5。 不審者はクラスメイト、そして隣人
きーんこーんほーんこーん
まりあ『何ここのチャイム…。』
シイナ『初日お疲れ。まりあ。』
まりあ『あっ、ありがとう。シイナ。』
シイナ『そういえば、まりあはどこに住んでるの?』
まりあ『私は歩いてすぐのマンションだよ。』
シイナ『へーそんなに近いんだ。なんてマンション?』
まりあ『ブリティッシュヒルズアビニティっていう所。』
女子『えっっっ!?』
クラス中が一斉にバカみたいに大声をあげた女子に注目する。
女子『えっ?あっ…ごめん。何でもない。』
そう言うと彼女は教室から飛び出して行った。
まりあ『………?』
シイナ『まりあ、オレん家も歩いてすぐなんだ。一緒に帰ろうよ。』
まりあ『…………。』
シイナ『……まりあ…?』
まりあ『………えっ?』
シイナ『どうしたの?一緒に帰ろう。』
まりあ『………うん!』
まりあが微笑む。シイナはまりあの笑顔が苦手だ。理由は本人にもまだ分からないようだ。
まりあ『では、行きましょうか。シイナさん。』
シイナ『そうですね。まりあさん。』
まりあ『手でもつなぎましょうか?シイナさん。』
シイナ『だめですよ。まりあさん。』
「何あれ。」
「うわーっ。シラケる。」
「何か時間たたないうちに普通のラブコメになりそう。」
「厄介。」
シイナ『ま…まりあさんの家って、こ…ここですか…?』
シイナがまりあに自分の家だと紹介されたマンションは一生自分には縁がないだろうと思っていた、近所に最近できた高級マンションだった。
シイナ『い…いったいまりあさんのお父様はどんなご職業で……?』
まりあ『パパ?パパは魔法の国で大魔法使いしてるよ。』
シイナ『じゃあ一緒に暮らしてないの?』
まりあ『そうなんだ。ゼアにパパとママも一緒に連れてきたいなって話をしてるんだけど願いを叶えてくれるのは一回だけなんだって。2回目からは有料みたい。』
シイナ『へー大変だね。』
まりあ『それで仕方ないからお金だけはゼアを通して送ってもらってるの。まあその手数料として1割はゼアに渡してるんだけどさ。星が何買うんだよってね。』
シイナ『ふーん。そっか。まあ魔法の国も通貨単位は円みたいだから両替する必要なくてよかったね。それにしても流れ星って色んな意味ですごいんだね。勉強になるよ。』
まりあ『…………。シイナのお家はどの辺なの?』
シイナ『ああ、すぐそこだよ。見たい?』
まりあ『見たい見たい。』
シイナ『ここだよ。』
まりあ『わー。ほんと近ーい……って隣りじゃねえか!!』
シイナはまりあのマンションから数秒歩いた隣りにある都内にしては大きめな一戸建ての前で足を止めた。
シイナ『うん。そう。だからオレもびっくりした。』
まりあ『へー。立派なお家だね。でもマンションの方が後に建ったんでしょ?日照権とかは問題にならなかったの?』
シイナ『魔法の国でも日照権なんて言葉使う時あるんだ。まあそれは大丈夫だったよ。うち南向きだし。それより良かったら上がってく?弟とかもいるよ。』
まりあ『へー。弟さんいるんだ。でもご迷惑じゃないかな?』
シイナ『大丈夫、大丈夫。それに女の子連れてくるなんて初めてだから逆に大歓迎されるよ。』
まりあ『やだ、もう。蛯原友里に間違われたらどうしよう。』
シイナ『うち、犬も飼ってるんだ。好き?』
まりあ『…いや、好きだけど。(シカトかよ。)』
玄関を開けて中に入るシイナとまりあ。
シイナ『ただいまー。』
まりあ『いやーすばらしいお宅ですねえ。』
シイナ『渡辺篤史はもうええっちゅうの!!』
「あ、お帰りなさい。シイナ。早かったわね。」
まりあ『お母さんまで、名字で呼んでんの…?』
シイナ『友達連れてきたよ。まりあエリザベスさん。』
まりあ『(…友達?)初めまして、お義母さま。』
「あらあら。初めまして。汚い所ですが上がっていって。」
まりあ『おじゃましまうま。』
まりあはリビングにいる変な生き物に目がいった。
まりあ『へー。犬とは聞いていたけど豚も飼ってるんだね。』
シイナ『弟。』
まりあ『へー。あのお義母さん、豚も産めるんだ。ってことはシイナは豚のお兄さん?犬のお巡りさんは聞いた事あるけど豚のお兄さんって。ちょ。』
どこからともなく犬がシイナの元へ駆け寄ってきた。
シイナ『おぉ。ラック。迎えにきてくれたのか?』
まりあ『で、こっちがお巡りさんか。』
シイナの弟がまりあに近寄ってくる。
「お姉ちゃん遊ぼう。」
