”ヤキワスレ”は短命だとか。
その日は、まだみんなが11歳くらいでみんなが今まで訓練を受けてきて一番きついかった日だと思う。それは恒例の日らしい。まだ成長しきっていないみんなの体は睡魔に追われていた。だけど、長い休憩なく、その授業はあった。
先生は始める前に言った。
「今日の授業は試験ででない」
と、そういって、私と彼以外の子たちはうたた寝もしくは爆睡をしていた。
授業の内容は、”ヤキワスレ”についてだ。
『Sより』
視点ーコウキ
知らなかった…
ハルキ君が”ヤキワスレ”出身だったとは知らなかったな…
”ヤキワスレ”出身か
聞いたことがないわけじゃない
ゴミ溜めの地域。 毒物の山。
忌みされる地域。 捨て子の集まり。
ここにきた奴は快楽殺人者。 決して、涙を流さない氷の心の持ち主。
そうゆう風に話を聞いたことがある
多くの情報はないけど、そこの出身は人柱を作り、ここの傭兵になる
忌み嫌われるはずの出身者だと
でも、ハルキ君を見てるとそんなものは感じられない。
大分、好かれてるよな…
それより…
***************
「ヤナダ君」
「なに?コウキ?」
「ハルキ君って、四年前の容疑者と近い関係にあったりする?」
四年前のことだ。正直、覚えていないかもしれないと思ったけど、気になる。
もし関係者なら、ハルキ君やこの教室のみんなが知っている秘密があるかもしれない。
僕は少し、わくわくしていたんだと思う。知りたかったから、四年前の真相を…
「……」
ヤナダは静かに下を向いていた。
それに対して、僕は多分、浮かれていて笑っていたと思う。
「ヤナダ君?えっと、覚えてない?あの事件なんだけど…」
「……それ、俺らのB教室の奴に聞いた?」
「いや、まだだけど…」
いつもと違う雰囲気のヤナダに僕は気づいて、少し戸惑いながら返答した。
「そう。はぁ、コウキはさ…いや、悪い言い方をするね」
ゆっくりと顔を上げるヤナダは真剣そのもので、少し怒っているかのように思えた。
「えっと、それはどうゆう意味…?」
「コウキがどんな階級でも分け隔てなく接する人だとは聞いてる。だから、高階級者以外の友人も多いって聞いてる」
「そうなの?」
「でも、高階級者は高階級者だ。それは変わらないね。
ねぇ、コウキ。
君らの親は基本、死なないね。最前線で戦わないから。
命を落とす確率が高い作戦では特に参加しないし。
あの事件で、誰が死んだ?誰の親が死んだ?
少し考えてものを発言してよ。あれに傷ついてる奴が多いんだから。うちの教室の人らさ」
ヤナダが怒っいるところ想像できなくて、いや、したことなくて、僕は放心状態だったと思う。
怒る決まっていることをただ自分の好奇心を満たす為に発言したんだから。
勝手だった、迂闊だった。
それでも、知りたいと今も思っている自分が許せなかった。
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「ヤナダを怒らすとは、なかなかの強者だな。コウキ」
「ゼア君…」
朝の鍛錬の取っ組み合いをゼアにしてもらった。
きっと、凹んだ俺を見かねたんだろう。ゼアは馬鹿にするわけでもなく、あくまで冷静に話してくれた。
「何で怒らせたかとか、知らないし聞かないけど。今回も調査班で離れるわけだし、時間が経てばヤナダから許してくれるさ」
「そうかな…?」
ヤナダが違う人と組んでいるのをチラッと見ると、心が抉られるようだった。
「まぁもしもの時は…ハルキに事情を説明して助けてもらえ…」
「え?」
僕をなんとか励まそうとしてくれているゼアから、「ハルキ」の名が出てくるとは、思っておらずキョトンとしてしまった。
「あ。最終手段の中の最終手段だけらな!一応、使うな」
付け足すように言うゼアは、昨日、ハルキに「信んじられない」と言っている同一人物には見えなかった。
本当はゼアも魔法成績二番とハルキが三番という競争相手だからこそ、素直になれないだけなんじゃないかなと思えた。
「ゼア君、ありがとう」
訓練の日々が数週間過ぎ…
ヤナダとはまだ仲直りできずに、調査班の任務が実行されることになった。
***************
感知型の人と訓練してきたけど、ハルキ君が優秀だということが一目瞭然でわかる。
それほど、他の感知型と違う。
「G班、一時の方向に750m先に6人、H班はすぐに援護を、A班はD班と合流しておいてください」
通信機に向かってハルキが指示を飛ばす。
『こちらD、敵の距離は?』
「950m先です。数は9」
『了解した』
彼の頭の中、本当にどうなっているだろう。
他の人は感知するのに、目を瞑ったり、立ち止まったりするのにそれがない。
「僕らは引き続き、D班の後ろを維持する」
「了解」と、僕らの班が各々に返事をする。
ゼアもこのときはしっかり返事をするようだった。
『ハルキ、A班の方には敵はいないのか?』
「はい、視えません」
ハルキはどこまで見えているだろう。一般的には100mって聞くけど。
魔力の壁で人数の感知しづらかったり、人数が多すぎても感知しづらいとも聞く。
『G、H合流しました』『交戦します』ー「はい」
『D班、接触します』ー「はい」
*
*
*
*
ハルキ君が敵の報告を本部と連絡しあいが続いていた。
本当に戦っているだろうな…
ヤナダ君は大丈夫かな
A班は前線だし…ジャナさんが一緒とは聞いてるけど…
「僕たちも、D班に合流する」
返事を返すのと同時に、さっきよりも早く駆け出す。
「100m先に、すぐだ。新たな敵とD班の援助する」
また、ハルキの指示の返事をしようとするのと同時にハルキが大声を張る。
