6。 不審者はクラスメイト、そしてストーカー
土曜日の朝
まりあは近所の公園を散歩している。
まりあ『♪いちにっサンバっ に〜にっサンバっ♪おこめっ おこめっ おこめ券ほしいなぁ〜〜。ッフ〜っ!!』
パチパチパチパチ。
老人たちが拍手をしている。
まりあ『あ、どうも。恐縮です。…………あれ…。』
まりあは少し遠くに制服を着たカエデの姿を見つけた。
まりあ『…………休日出勤……?…あ……そういえば昨日…ほんとに何してたんだろ。』
まりあは昨日、校門で何やらこそこそしていたまさに不審者そのもののカエデを思い出していた。
まりあ『…休日出勤…不審者……。これは何かあるかも…。これ以上カエデちゃんに罪を重ねさせる訳には行かないわ…。名探偵まりあの、お出ましね。(全てまりあの思い込み。)』
家に戻り制服に着替えたまりあはシイナの家のインターホンを連打している。
シイナ『あれ?まりあ?どうしたのさ?ちょっと待って。』
ガチャ。
シイナ『まりあどうしたの。』
まりあ『私はまりあではない。名探偵まりあ。そして君は助手のシナソンだ。』
シイナ『(シナソン…?ああワトソンとかけてるのか。)名探偵まりあ、どうかなさいましたか?』
まりあ『それがだね。シナソンくん。同じクラスのカエデ…、カエデ…』
シイナ『カエデアイ。』
まりあ『パラグアイ?』
シイナ『カエデアイ。』
まりあ『パラグアイ…。』
シイナ『……………。』
まりあ『…………カエデアイの様子がおかしいのだが。』
シイナ『(新キャラ、カエデなのか。)カエデがどうかなさいましたか?名探偵まりあ。』
まりあ『それがだね。シナソンくん。カエデアイが昨日、校門で何やらこそこそしていたり、今朝なんか土曜日なのに制服を着てどうやら学校に行ったようなんだよ。きっと彼女は何か重大な事』
シイナ『大丈夫だよ。まりな。』
まりあ『まりなって誰だゴラァ!!しかもまだ話し終わってねえだろうが!!』
シイナ『大丈夫だよ。まりあ。いつもの事だから。』
まりあ『えっ?いつものこと?』
シイナ『そんなに気になるなら学校に行ってみればいいよ。きっと分かるから。』
まりあ『えっ!シイナは一緒に来てくれないのー?』
シイナ『ごめん。オレこれから“あたしンち”見なきゃいけないから。』
まりあ『録画でいいでしょうが!!たしかにおもしろいけど!テレビ朝日だと11時20分からだからみんな見てね!!』
シイナ『えー。ほんとにオレも行かなきゃだめ?カエデがメインの話でしょ?オレ必要なくない?』
まりあ『メインは私よ!出会って2日目でよくしゃあしゃあとそんな本音言えるわね!』
シイナ『ねー。話の流れだと、とても2日目って感じしないよね。』
まりあ『いいから早く着替えて。何なら私が着替えるの手伝ってあ・げ・よ・う・か?』
シイナ『お願いします。(即答)』
シイナは無理矢理まりあを家に引き入れようとする。
まりあ『ぎゃあーーっっ!!生娘に何するのよっっ!!』
シイナ『(生娘って……。)冗談だから。すぐ着替えるからリビングで待ってて。』
リビングに通されるまりあ。そこには昨日いなかったシイナの中2の弟がいた。
まりあ『初めまして。シイナくんの弟さんだよね?』
「あっはい。」
まりあ『へー。とても中2病の32には見えないなあ。』
「えっ?」
まりあ『かっこいいね。もてるでしょ?』
「いや、そんな…。」
まりあ『社交辞令よ。』
「………………。」
まりあ『ちなみに“社交辞令”とは“相手を喜ばせるために言う、儀礼的な、口先だけのお世辞”の事。』
「ひぃぃぃっ。言葉の暴力。」
シイナ『おい!まりあ。本当にうちの弟たち人間不信になったらどうするんだよ。』
まりあ『何よ…。シイナの弟は私にとってもかわいい弟よ…。そんな言い方しなくたっていいじゃない…。』
シイナ『それじゃあ行こうか。』
まりあ『はーい!』
シイナ『到〜着!』
まりあ『え〜今回やってきたのは北海道の札幌市にある』
シイナ『旅番組じゃないです。学校です。学校に到着したんです。』
まりあ『そんな事よりカエデを探さないと。』
シイナ『教室に行ってみようか。』
−教室−
カエデ『好〜きなんだっ♪好〜きなんだっ♪さ〜かだちしたいほど〜♪ヒデキっ!!』
2人は教室で歌って踊っているカエデを眺め(軽く引き気味)ながらドアを開けるタイミングを伺っている。
まりあ『今の若い子には分からないような事を…。というか見てはいけないものを見てしまったような……。』
シイナ『……ヒデキじゃないし…。』
まりあ『…でも…あれって恋の歌だよね…。やっぱり誰か好きな人いるのかな…。』
シイナ『そ。1年の時からだから片思いは2年目突入だね。』
まりあ『何でシイナがそんな事知ってるの?』