まりあ『ひぃぃぃ。豚がしゃべった!!』
まりあとシイナは(豚みたいな)弟と一緒にリビングでゲームをして遊ぶ事になった。
まりあ『豚くんは今、何歳なの?』
豚『10歳。』
まりあ『ひぃぃぃ。豚がしゃ』
シイナ『もうええっちゅうの。』
まりあ『でも7歳も年離れてるんだね。』
シイナ『間に中2の弟がいるよ。』
まりあ『へー。中2病の32歳の弟が。』
シイナ『中2病の32歳って……。どんだけやばいんだよ…。』
−数時間後−
「えーん。ママぁ。」
「あらあらどうしたの?シイナの弟。」
まりあ『……。』
「お姉ちゃんが…お姉ちゃんがゲームで子供相手に手加減もしないで本気だして連勝したあげくに何か知らないけどボクに『飛べない豚はただの肉まんだ!』とか言ってコントローラーにハチミツぬって投げつけてきたのーー!!ボクは赤い服着た黄色い熊じゃないのにぃぃぃ!!」
まりあ『ど、どうしよう。動物愛護団体に一目置かれている私が豚に対してこんな卑劣な行為をしたという事がバレたら……。こ、こうなったら口封じに丸焼きにして……。うひひ。』
「まあまあ良かったわねえ。」
まりあ『へっ?』
「シイナの弟はドMだからあまりにも嬉しくて泣いちゃったのよねえ。まりあちゃん。ありがとう。また良かったら遊んであげてね。」
まりあ『……………。ええ。私でよければ。私にとってもかわいい弟ですし。』
シイナ『何のこっちゃ。』
まりあ『あーーーーーーっっ!!』
シイナ『ど、どうしたの?バカみたいに大声だして。』
まりあ『教室に忘れ物しちゃった!明日土曜日だし、私戻らなきゃ。』
シイナ『えっ、大事な物?』
まりあ『うん、ちょっとね。』
シイナ『そっか。じゃあオレも着いてくよ。』
まりあ『ううん。大丈夫。何か新キャラに出会いそうな予感だし。』
シイナ『ふーん。オレ出番減っちゃうのかな。』
まりあ『大丈夫だよ。だってシイナは私の運命の恋人なんだからっ。それじゃあお邪魔しましたー。』
まりあは元気よく飛び出していく。『前途多難だな。』シイナはぼそりとそう呟くや否や、まりあの出て行ったドアを笑みを浮かべながらしばらく眺めていた。
まりあ『ふうー。このノートなかったら困るもんね。……あれ?』
校舎を後にすると何やら門のところでこそこそ何かをしているあやしい女子生徒がいる。
まりあ『…あっ…。』
女子“えっっっ!?”
女子“えっ?あっ…ごめん。何でもない。”
まりあ(放課後にバカみたいに大声出して教室飛び出してった同じクラスの子だ。こんな時間まで何してたんだろ…。)
女子『……………。』
まりあ『何か探し物でもしてるの?』
女子『えっ!あっ!まりあちゃん。どうしたの?』
まりあ『私?私は今までシイナの家で遊んでたんだけど、忘れ物したの思い出して戻ってきたの。』
女子『そう…。シイナくんと…。』
まりあ『…………?名前は?』
女子『カエデ。よろしくね。』
まりあ『え、名字?名前?』
カエデ『名字。』
まりあ『ややこしい名前だね。』
カエデ『名字ないあんたに言われたかないわ!!』
まりあ『くすっ。』
カエデ『ちょっ。何がおかしいのよ。』
まりあ『何でもないよ。』
走ってにげるまりあ。
カエデ『ちょっ。待ちなさいよー。』
2人は一緒に帰りまりあのマンションの前で足を止める。
まりあ『じゃあ私ここだから。今度カエデちゃんの家にも遊び連れてってね。』
カエデ『そ…その事なんだけど…実は……私も……。』
−シイナ家ー
シイナ『あれっ。そういえばカエデも最近隣のマンションに越してきたって言ってたな。』
まりあ『えっ。カエデちゃん家もここなの?あっ!だからあの時バカみたいに驚いてたんだ。』
カエデ『(バカ!?)あ、うん。でも、ウチは12階だから…。まりあちゃん家は何階なの?』
まりあ『えっ!本当に?私も12階だよっ!』
カエデ『……………。』
エレベーターで12階まで上り2人は自分たちのすんでいる部屋の前で足を止める。
カエデ『…隣……。』
まりあ『わー!よかったぁ。明日から一緒に学校に行けるね。』
カエデ『…明日は土曜日です…。』
まりあ『じゃあいつでも菓子折り持って遊びに来てね。バッハハーイ!!』
まりあは中に入るとすぐにドアを閉め施錠をした。
カエデ『………さいですか…。
………何か、これから疲れそう………。』
楓藍。通称、カエデ。
彼女は(自称)魔法少女まりあの2人目の被害者だ。しかし彼女は後に本当の意味での被害者になる。




