平和を望むものは、
今度、ソウェルト主催の晩餐会があるらしい。
でも、ラウェトが来るから空気はピリピリすると思う。レイさんもピリピリしてたから、仕方がない。
でも、前から気づいてはいたけど、あんなものが地下にいたとは気持ち悪いな…
レイさんが問題ないと言うなら、問題ないだろうな!みんなも怖がってはいたけど、レイさんの言葉で平然となったもん。
やっぱり、好き!
『SNより』
騒がしい食堂でヤナダとコウキは食事をする。
コウキが今朝の連絡事項で聞いた話題に触れる。
「ヤナダ君、今朝のソウェルト主催の親睦会はいつから決まってたの?」
「結構前から決まってたよ」
「そうなんだ。何度か話しには聞いてたけど、行われた記憶がないな…」
「うん。何度も僕らの国とダクゼェアを仲良くさせようと、ソウェルトは手を貸してくれるけど、ダクゼェアの奴らは約束をすっぽかするからね。きっと、仲良くしようなんて思ってないだよ」
コウキは納得した顔を思い浮かべて、思い出した言葉を呟く。
「あ、彼らの祖先は戦闘を好む民族らしいしからね…」
ヤナダは、それは知らなかったという顔でを浮かべる。ボソッと歴史は得意じゃないだよね、とささやいた。
ほとんど空いていない食堂でコウキの隣は僅かに空いている。
「そうだ、ヤナダ君。親睦会のその…晩餐会はお姫様が参加するんだよね?」
「うん。護衛には誰が参加するんだろうね。僕らの組はハルキはもう決まりだろうけど」
「さすがハルキ君」
「コウキ君、君も参加だよ。よろしくね」
それの前に、隣失礼します、とか細い声が聞こえていたが、突然の出来事で驚いてしまった。
「!?えっと…」
「ツイキさんだよ」
ヤナダがツイキに軽く会釈してか名前を言う。
彼は、うん、初めましてかな…、聞こえないわけではないが、少し小さい声でツイキがそれに同意する。
「あ!ジャナさんと同じ班で、班長してた人ですよね?」
小さく頷くツイキを見兼ねたヤナダが軽く詳細紹介を始めた。
「彼は、5年上の先輩でその年の魔法成績2番の実力者。あー、頭が賢いわけじゃないらしいよ。僕の言葉じゃなくて、これは本人曰く。ですよね?」
頷くと小さめの声は変わらず、コウキに話しかける。
「コウキ君の能力は初見相手にかなり有効だから」
「おお、がんばってね!」
ツイキの言葉を聞くとヤナダはコウキの背中を軽く叩き、声援を送った。
「うん!頑張るよ!」
***************
暗い廊下でツイキは話しかけたれた。
「ツイキ先輩、こんばんは。今度の晩餐会ではよろしくお願いします」
「ハルキ君か。すっぽかしなければ、だけどね」
会議が先ほど終わったのだろう。
大量の資料を持つハルキを見て、笑いでもとるかのように少し笑いながら言う。
「さぁ、どうでしょう。今回は参加するのでないしょうか。ソウェルトとの友好関係を崩したくはないはずですから」
笑ってくれるかと思いきや、真面目に分析して返された、それにやや落ち込むが素直に頷くツイキ。
「そういえば、ハルキは薬はどれくらい貰ってるの?」
「ツイキ先輩と変わらないと思いますよ」
そう返されて、少し間ができた。聞いたのはいいが、答えを考えていなかったのだ。
「そっか…立場が上がっても変わらないのか。ずっと、左腕は動かしづらいままなのかな」
「そうかもしれませんね」
仕事が多いだけ、と言って答えるハルキはなんの間も無く答える。
「薬が増えたら、痛まなくなると思う?」
「なると思いますよ」
意外な答えだった。憶測であろうその言葉に説得力があった。
多く貰っていないという彼の言葉は嘘ではないのに試したことがあるような口ぶりだった。
「…そういえば、いや、なんでもない。晩餐会頑張ろうね」
「はい、お疲れ様です。おやすみなさい」
ハルキの後ろ姿をチラリと見てから、自室に帰る。
彼の体の機能で問題があるところはどこなのか。聞いたことないな…
なかったりするのかな…
思えば、”あの彼女”も痛いがる姿を見たことない。
知りたいかったな…
「ヤキワスレ出身同士でも、みんな違うなー」
廊下には誰の影もない、誰にも聞こえない独り言を窓の外に向かってツイキは吐いた。
ツイキ:男。特に目立たない。でも、魔法成績二番で弱くない。とりあえず、目立たない。至って無害な人。声が大きくない。左腕が少し不自由。頭は良くない。
SとSで被ったのでもう一人はSNにします。