2-007
クロスリードにある宿で一番安い、という衛兵の言葉で多少の不安はあったのだが、その安さの原因が、この宿の主である少女であると分かったら十分納得できた。
ミリアのためにも二部屋用意するように交渉をしたが、それでもこの宿を利用する冒険者は多いために一部屋しか提供できないらしい。
―――それもそのはずだ、と独りごちる。
リリィが何かと理由をつけて通常料金よりも安い値段で部屋を提供しているのだ。
本来なら赤字ぎりぎりのはずだが、それも人を多く寄せる力技で十分な黒字になっているとのこと。
俺に部屋の案内をしている目の前の少女一人だけで回せるような仕事量ではないはずだが。
いくら手伝いがいるといっても、宿の経営について知っているのはリリィのみだろう。
「何かあったら呼んでね。カウンターにいなかったら奥にいるから、その時は大声出してくれれば気付くから。二人部屋で少し狭いかもしれないけど、我慢お願い!」
そう言ったリリィだが、目の前の部屋を見る限り、不便さなど感じられなかった。
脇にシンメトリーに置かれているベッドに、木の机と椅子。宿の出入りの多い冒険者が使うには、十分すぎる広さだ。
「……アンタ、よく一人でこの宿を経営できるな」
俺の呟きに、リリィは誇らしげに腰に手を置いた。
「そりゃあ、楽しかったら出来ないよ。さっきも言ったけど、あたしの幼馴染と親戚のおばさんも宿の経営手伝ってくれてるからなんとかなってるんだよ?」
「それでもあの広間の人数をこの宿に置いてるってなると、トラブルもよく起こるだろ?」
「そういうときは、鍋片手に問題行動を起こしたお客様に制裁。小娘だなんて舐められたくないしね!」
ニコニコと笑うリリィに、呆れ半分だ。
強かな少女だなぁ、と心の中でしみじみ思う。
「それにね……」
なにやら、一瞬いたずらそうな雰囲気を含む空気になったような気が、と思ったら、俺たちの後ろで宿屋の中をキョロキョロと見渡していたミリアに近づいていく。
「にゅふふ……」
「え、あ、あの……なんでしょうか?」
突然目の前で不可解な笑い声を上げたリリィに、ミリアが嫌な予感を感じて一歩退いていた。
「そおりゃあっ!」
「ひぁっ……!!な、なにするんですか!」
突然ミリアに抱きついて、そのままぐっと離さないでいる。
「こういう可愛らしいお客さんもくるから、宿屋の経営ってやめられないんだよね。うわぁ、お肌スベスベ、まつげ長いし……同じ女として嫉妬しちゃう」
「や、やめて……ひっ!!どこを触って――――ふぃいゃあぁああぁ!!」
ミリアもまた素っ頓狂な声をあげながら、すりすりと頬ずりしてくるリリィに、真っ赤になりながら抵抗している。
あまりの光景に、俺は咄嗟に目を逸らした。
「アルトっ……!助けてください……っ!!」
「……」
「む、無言……!?あ、アルトぉ……!!いやああああっ!!!」
数十分後、自分のやるべきことを成し遂げたかのようなほっこり顔のリリィと、壁に寄りかかって真っ白になっているミリアの姿。
……ご愁傷さま、とでも言えばいいのか?
