ダクゼェアとの戦いの前日。
ーある日の前日:1
ヤナダは壁に寄りかかる顔見知りを見つけた。
それは少しくらい顔するハルキだった。
「どうしたの、ハルキ?」
「少し気分が優れなくてね」
顔色がかなり酷いとかでない。だが、彼らしくない言動だ。
それがとても心配になった。
「え?大丈夫なの?」
「少し休ませてもらおうと考えているところだよ」
ハルキは少し考える仕草をとってから、彼は言った。
「そっか…よく休んでね」
手助けしたいがどう助ければいいか、わからない。
そんな気持ちが声色に影響した。敏い彼だから、考えていたこともわかったんだろう。
大丈夫だよ、ありがとう、と彼は笑って去っていた。
この日以来、ヤナダとハルキが二人で話す機会は当分来なかった。
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ーある日の前日:2
声が聞こえた。少し揉めているようだ。
「午後から参加します。ですから、それまで、休ませて頂けませんか?」
「何を言っているんだ?お前は作戦の要だぞ?そんなの許可できるはずがないだろう!」
両方とも見知った声だ。一人は最近、上部で評価が上がっている人間、もう一人もそうだ。
だが、ヤキワスレの存在が認められる日なんてこない。
どうせ、同じ結末を辿るのだろう。
「いいんじゃないですか?午後過ぎてもいいよ。しっかり休みな、ハルキ」
「な!?イセフさん!?彼は大事な役目を担っているんですよ?」
突然、現れたイセフの存在に一人、驚いた。
「ハルキ、もういい。下がれ。私が許可する」
驚きながらも発言する者の言葉を無視して、ハルキ指示を出す。
「…ありがとうございます。失礼します」
ハルキは少し伺うように礼をした。
ハルキの背中がみえなくなってから、イセフは困った顔を浮かべながらもにっこりと笑った。
「困りますよ。頼ってばかりでは…」
少し間が空いてから、男が口を開いた。
「ハルキは確かにあそこの出身ですが…あの少女とは違いますよ?」
少し皮肉が含まれたような言葉に淡々と諭してやる。
「だとしても一人に頼るのは良くない。これ以上言うなら、私も考えがあるが?」
「…いえ、失礼いたします」
臆したのだろう。さっさと逃げていった。
ハルキを使うことで彼の評判は上がっている。
ハルキがいなければ成り立たない。
そんな不安定なものにすがるのは、よくないだろう。
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ーある日の前日:4
ゼア、スズレ、コウキが廊下で会話していた。
先ほどまで、ヤナダがいたのだが、もういない。
「あのバカ、体調崩してるらしいな。日頃からバカみたいに無茶するつけだな」
「素直に心配できないの?」
スズレがゼアに呆れたかのように言いのける。
「はぁ??違う。体調管理ができてないって言ってるだけだ」
ゼアはスズレの呆れた言い方に腹が立って即否定する。
「ハルキ君なしで、”氷結”の相手できるかな…」
そんなことお構いなしにコウキがつぶやいた。
「……」
スズレは難しい表情になりながら、黙ってしまった。
「するしかないだろう」
ゼアは普段通り。どこか遠くを見ながら、堂々としていた。
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ーある日の前日:5
スズレが地図を広げていると扉が開いた。
「スズレ、回復担当のトウコだよ!」
大きな声で自己紹介するトウコを見てから、黙って地図に視線を戻す。
「ハルキが午前参加しないって聞いて、辛い気持ちを誰かに聞いて欲しかったの。だから!聞いて!」
無視したことを無視してトウコが話始めようとする。
「うん…いいけど、回復担当さんだからこそ、早く寝なよ…」
冷静に正論を伝えるがトウコは屈するわけもなく、飄々としている。
「ダクゼェアも”まだ”動いてないらしいし、少しくらいいいのよ」
「わかったわ。少しだけね」
話を聞くのと同時にスズレは書類に文字を書き留め始める。
そんな話に興味がない言動にトウコは面白くない顔を浮かべた。
「スズレはハルキ好きなくせに、全然好意を訴えないわね」
ニヤッと笑うトウコ。
「なっ何言ってるの…正直、尊敬している方が強いんだと思う。あんなにハルキは忙しいのに、爆弾、薬学の知識も勉強して、日々の鍛錬も怠らないし、竜を召喚できる才能とあの感知の才能に私は憧れてるのよ」
スズレはすぐに切り替えて真面目な顔で言う。
「そう。まぁハルキの美人が好みだとか、顔が大事ってわけじゃないだろうから。お互いに頑張ろうと思ったんだけどね。そうゆうことなら、私一人で頑張りまーす」
「…カオリ先輩、本当に振られたの?」
”美人”って言葉につい反応してしまったスズレが不審そうに質問をする。
「ハルキは言いふらしたりしないからね。カオリ先輩が吹っ切れたからだろうね。振られ話がで回ったのよ。情報通じゃないと知らないけど」
「そうなんだ…それより今は明日の敵に集中してよ」
「もちろんよ!ハルキの分まで頑張らないとね」