クローバー6枚目
強い風が窓に雪を貼り付けていて、なんだかもう、窓硝子の状態にしていては寒いような気分になるから人魚はそっとカーテンを閉める。
雪原うさぎは何をしていたかというと、旅先で買ったお土産を整理してみたり、本の中身を確認するためにその手を止めて読み込んでみたりしていた。
「外に出られない日の娯楽は必要だけど。なにぶんあらかじめいろいろ集めておかなくちゃいけない気持ちになって、このざまだよ」
そして、結局いつもの位置に置いて人魚の隣に腰掛けた。
人魚は人魚で雪原うさぎと暮らしはじめたばかりだから、好きにして良いとは言われたものの、して良いことの範囲がまだいまいちよくわかっていない。
「人魚ちゃんって、学校いったことある?」
問いかけられた人魚は首を横に振る。
「あ、そうか。いってたら文字とかわかるもんね、ごめんね」
その様子を見た雪原うさぎは思い出したように気付いて謝る。
人魚とは何を話すにも身振り手振りか文字でやりとりをしてきた。
文字の練習にもなると思っていたけれど、やはり賢いからほとんどすぐに覚えて綺麗な文字を書いているし、どうせなら人魚が本来の姿のときでなくとも会話をしたいと思った雪原うさぎは、なにか手段があったような気がして、自分の記憶と知識を振り返ってみる。
「あ、そうだ。詳しい人いたかも」
「?」
困惑する人魚をよそに、雪原うさぎはすくっと立ち上がった。
「ちょっとでかけてくるよ。多分三日くらいしたら帰ってくるから」
人魚も立ち上がってメモに文字を書き込んで、旅の準備をしようとする雪原うさぎをとめる
『意味がわかりません!』
「人魚ちゃんともうちょっと手っ取り早く会話をしたいから、詳しい人に聞きに行くんだ」
その言葉を聞いて、人魚は驚いた顔をしてから何故かむっとした表情になり、雪原うさぎは首をかしげる。
『わたしもいきます』
「そっか……あ?えっ……え?」
つづく