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「さて! みんなも帰りましたし。部屋もぴっかぴかです。うん、完璧! カレハさんのおかげ……いや、流石私といったところです!」
私は胸を張った。
「わー、どんどんぱふぱふ!」カレハさんが言った。私はカレハさんの簪を指差した。
「ずっと思ってたんですがカレハさんのその簪スゴく可愛いですよね。びっくりしてしまうくらい似合っています」
えへへ、とカレハさんが笑う。
「あは、ありがとうございます。ここにくるときに弟がくれたんです。凄く私に似合ってると私も思ってるんです!」
「……へえ、弟さんが居るんですかぁ……私にも妹が居ましてね……」
時間になった瞬間他の三人がすぐに部屋を出ていき、その後に私とカレハさんは雑談がてらに今日一日の掃除の成果を二人で讃えあっていた。結構時間を過ぎたあとも熱中してしまったせいで辺りはもう暗くなってしまっていて、他の部隊の部屋も明かりのついているのはまばらになってしまっていた。それにもう夕飯時だ。人がそんなに居るわけがない。
窓越しに星が輝いていた。
辺りは暗いが、しかし、それを跳ね返すくらいにはカレハさんは綺麗になった部屋を見渡して、スゴい喜んでいた。
「それにしてもユイ上官すごいです! ほら、こことか凄くぴっかぴかです! ユイ上官さんの力になれた♪ 力になれた♪」
カレハさんはまるで子供のようにしてはしゃいでいる。
「いや、そこはカレハさんが大部分をやった所では?」
「……え?」
出来の悪い細工の玩具のようにカレハさんは顔だけこっちに向けた。
カレハさんはこの世の終わりを覗いてきたかのような絶望的な表情を浮かべていた。これはまずい。
「おっとお? いやいや、言い方を間違いましたよ私は。そこは確かに殆どをカレハさんがやったとは謂えどもそこがピカピカなのは少し手を加えた私のおかげでした! いやー流石すごいな私!」
やったか?
「……ですよね!」
絶望的な表情は笑顔に戻っていた。……危ないところだった。
今日一日一緒に掃除をして、なんとなくカレハさんとの接し方が分かってきた気がするが、分かれば分かるほど謎すぎる人だ。面白い人だ。
「さてと、まあ今日はこれくらいにしましょうか! いやあ、流石私。もはや流石ってのは私の代名詞です! ほら帰ってもいいですよカレハさん。これ、上官命令です! 私より先に帰りなさい!」
「分かりましたー」
ビシィとカレハさんを指を差す私。意外にナルシストのボキャブラリーが豊富なのがなんだか自分の新しい側面を見たような気がした。
「ふふ。おやすみなさい」
カレハさんがぺこり、とお辞儀をして、部屋を出ていった。
……一日目、終わり。疲れたー。
そんな事を思っている私が居る部屋のドアがゆっくりと開いたのだった。