宿の経営者だからといって、その客にセクハラまがいの事をするのはどうかと思ったが……もしや、こういう油断ならないところも冒険者に人気なのだろうか。
「いやぁ、堪能した堪能した」
「……」
もはや、何かを言う気力も起きない。
ミリアへの関心はどこへやらで、鼻歌交じりに部屋の窓を開け放ったリリィは、ほこり等が残っていないかを確認しているようだった。
「さてと。ほこりもなし、特に壊れそうなところもなし、と。じゃあこの部屋使ってね!」
「……ああ、助かるよ」
「昼食と夕食の時間になったら一応部屋をノックして呼びに来るからね」
そこまでするのか、この宿は。
他の宿ではしないことを、よくもまあ進んでやることができるものだ。
俺がまた驚いていることが分かったのか、リリィはこちらを向いてにこっと歯を見せて笑った。
「ねぇ、でさ、お兄さんたちって有名人なの?」
と、唐突にそんなことを聞いてくる。
おおよその察しはついていたが、やはり先ほどの冒険者の言動をリリィは聞いていたみたいだ。
「そんなわけあるか。ただのしがない旅人だよ」
「でもさ、えーと……あの冒険者のおじさん、オルガさんって名前なんだけど、結構名の知れた冒険者なんだよね。そんな人がキミの名前聞いて驚いてたし、なんかあるんじゃないかなぁって思ったんだけど、違う?」
オルガ、というのは、俺の名のゼノヴェルトに反応していた冒険者か。
確かに、他の若い二人組は俺の名を知らなかったようだが、クロスリードに何十年もいるような者には、おそらく伝わっている名なのかもしれない。
「別人と勘違いしたんじゃないか?俺はあのおっさんのことをまったく知らないし、第一、二十歳にもいかない俺みたいな奴が、有名人なわけないだろ」
「そうなの?なんか怪しいんだよねぇ。仕事柄色んな情報が入ってくるけど、キミの名前はあたしも知らなかったんだ。それにあんな美人さん連れてるから、クロスリードで有名人になっててもおかしくないんだけど……」
「……妙にしつこいな。俺が有名人だったら何かあるのか?」
「当たり前!有名人がこの宿を利用してるって分かったら、たくさんの人が来て商売繁盛でしょ!」
……この少女は、これ以上仕事を増やしたら、逆に経営が困難になることが分からないのだろうか。
「いやいや、だってさ、ローガンさんに会いに行くんでしょ?ローガン・ランドウォートっていったら、冒険者ギルドの不平等さを是正した人なんだよ?そんな人に会いに行くなんて、猶更怪しいじゃない?」
「是正って……そんなすごい人物なのか」
聞いていない情報だった。
ディモンが完璧な情報を提示してくれなかったのが一番の問題だが、俺がその人物に会いに行ったとして、いったい何をしてくれるのだろうか。
ディモンから預かった便箋をローガンという人物に渡して、その意味も明らかになれば良いのだが……。
期待を込めた眼差しでこちらを見つめてくるリリィに、もはや呆れ返るしかなかった。
「あのな……俺たちはただそのローガンって奴に会いに来ただけなんだ。用が終わったらクロスリードから出て、次の町や村に行くことになってる。この都市に長く留まるつもりはないからな」
「えぇーそうなの?残念だなぁ、いいカモ……じゃなくて、将来有望な人と仲良くなれるかなって思ったのに」
「……アンタの商売魂には頭が上がりそうにないな」
自分の宿に誇りがあるのか、使えるものなら何でも利用する、という少女の根性は他の冒険者にも負けていない。
「これからすぐに冒険者ギルドに向かうから、少し空けるぞ。鍵は?」
「はいはい、鍵はこれ。昼食の時間はもう過ぎちゃってるから、夕食を楽しみに待っててね」
そう言って、部屋から退室する―――と思いきや、扉からひょっこりと顔を覗かせた。
「そうそう、部屋は汚しても構わないからね!むしろ汚してください、みたいな?」
「いいからさっさと戻れ」
こいつ……俺とミリアを見ながらニヤニヤと笑いやがったぞ。