シイナ『みんな知ってる話よ。』
まりあ『相手っていうのは?まさかシイナじゃ。』
シイナ『なわけないだろ。先輩だよ。文芸部の先輩。』
まりあ『……その先輩は…カエデちゃんの事、知らないのかな…?』
シイナ『…オレもそこまでは…。でも1年以上だからな…あいつ自身、もう自分の気持ち伝えるつもりはないんじゃ…。』
まりあ『………………。』
まりあ“私?私は今までシイナの家で遊んでたんだけど、忘れ物したの思い出して戻ってきたの。”
カエデ“そう…。シイナくんと…。”
まりあ『………きっと羨ましかったんだろうなあ……。』
シイナ『え?何が?』
まりあ『ううん。じゃあ不審な行動っていうのは?』
シイナ『カエデいつもその先輩の事隠れて見てるから。』
まりあ『休日出勤は?』
シイナ『(休日出勤…?)土日も文芸部活動してるんじゃないか?』
まりあ『……文芸部に入ればいいのに。』
シイナ『まりあみたいにみんな積極的じゃないの。まあカエデは奥手すぎるけど。』
まりあ『でもただ見てるだけなんて寂しすぎるよ…。こんなとこで歌って踊ってるだけなんてイタすぎるよ…。……確かめよ!』
シイナ『えっ?まりあ。』
ガラッ。
カエデ『♪い〜とし〜さとぉ〜せ〜つな〜さとぉ〜こっ…』
まりあ『…………。』
シイナ『(まーた微妙に古い歌)…………。』
カエデ『いやああああああ!!!アモーレェェェェ!!!』
まりあ『……シイナ…2人で話をさせて…。』
シイナ『えっ。』
まりあ『大丈夫。私がちゃんと説得するから。爆弾のスイッチは押させない。』
シイナ『…分かったよ。(だからオレ来ることなかったのに。)』
まりあ『ここ、座ってもいいかな?』
カエデは黙って一度だけ頷いた。
まりあ『…私もね今朝、公園散歩しながら歌ってたらおじいちゃんおばあちゃんに拍手されたんだ。えへ。』
カエデ『…そんな話、しに来たんじゃないでしょ?どうしたの?まりあちゃん。』
まりあ『…………。実は…僭越ながら…話はシイナから聞きました……。』
カエデ『話って。私の片思いの話?』
まりあ『うん…………。見てるだけって案外、楽しいんだよね。』
まりあ『毎日がきらきらしてくる。嬉しくて、楽しくて、悲しくて、そばにいたくて、、、恋しくて…そんな感じでしょ?』
カエデ(まりあちゃん…………。)
まりあ『私は、ゆっくりでいいと思うよ。
ゆっくりっていうか自分のペースで。でもいつかは見ているだけじゃ足らなくなる。色んな事を話したいし、手を繋いで街を歩きたい、ロマンチックなデートをしたり、些細な事でケンカをしたり。そんな日が必ず来る。だからこれだけは覚えておいて。何事にもタイミングはあるんだからね。誰かに取られる前に!
私は応援するよ。』
カエデ『…ありがとう…。』
まりあ『ねえねえ、どんな人なの?相手は。』
カエデ『写真見たい?』
まりあ『見たい見たい。』
軽率にとってしまったこの行動をすぐに私は後悔する。(確定)
カエデ『じゃーん!』
まりあ『………。』
カエデは自分のバッグから一冊一冊が何かでかいアルバムを合計6冊取り出した。ページをめくると明らかに盗撮としか思えない彼女の想い人のスナップ写真などが貼ってある。中には彼が家でくつろいでるような写真もあった。(ちなみにカエデとツーショットで写っている写真は一枚もない。)彼女のいう“芸術鑑賞”とはこのことをさしている。
カエデが次に取り出したものはノート。中には彼のデータがぎっしりと書き綴ってある。誕生日、スリーサイズはもとより彼の赤裸々な情報なども当然のごとく記されていた。最近出版された女優の暴露本よりも数十倍恐ろしい内容だ。彼女のいう“読書”とはこのことをさしている。
まりあ(やべーよ、こいつ。)
カエデが次に取り出したものはボイスレコーダー。
彼のクラス(というか彼の机)、部室、家(リビング、彼の部屋、お風呂、トイレ)にバレないようにしかけ(そういう技術はなぜかプロ並み)後日、こっそり回収し聴いている。彼女のいう“音楽鑑賞”とはこのことをさしている。しかし最近ではリアルタイムに楽しみたいということで盗聴器の使用を考えている。
カエデが次に取り出したものはデジタルカメラ。
アルバムに保存されている写真は全てこのカメラで撮られている。常に持ち歩いているものとしてはカメラ本体(いつバッテリーがなくなってもいいよう乾電池式のもの)乾電池数十本、1GBのメモリーカード十数枚(未使用)1GBのメモリーカード数十枚(画像記録済)彼女のいう“趣味のカメラ”とはこのことをさしている。
カエデが次に取り出したものは…
まりあ『もうええっちゅうに!!』
カエデがここまで想いをよせる文芸部の部長とはいったいどのような人物なのか。まりあは彼の無事を願う。




