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カツカレーの運命

作者: 高橋さくら

先日、カウンターテーブルのみのカレー屋さんで食事をした。

カウンターの中では店長さんとおぼしき男性がカレーを盛りつけ、お客に出す。

カウンターの奥はトンカツなどの揚げ物を揚げたり、カレーを作ったりするスペースらしく、店員が何人かいるらしかった。(私の場所からカウンターの奥は見えなかった)

時々若い女性店員が揚げ物を渡しに店長のもとへやってくる。



カレー屋のほとんどは男性客で、お昼どきなせいかカツカレーを頼む男性が多かった。

注文を受けると店長はカツを何等分かに切り、ご飯ののったお皿にのせ、その上に丁寧にカレーをかける。慣れた手つきで盛りつける店長の働きぶりをちらちらと見ながら私は注文した野菜カレーを食べていた。



しばらくすると店長がやや声を張り上げた。

「カツカレーを注文された方、いらっしゃいませんか?」

…が誰もそれに応じる者はいない。注文途中の客もいなかったようでカツカレーは宙にに浮いた状態になってしまった。店長はカレー鍋の横にとりあえずカツカレーを置いた。



店長はこのカツカレーをどうするつもりなのだろう?もし次の客がカツカレーを注文したらそのまま出すのだろうか?そんな疑問が浮かぶ。



今お客がカツカレーを注文すれば、間髪入れずカツカレーが出すことができる。

「カツカレー!」「カツカレーどうぞ!」

ええーーーーーー!!早!!なんて感じになるはず。

ちょっとワクワクしながら引き続きカレーの行方を見守っていると、立て続けにお客が2人。



さあ!注文するのだ!「カツカレー!」と。



ところが2人のお客はカツカレーを注文しなかった。一気にテンションが下がる。

「間髪入れず、カレー」「驚くお客」の図は目撃できなかった。

店長は、2人のお客にてきぱきとカレーを出して一息つくと、鍋の横で大人しく待っていたカツカレーに目をやり、ラップをかけた。そして、カツカレーを持って奥へと消えた。



カツカレーはカツカレーとしての人生(?)をまっとうできたのであろうか?



そんな新たな疑問が浮かんだのであった……



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― 新着の感想 ―
[一言] これからカツカレーがどうなるだろうか、とわくわくしながら読ませていただきました◎
[良い点] ごくごく何気ない日常の中の、小さな出来事という視点はとても好きです。 [気になる点] 句読点を工夫すると更に読みやすくなるように思いました。 [一言] 途中に入る、間髪入れずにカツカレーを…
[一言]  このカツカレーは、「まかない」ですね。ある意味、人生を全うしたのだと思います。普通のカツカレーたちとは、少し違う人生。それもまたそれ、ですね。  僕はこのような日常で起きた小話が大好きなの…
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