悪戯そうな笑みを浮かべて、そのまま階段を下りていく音が聞こえた。
……まあ、他の宿よりも活気のある、いい宿か。
「……ミリア、おい」
そして、先ほどから部屋の片隅で真っ白になっているミリアに小さく声をかける。
肩をぶるぶると振るわせて、足を抱え込んで座ったままだ。
「冒険者ギルドにいくぞ。……た、立てるか?」
ああ、なんというか、怒りの矛先がずっと俺に向き続けている気がする。
恐る恐るミリアに話しかけると、壁側に顔を向けたまま涙目になっていた。
小さくコクリ、と頷いて、俺の手を握ってくる。
……後で、埋め合わせはしよう。
◆
クロスリードの北西に位置する場所に、その建物はある。
横幅のある、レンガ造りの巨大な建物だった。大きく開かれた入口から無数の冒険者たちが行き交い、その建物が冒険者にとって最も重要な建物であることを告げている。
クロスリード、冒険者ギルド本部。昼間を過ぎた時間帯故に、ギルド本部に入ってくる冒険者は、数えきれないほどだった。
中は共同酒場が経営されており、その中で冒険者のパーティが、仕事内容について語り合っている。
喧噪の渦が満たす冒険者ギルド内にいるのは、冒険者のみではない。
依頼受付前で、冒険者に依頼内容の紙を渡した少女は、話し込んでいる冒険者たちに笑顔を向けながら、心の中で疲労の愚痴を繰り返していた。
(……寝不足でつらいんですけどね)
落ちそうになる瞼を必死に見開いて、シエラは冒険者たちの返答を待つ。
冒険者ギルドに所属する者たちは、必ずその実力をギルド内の基準でランク付けされることになっている。
ランクは大きく分けて5つで、Aが一番上、Eが一番下だ。
Eランクが請負うことができるのは、クロスリード内で起こる問題を解決する仕事だ。
時には雑用、時には依頼人の仕事の手伝いなど、いうなれば、何でも屋といった方がいいだろうか。
もちろん、後の昇格試験に合格すればそのランクは上昇し、請負える仕事もクロスリード内の仕事のみではなくなってくる。
D以上のランクで、魔物の討伐に関する依頼を請け負うことができるが、それでもDランクの魔物退治は命を落とすことがないような、弱い魔物の相手をする依頼ばかりである。
そして、今日の昇格試験でランクCになった冒険者たちが、たった今目の前で依頼内容を請け負うか否かを相談している真っ最中だ。
さっさとしてくれないかなぁ、と心の中で毒を吐くシエラに気づかずに、悩みに悩み抜いている。
まあ確かに、今しがたランクCになったのだ。命を懸ける仕事が増えてくるCランクの依頼は、冒険者のパーティ内でよく相談して決めるのは当然のことだ。
しかし、だからといって、その相談を目の前でされるのはどうかと思う、とシエラは毒づく。
隣に共同酒場があるのだから、そこで話し合いをしてほしいし、この時間帯は冒険者たちが増える。
そんなときにこんなところで依頼内容の相談をすること自体が間違っているというのに。
(はあ……私たちの仕事のことにも気を使って欲しいですね。まったく……)
と、そこでやっと依頼を請け負うことを決めたのか、冒険者の一人がシエラに依頼内容の紙を渡してきた。
やれやれ、と思いながら、シエラはその紙に受領のハンコを押して、冒険者に手渡す。
そうして一連の流れが終わったシエラは、後ろに延々と続く行列にため息を吐いた。
数十分後。
並んでいた冒険者たちの相談を聞き終わり、シエラは座っていた椅子に深く腰を落とす。
一日におよそ五百件、多いときは一千件を超える依頼を精査し、冒険者たちに渡す作業は正直に言って苦痛の一言だ。
依頼内容の文句を受付係の自分に言ってきても何の解決にもならないし、こちらのストレスが溜まり続ける悪循環である。
「お疲れ、シエラ」
と、後ろから声を投げかけられる。
受付係仲間である女性が、にこりとこちらに微笑んでくる。クリアブルーの髪を髪留めでまとめた、大人の色香漂う女性だった。
「お疲れ様です……レクティさん。休憩ですか?」