「ジャナ、前に出過ぎだ!ツイキさんの指示に従え!」
「A班、先ほど言った爆弾はジャナの前の木にあります」
『了解、すぐに処理する!』
ハルキが走りながら指示を出しているのを聞いている内にA、D班の後ろに着いた。
だが、敵はもういなかった。ジャナが最後の敵を炎で真っ黒にして最後だった。
「なんも、することなかったな」
ゼアが物足りそうな顔して言う。
「そうだね…」
初めての調査班に何もせず、終わるのは正直残念な気持ちでいっぱいだった。
それで僕も不足そうな顔を浮かべていたが、ハルキの訓練以上のを見て、ハルキを見る目が輝いていた気がする。
「すごいな…」
ハルキを見て、思わず驚嘆しているとその独り言をヤナダが拾った。
「ハルキはすごいだろ?」
ニコっと笑っていたヤナダを見て、今回の調査任務が無事に終わったことよりも、安心した。
「ヤナダ君、怪我とかない?あと、ごめんね」
「ハルキの指示のおかげで無傷です。…ううん。俺こそ意地悪だった。ごめん」
「いや、無神経だったのは事実だから!」
ヤナダが僕に何か返そうとした時、ジャナが騒ぐ声でかき消された。
「ツイキの指示出すのが遅い!それが悪い!」
「ツイキさんとの任務は初めてではないだろう?合わせることが出来ないからって人のせいにするな、ジャナ。あと一歩でも進んでいたら、死んでいたかもしれないだ。反省しろ」
ハルキ君って怒るんだ…いや、想像できなかったわけでもないだけど。
副班長だし、しっかりしてる。同年齢とは思えない。
「うるさい。次は気をつける…」
ジャナは素直に頷いたりはせず、少し抗ってから承知したようだ。
「僕に言うのではなくて、ツイキさんにだよ、ジャナ。君が首位だからこそ、言うんだよ」
「うーん。わかってる…ツイキさんとこ行ってくる…」
素直になった。そういえば、ジャナさんはハルキ君の言うことにあんまり反対とかしない。
「ハルキはやっぱり、みんなを引っ張っていける人だよね。そうは思わない?コウキ」
「そうだね。でも、出身のでせいで無理なんだよね?」
「…うん。どうにかしてあげたいよ…」
自分のことのように、みんなハルキが上官の位を望めないことを落ち込んでる。
彼が上に立てば今より良くなる気がする。僕もなってほしいな…
「僕もだ」と、言おうと思った時、ジャナが不可思議なものを見るかように僕の前に立ち、ジッと見てきた。
「B教室の二番と三番が前線にいないのは、不自然だよね…?あなたが高階級者だから?」
「え?」
「特別に何かあったとしても、なかったとしても、守られているよね…?」
ジャナのその言葉には、何か嫌味を含んだ言い方には感じなかった。ただ純粋の疑問だと、その目が語っていた。
だからこそ、その純粋までの真実のような言葉は心に刺さった。
否定の言葉なんてでなかった。そう考えることが、全く不自然のない考えだからだ。
「いやいや、ジャナ、偶然だよ!」
ヤナダはそうは言ったが偶然に終わらせるよりも、ジャナの考えの方が信憑性があった。
僕は高階級者で、特別扱いされていると…それが今回の班構成だと…
「コウキ君がゼアと僕の班にいるの偶然ではないよ。まぁ偶然だというなら、今回の敵の少なさかな。今回、予想された人数よりも大幅に違ったんだ」
ハルキ君に偶然を否定されたのは、誰よりも大きな意味を持っていた。
「あ、やっぱ、高階級者は死なないようにされてるんだね」
ジャナの無邪気な言葉が泣きたくなるほど、心が痛かった。
「高階級者は関係ないさ。
ジャナと同じでみんな経験者だったけど、コウキは今回が初めて調査任務だ。
まだ慣れきってもいないのに、すぐに参加させてしまったことのイセフさんからの配慮らしいよ。
そうゆう意味では特別だね。
でも、全員参加だということは、敵の数的に、難易度が高いこともあった。
不参加、もしくは、死ぬ確率の回避というならば、ゼアと僕がいる班の後ろの班だったはずだろう?」
「あー、なるほど。確かに」
納得したようで、ジャナは先に戻ろうとした。それに、ハルキがジャナを止めて、首を横に振り、目線で何かを伝えていた。
「コウキ。気悪くさせた?ごめんね」
「あ、いや。僕も心懸かりだったから…いいよ」
「よかった。ん、じゃあね」
ジャナはその場を去っていた。
ハルキがそれを見てから、こちらを向く。
「班の構成は今回だけだろうから、気を病むことないよ。次のことを思って、B教室で一緒に成長しよう。イセフさんが配慮してくれたことを一言、会ったらお礼を言っておくんだよ」
「あ、ありがとう、本当に…ありがとう」
ハルキが言ってくれなかったら、ただただ悲しかっただけだろう。
でも、上部の人たちに気を使われたいたのは真実で、次はないとは言ったけれど、それは僕の成長次第だと、そう言ってくれたように思えた。
「いや、本当のことだよ。それより、コウキ、ヤナダ、報告書は明後日までだから。では、失礼するよ」
ハルキの後ろ姿もぼやける程度になった時。
「なんも言えなくごめんね」
「え?あっジャナさんの言ったことか。ううん、頑張るよ、僕!イセフさんや上部の人らに気を使われないくらいに」
「そうだね。頑張ろう」
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「感知型の人は明日、集まって。調査任務で敵の不審点について話し合うから」
前方ー A班 D班 G班
間ー B班 E班 H班
後方ー C班 F班 I班
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左 右
*今回の作戦の位置。