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少女戦線、異常ナシ  作者: 水戸
all quite on the girl front
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3


「うう……あたまいたい……」


 朝から頭がガンガン痛い。そのせいで起きたくらいだ。


 昨日は将校として恥ずかしいくらいに酔っていたようだ。二日酔いの気持ち悪さに人類が慣れる日は来るのだろうか。


 ベッドの上ではなく、側面にもたれかかるようにして寝ていた。ダメ人間ここに極まれり。


 ベッドの上には質素な白色の布団が綺麗にしかれていた。


 お気に入りの布団はもう暫くすればここに届くだろう。


 ベッドから離れて部屋の壁沿いに近寄って、白色のカーテンを開けるとアシェンプテル砦こと少女戦線砦の全容が見えた。


 広場、演習場、兵の為の娯楽施設、商業通り、何だってある。そして向こうにはごつい城壁が見える。


 そして更にあっちの方に豆粒のように見えるのは支部だ。一つの町のようにさえ思ってしまうような光景だった。


 なんとなく窓を開けると冷たい朝の清涼な空気が部屋に流れ込んできて、私の肌の温度をひんやりと下げていった。


 鳥のさえずずる音がいたるところから聞こえてくる。私は息を大きく吸った。

 

 不意にノックの音が聞こえた。


「はーい」


 何だろうと思いながら私はドアを開けた。


「青実ユイさんですか? こちら郵便物になりますね」


 すると目の前には配達員の方が立っていて手に大きめの段ボール箱を持っていた。どうやら私への届け物らしい。


「サインをお願いできますか?」


「はいはい」


 私は手早くサインを書いて受け取った。誰からだろうと思って見ると両親の名前が書いてあった。


 開けると新品のタイプライターと一通の手紙が入っていた。


 手紙の内容はとにかく私のことを気遣う内容だったがあちらからのお願いとして遠くに行ってしまった私に手紙を書いてもらいたいらしい、本当にあの人たちは変わらない。なんだかほっこりとした気分にさせられた。


 この地でしっかり役目を果たすことを期待しているそうだ。


 ……お父さん、お母さんありがとう。私は私自身のやる気を引き出すためにばちん、と自分の頬を叩いた。


 そうだ、私は立派な軍人にならねばならないんだ。少しくらい配属先の人間に嫌われたからって、何だ。


 そんなの、頑張って認められればいいだけの話じゃないか。


 父と母の期待に応える事が出来るように頑張りたいと思った。元気が出てきたぞ。


「よし! まずはとにかく一人から私のことを認めてもらおう!」


 作戦もへったくれもない抱負をとりあえず口に出してみた。


 まだ朝というにはとても早かった。


 それから私は配属先の101部隊に当てられた部署にとりあえず向かった。部屋はそこそこ大きく、部屋の中は整然としていた。


 101部隊の部屋はおろか、辺りにすら人の気配は無かった。何分、まだ朝飯前だ。足を運ぶ人間なんて希少だろう。


 昨日の人達が本当に使っているのか疑わしくなるほどに凄く綺麗でこざっぱりとしていた。しかし一つだけ上に色々なものが積み上がっている机があって、あれは赤髪のアンジュさんの机か、などと思った。いや、そうに違いない。私の胸ぐらを掴んだあの人のデスクだ。


 ふと、視線の隙間に何か動くものが見えた。


 窓の付近だ。そちらの方に目線をやると女の子の後ろ姿が見えた。こんな早い時間に私よりも人が居ると思わなかったからひどく驚いた。雑巾を片手に持って、窓を丁寧に拭いていた。近寄っても私が来たことに気付いていないようだった。


 近くに寄って、私もそれが誰なのか分かった。枯れきった葉っぱのような色の茶髪の少女だった。


「カレハさん、早い内から御苦労様です」


「ふぁ、ふぁいい!?」


 いきなりの後ろからの声にカレハさんの体が驚いて素っ頓狂な声をあげる。


「カレハ……さん? ですよね? あの、オルバウム・カレハさん、でしたっけ?」


「は、はいっ!? あ、お疲れさまですっ!」


 カレハさんも振り向いて私であることを認識したようで、深い敬礼をした。


「お疲れさまって……。これからですよ」


「そうですよね。あの、ええと。すいませんすいません」


「謝らなくても……」


「ごめんなさい」


「……あの、こんな早くからお掃除をしてるんですか?」


「は、はいいっ! すいませんっ!」


「いや、怒ってませんって。これから怒るつもりもありませんし」


 そう言うとカレハさんは急にきょとんとした顔をした。


「怒るつもりはない? 本当に? 本当……ですか?」


「もちろん。こんな早い時間から自ら率先して掃除をしている模範的な人物を怒る人間なんて居ませんよ」


 カレハさんの顔が明るくなった。


「そ、そうですか! ありがとうございます!」


「いや、何の感謝ですか。カレハさんはいつもこんな早い時間から掃除をしてらっしゃるんですか?」


「は、はいいっ! そうですっ! そうでございますですっ!」


 やっぱりわたふたと顔を真っ赤にしてカレハさんが何回も頭を下げる。


「私は戦闘で役立たずだからっ! だからこれくらいはしなきゃ、って思って! 私は雑魚ですからっ!」


 凄い早口だ。


「落ち着いて、落ち着いてください」

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