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短編 『嘘だよ』

作者: クル

私はよく適当にものを喋る。特に思ってなかったりして話すことが多いからすぐに嘘だと言う。私にはそれをしても話してくれる友人がいたし、たいていの男子は可愛い私の可愛い嘘程度にしか感じていなかった。

ある日、好きな男子と話していると友人にからかわれた。そう言われたから私は正直に

そりゃ…彼のことが好きだからね

と答えた。友人は少し驚きながらニヤニヤしていた。私は自分の顔が熱くなるのがわかった。正直にあまり期待はしていなかった。でも、少しぐらいは喜んでくれると思っていた。


ちらりと見た彼の顔はとても困っていた。

そんな事を言われても困る。そう言われているようであった。


私は一瞬どんな顔をしたか覚えていない。


嘘だよ


後で友人から聞いた話ではそう言っていた私は明らかに不自然な笑いをしていたらしい。

それから何を話したかはわからない。覚えていない。気がついたら真っ暗な自室でうずくまっていた。


気持ちの行き場がなかった。いくら泣いたって治るわけない。ある意味私のこの気持ちは一番まとめて欲しかった人間に根底から否定されてしまったのだ。


何が可愛いだ。好きな人に届かなければ見た目などただ邪魔なだけだ。




その晩は寝ることも、泣く事も出来ずに一晩を明かした。




翌朝、友人が心配をかけてくれた。どうやら酷い顔だったらしい。私はなるべく昨日のことは思い出さないようにみんなには返事をした。


その日彼は休んだ


その日の体育はとても辛く、私はいつもよりへばっていた。でも、身体を動かすことで何が心の奥に溜まっていたものが外れていく気がした。それに縋るように私はがむしゃらに頑張った。自分のキャパをオーバーするほどに…


気がついたらベットの上にいた。保健の先生からは寝不足なのに体育で無茶をしたからと言われた。

私はサイド布団に入る。さっきのは錯覚であったのか…この胸から溢れ出る歪で歪みきったこの感情が先ほどより強くなっていた。



私は地獄に落ちたのかな…



愛とは人を狂わせると言います。もしかしたら私はすでに地獄に落ちるような事をしてしまったのかもしれない。そう思ってしまっては現在の抑えることのできない心には抑えるとができなかった。



声は出ない。私は静かに泣いた。



ある程度泣いたところで私は自分に言い聞かせる。


嘘だよ


私はこの感情に蓋をした。意地でも無理に笑った。場の空気を考えて無理に笑ってみせた。そんな事をしているといつの間にかこの感情は無視できるまでになった。でも、同時に大事なものがないことに気がついた。


本音が出てこない


私は本音に蓋をした。蓋をして押し殺した。そしていつの間にか消えていた。


自分という殻のみが私には残ってしまった。そのことに気がついた私はもう嘘だとは言えなくなってしまった。


本音がないのだ。嘘もないのだ。



こうして私は自分を見失った

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