう怒鳴った。


 「モ、モエミ様?」


 こっしーは私らしくなくイライラしている様子に少し戸惑っている。


 「こっしー様。女性には日によってそういう日があるものですわ」


 ミルの奴、何を悟ってんだコンチクショー。


 「ち、違うよ?ごめん、なんか一人でイライラしちゃって」

 「モエミ様、魚意」


 いや、意味わかんないし。


 「そうですわね、たまには鍋でもどうでしょう?」


 ミルがそう提案してくる。鍋っていっても何鍋にするんだろう?


 「何を入れるの?」

 「なんでも......で、ございますわ」


 「......闇鍋?」

 「やみなべ?そういうのがあるのですか?」


 「いや、私の知ってる言葉ではなんでもいれちゃう鍋は闇鍋って言うのよ」

 「あら、まあ、楽しそうですわ」


 ミルは両手を合わせて目をキラキラさせた。頼むからそのまま『それがし』のミルに戻って欲しい。


 「モエミー、なんか、いいお仕事あったよ~」


 ユンちゃんとロキが私を見つけて駆け寄ってきた。誰に書いてもらったんだかわからないがユンちゃんは紙切れを私に見せた。


 「なになに?アサモナイト鉱石の運搬?ガンゲーロの街まで運んでいただいたら報酬10ギガ......ふうん、まあまあね」

 「やるなら早く申し込まないと誰かにとられちゃうよ?」


 「うん、わかった、急ぎましょ?」


 私達は食事の買い物を中断し急いで依頼場へと向かった。そして依頼場のオジサンから依頼主のメッサー中尉の担当する工場の場所を教えてもらう。歩いて2時間ほどでその工場に私達はたどり着いた。


 タバコを吸って休憩している工場の労働者らしき人に私は尋ねた。


 「あのお、メッサー中尉というのはどちらにいますか?」

 「ん?俺がメッサーだが、あなたは?」


 「あ!!私はモエミって言います。依頼場でメッサー中尉の依頼を見てやってきました!」

 「ほう、あなたが?」


 メッサー中尉は私の事をジロジロと見る。......この世界の人は人の事をジロジロ見ることがデフォーなんだろうか。


 「んー、重さは10トンくらいあるよ。大丈夫?」

 「え?じゅ、じゅっとん......」


 「まあ、台車くらいはこちらで用意するけどさ」

 「あのお、向こうまでに届けないといけない期日はあるんですか?」


 「いや、特にはないがあなたがたの中の一人でいいから身分証を預からせてもらえる?一応、この鉱石もタダではないのでね」

 「それならわたくしが持っていますわ」


 ミルは腰にぶら下げている袋から小さな紙の切れ端をメッサー中尉に見せた。


 「......おお、あなたはバーン家のお嬢様でしたか。それならばこのまま持ち逃げされることはありませんね。安心してあなたがたにこの鉱石をお預けいたします」

 「あの、まだやるとは......」


 「やっていただけるなら20ギガだしましょう。手付金10。無事鉱石を届けたら10でどうです?」

 「やります!」


 「そうですかそうですか。それは良かった。途中、賊に襲われるかもしれんが鉱石を奪われないようくれぐれもご用心ください」

 「え!?......あの、もし盗まれたりしちゃった場合は......?」


 「そうなったらバーン家に全額を弁償してもらいますわ。ワッハッハ」

 「えーーー!!」


 結構、危険で条件もそこそこな依頼に私は躊躇する。


 「大丈夫ですわ。姫様。やりましょう」


 ミルはそう言うが今のミルから姫様呼ばわりされるのはとても違和感がある。が結局私はこの依頼を受けることにした。そろそろお金が底をつきてきたからである。


 「よーし、そうと決まったら......おーい、野郎ども!加工が終わった鉱石全部こっちへ持ってこーい!」


 中尉がそう叫ぶと私達の前にあれよあれよという間に鉱石を積んだ台車がガラガラと並んでいく。


 「ひゃー!結構あるなあ」

 「10トンと言えば相当な量ですわ」


 結局私達の前に10台の台車が並んだ。ということは一つの台車に1トン積んでいるということになる。


 「よーし、じゃあ、行きましょうか!こっしー、ガンゲーロの街までどれくらい?」

 「歩いて10日ほどでございます。モエミ様」


 「は?10日......あ、あははは......結構、近いわね」


 私はやせ我慢をしてそう言った。



  ◇



 ガラガラガラ......