「まだまだこれから〜。私を指名してくる冒険者さんもいるから、休んでる暇なんてないわよ」
レクティという名の受付係の女性は、シエラの先輩にあたる女性だった。
冒険者ギルドの受付係になってから半年の間、その仕事のいろはを自分に教えてくれたのは、この女性だった。
「私はもう休みたいですよ……。冒険者さんとの相手はいつも疲れて仕方ないって感じで」
ああ、もう冒険者と話すなんて嫌だ、なんてダメ人間丸出しの願望を露わにする。
特別、人付き合いが得意というわけでもない。
冒険者ギルドの受付係になれたのは、つまるところ『容姿』だ。
自分をこの受付係に推薦したレクティは、その理由について明確にそう答えてくれた。
……複雑な気持ちになったが。
「なんか、今まで以上に疲れてるみたいね……。何かあったの?」
「何かあったなんてもんじゃないって言ったじゃないですかぁ……。一昨日の事が頭から離れなくて寝不足なんです」
その言葉に、レクティはシエラが何を悩んでいるのか分かったようだった。
「一昨日って……竜を見たっていうあの話?」
「目をつぶると、あの大きな竜のことを思い出しちゃって。怖くて眠れなくて……」
そう言ったシエラに、レクティは呆れ顔だ。
「夢だったんでしょ、それ」
「夢じゃないですよっ!確かに見たのに……なぜか消えちゃって」
「いや、だからそれが夢ってやつでしょ……」
自分が言っていることを信用してくれない先輩に、シエラは涙目になりそうだった。
一昨日の夜に見た、天空を舞う巨大な竜。
自分の視界を覆い尽くすほどに大きく―――山のような絶対的な存在感を見せつけられたのだ。
竜の咆哮に震える自分の体も覚えている。あれが夢などとは到底思えなかった。
「だから!夢じゃないんですって!私はこの目で――――」
「はいはい、分かったわよ。あなたの話は後で聞いてあげるから」
「だ、だから冗談でもなんでもなくて――――!!」
必死に弁明しようと、掴みかかる勢いでレクティに距離を詰めようとしたシエラだったが、
コンコン、と受付前の机から音が響く。
体を硬直させて目の前を見てみれば、どうやら次の冒険者が受付前に来て、こぶしを叩いた音だったようだ。
レクティはこほん、と咳払いをして、シエラに手を振る。
小声で、また後で、と言ってそのまま資料室に続く扉を開けて姿を消してしまった。
(さ、さっきのこと聞かれたかな……?)
自分を虚言癖のあるバカな人間だと思われたくはない。
シエラもまた咳払いを一つして、受付前に立っている冒険者に挨拶をする。
「す、すみません、お待たせしました。依頼についてのご相談でしょうか?」
出来る限りの笑顔を振りまきながら。
目の前の冒険者ににこやかに応対するが、おや、と心の中で首を捻った。
二人組の冒険者だった。
自分と同じくらいの年齢だろう少年と少女の二人組。
東洋人独特の黒髪に、ラベンダーよりも深い紫色の瞳を持つ少年が、じっとこちらを見つめていた。その表情はどこか不機嫌そうだ。
そしてもう一人は、恐ろしいほどに美しい、銀髪の少女。信じられないほどに顔立ちの整った―――自分の容姿など霞んで見えるような美少女だ。
しかも、その装いはまるで白と黒の対比を見ているかのように異なっている。
黒髪の少年の服装は、旅人たちが良く着ているような質素な服装だったが、銀髪の少女は、純白のローブの下に魔法効果を持つであろう見事な刺繍のされた服を着ているのが分かる。
(あれ……もしかして)
気づいたときには、黒髪の少年からその答えを言われていた。
「俺たちは冒険者じゃないんだ。ちょっと会いたい人がいてここに来たんだが……」
少年の表情はあまり動くことはない。さきほどまで不機嫌そうな表情をしていたが、どうやら自分を不愉快に思っている、というわけでもなさそうだった。
「も、申し訳ありません!えーと……ギルド所属の方との面会ですね。アポイントは―――」
