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噺の扉(短編集)

僕達は君だから。

作者:

僕の側には、いつも…。

毎日毎日、失敗ばかり。


今日も、仕事で失敗してしまった。


大事な資料を間違えてシュレッダーにかけてしまったり、待ち合わせの時間を間違えて会議に遅れたり。


部長には、凄い剣幕で怒鳴られた。


就職してから、8年目。


知らない内に、若手から中堅になり…気付いた時には、周りには後輩ばかり。


先輩には、お前も先輩になるんだからしっかりしろよって言われたけど、こんな駄目な僕が先輩としてやっていけるのだろうか。


不安で不安でしょうがない。


いっそ、仕事をやめて田舎に戻ろうか…


なんて落ち込んでいたら、自分の体の内側から複数の声がした。


「なんで、そんなに落ち込んでいるの?」


「誰にだって、失敗はあるんだから気にしないで。」


「そんな小さな失敗を気にしてたら、生きていけないよ!」


「失敗したら、次にまた同じ失敗をしなきゃいいのさ。」


ーえっ?何?何処から声が聞こえるんだ?ー


僕は、周りを見渡した。

しかし、周りには僕以外の人間は居なかった。


「ここだよ、ここ! 君の内側だよ!」


ー内側?僕の内側って、何で?ー


「「「「だって、僕達は…君だから。」」」」


楽しそうに、声が重なった。


「えっ?何? 訳分からないって?」


「そんな事はない筈だよ!

よ~く、落ち着いて考えてごらん?」


不思議と、僕には思い当たった。


「もしかして、君達は…僕のこころなのかい?」


「「「「正解~!!!」」」」


またもや、楽しそうな声が重なった。


「でも、何でいきなり 僕のこころが話しかけてきたんだい?」


「君が悲しそうな顔をしたから、胸がズキンズキンと痛くなって。そしたら、胸の奴が君を元気づけてやってくれって言うからさ!胸の奴、君の事…すごく心配してた。」


「脳だって、君が同じ事を悩むから…疲れたんだってさ。早く、元気になって欲しいらしいよ!」


「胃なんか、君が落ち込む度にキリキリと痛むから嫌だって言ってたし…」


「目に至っては、君を傷付ける世界なんて、写したくないなんて言って、瞼の事 困らせているんだから。」


「えっ?胸に、脳、胃も目も心配しているだって?」


「そう。皆、君の事…心配しているよ。だって、僕達は君だからね。」


こころに、そう言われた瞬間…なんとも言えない気持ちになった。


悩む度に、ズキンズキンと痛む胸…疲れる脳…キリキリと痛む胃…そして、開きにくくなる目。

その全てが僕を心配してくれていたなんて。


「言っただろう、僕達は、君だから。」


「嬉しい時も、悲しい時も、いつも一緒だよ。」


「小さい頃から、君と生きてきた。そして、君を見てきた。君は、強い人だ。駄目なんかじゃないよ!」


「だから、諦めないで!僕達と頑張ろうよ!」


気付けば、僕の頬には温かい涙が流れていた。


その涙さえも、落ち込んでいる僕を励ましてくれているような気がした。


僕は、一人じゃないんだ!


僕には、僕の事を心配してくれる仲間がいる。


そう思うと、力が沸いてきた気がする。


「僕、頑張るよ! 皆に、心配掛けないように…皆が安心できるように。」


僕は、皆に向かって大きい声で宣言した。



「「「「僕達は、君の事…いつも応援しているから。」」」」



最後にそう言うと、こころの声は聞こえなくなっていった。









落ち込んだ時は、皆(心や体)がついているから大丈夫だと自分で自分を励ましています。

そうすると、不思議と安心するんです。

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