 10台の台車を連結させてそれをこっしーとロキは引っ張って歩いている。10トンの台車を引っ張るなんて人間には無理だ。だけどこの2人は涼しい顔をして歩いている。


 「重くないの?大丈夫?」


 2人をねぎらい私はそう言った。


 「全然大丈夫だ」

 「平気でございます、モエミ様」


 なんとも頼りになるナイト達だ。


 「お前たち!!とまれ!」


 突然、私達の前に鎧を着た兵士たちが立ちふさがった。見たところ、この国のシンボルカラーである青色の鎧を着ていたのでこの国の兵士達であろうか。


 「怪しいものではありません!私達はメッサー中尉の依頼で......」

 「そのメッサーには敵国のスパイ容疑がかけられておる」


 「え?」

 「で、お前達はどこにいくつもりなんだ?」


 「ガンゲーロです」

 「......やはりな。ガンゲーロは我が国の反抗都市だ」


 「え?そ、そんな」

 「よってこの鉱石はこの時点で没収とする」


 「えええーーー!!」

 「よーし、皆の者、反転しろお!」


 兵士たちはそれぞれに台車の周りを取り囲み私達が来た反対側に引っ張り出した。


 「お待ちください!」


 ミルは声を荒げた。そりゃ、当然である。このまま没収されたらミルのお父さん達が弁償しなければならないのだから。


 「なんだ?」

 「何はともあれ私達はこれを届ける依頼を受けたのです。受けた以上はこれを無事ガンゲーロに届けなければなりません。敵国のスパイだとか反抗都市とか私達には関係ありません」


 「なんだと?この被国民め!」


 しゃき~~~ん


 隊長らしき人は剣を抜いた。


 「人の者を奪うとは山賊と同じ行為。国の為に働く兵士たちがそのようなことをして恥ずかしくないのですかっ!」


 ミルはそう言うと腰の鞘を抜いた。


 「むう」

 「速やかに剣をおしまいなさい。さもなくばわたくしの剛剣が一瞬であなたたちを葬り去ることになりますわよ?」


 ......がちゃ


 隊長らしき人は剣を鞘に納めた。ミルと戦って勝てる自信がないからだろうか。


 「わかった!ただし俺たちも同行する!いいな!?」

 「ええ、構いませんわ。わたくしたちはこれをお届けするのがお仕事ですから......後のことは知りません」


 「......じゃあ、姫様、まいりましょう」

 「う、うん」


 兵士達からの追及をうまく逃れはしたが一息ついて兵士達を見ると100人ぐらいいた。なのでミルが戦った時のことを考えたら私はぞっとした。きっとちょっとした死体の山が出来上がっていたことであろう。


 「そろそろ日が暮れてきたわね」


 私は近くに川があることを確認して今夜はここで野宿することにした。


 ばさささっ


 アルベールの市場で格安で買ったテントを広げる。私は手伝いもしないロキに気づいた。彼は森の茂みの方に気をとられている。


 「ちょっとロキ!手伝ってよ!?」

 「しっ......どうやら本当の盗賊のおでましらしいぜ?どうするモエミ?」


 「ええ!?こっちは100人以上いるのに襲ってくる?普通?」

 「その人数差で襲ってくるッてえことはよほど自信があるんだろうよ」


 「くっ!こっしー、ミル!敵よ!」


 私達は迎撃態勢をとった。しかしものの数分で兵士たちは半数が倒されてしまう。敵の数は目で確認できたのは5人くらい。


 「こっしー、ミル!敵は強いよ!気をつけて!」

 「はっ!バーン・フラッシュ・ソード!」

 「はっ!モエミ様、魚意!.......かの者たちに落雷を!!」


 どんがらぴっしゃ~~ん!


 こっしーの魔法によって敵の数はあと1人となる。で、その1人は逃げていった。

 私は倒れた盗賊の身元を確認すべく盗賊の傍に近寄っていったがそこであることに気づく。


 「こ、これはアトランティスの国の紋章じゃない?」


 私はミルを呼び紋章を見せた。


 「え、ええ、そうですね。一体どういうことかしら?」

 「どうもこうも、こういうことだー!」


 ずしゃあああ!!


 さっきの隊長が突然油断していた私達に切りかかってきた。私をかばってミルが横っ腹を刺されてしまう。


 「うっ......うあ!」

 「ミ、ミルーーーーー!!」



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