「いや、取ってない。ローガン・ランドウォートに会うことはできるか?」
え、と小さく声を漏らしそうになって堪える。
ローガン、と聞けば、それが誰であるかすぐに理解できる。
この冒険者ギルドの長、その男が、この少年が会いたいと言っている人物である。
だが……
「大変申し訳ありませんが、アポイントを取っていないとなりますと、他の面会者がいらっしゃいますのでかなり時間が―――」
「一週間以上かかりそうか?」
「あ、は、はい。確認を致しますが、もしかしたら、一週間以上はかかってしまうかと……」
自分の返答が分かっていたという感じだった。
どうやら、あらかじめ覚悟はしていたようだ。
自らの言葉に、少年は頭に手を置いた。と、後ろにいた少女と話をし始める。
「どうしましょう……一週間以上となると……」
「まあ、宿代については気にしなくてもいいんだけどな……《血の―――」
ごにょごにょと小さくなる言葉に聞き耳を立てて、この後どうするつもりなのかを確認する。
なにやら、うーんと悩みこんでいる。その行動に、シエラはため息をつきそうになる。
(……冒険者でないなら仕方ないですかね)
彼らの後ろに他の冒険者は見当たらない。受付前で悩みこんでしまうのは、この場合は仕様がない、とシエラは心の中で苦笑する。
すると、早々に相談を終えて、黒髪の少年が話しかけてくる。
「どれくらいかかるか、今から確認できるのか?」
その言葉に、シエラはあっ、と声を出しそうになった。
「も、申し訳ありませんが、ローガンは他のギルド長のところへ行っておりまして……明日以降なら確認できるとは思いますが……」
「……そうか」
ふむ、と考えるそぶりをした少年は、懐から何かを取り出した。
「それなら、また明日ここに来てどれくらいかかるか確認させてもらうよ。悪いんだが、その人にこれを渡しておいてくれ」
と、差し出してきたのは、柄のない白い便箋だった。その便箋に『ローガン・ランドウォート』という名前が記載されているのが分かり、シエラはその便箋を受け取る。
「畏まりました。それでは、お二人のお名前をお伺いしても宜しいですか?」
「ああ。俺はアルト、アルト・ゼノヴェルト。もう一人はミリア・レルクレインだ」
「はい、アルトさんとミリアさんですね……」
受付下に置かれていた紙を取り出して、その名前を記していく。
それにしても、ギルド長に一体何の用なのか、とシエラは首をひねる。
ギルド長に用件のある者たちは、商人ギルドに所属する商人たちか、もしくは冒険者ギルドを頼ってきた貴族などが主だ。
二人の装いから見るに、おそらく旅人といったところだろう。そんな二人が、ギルド長に直々に面会を申し立てるというのは、かなり不自然だった。
(……もしかして、貴族の方とか?)
傍らにいる少女の姿を見てみると、高級そうな装備をしている。お忍びでこのクロスリードに来ている、という可能性もありうるし、この少年は、隣にいる少女の付き添い兼護衛のようなものかもしれない。
また明日の昼頃に来るよう少年たちに言ったあと、シエラは受け取った便箋と旅人二人の名前を記した紙を見直す。
自分たちのやるべきことを終えて、二人組の旅人はそのままギルドを出ていった。
アルト・ゼノヴェルト。ミリア・レルクレイン。
そこで、はて、と何か忘れているような感覚に陥った。
「あれ……?ゼノヴェルトってどこかで聞いたような」
記憶の底に隠された情報を引っ張り出そうと試みるが、薄い靄のようなものがかかって思い出せない。
ゼノヴェルト……ゼノヴェルト……と呟いても、その答えが出てくることはなかった。
とりあえずローガンさんに渡しておけばいいか、と便箋と紙を受付下の空間にしまって、次に来るだろう冒険者に備える。
なおも続く記憶の霞みと寝不足の追撃にダウンしそうになる午後を過ごしながら、結局ゼノヴェルトの名前について、思い出すことはできなかった。
次回更新については、可能であれば明日行う予定です。