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4。 彼女はこの学園のヒロインになる。

ガラッ。



シイナ『ただいまー。』



「おぅ。おかえり。シイナ……ってまりあちゃんは?」



 シイナは振り返る。



シイナ『えっ?あれっ?ドア開ける直前までいたのに………。魔法少女じゃなくて忍者だったのか……。』



「………………。」



 まりあの姿は(教室からだいぶ離れた)会議室の前にあった。まりあはドアを少し開きストローを差込み耳を当てる。




「園長、今回2年C組に編入してきた、ま、まりあエリザベスの件ですが。」


「ああ。彼女の事か。」


「彼女は、こ、これは本名なんですか?」


「……分からん…。まあたぶん違うだろうが…。」



「ひぃぃ。……名字がない……。」



「偽名で学校に通わせるというのはどうなんでしょうか?」


「まだ偽名だって決まった訳でもないでしょうが。それに彼女は過去の記憶が一切ないんだ。まあ偽名なのか仮名なのか本名なのかは彼女の記憶が戻るまで一旦保留にしようじゃないか。」


「(楽天的だなぁ。)過去の記憶がないというのは…?」


「ない……らしい……よ。えっと、2年C組担任の春木先生はどうお考えですか?」


「…えっ、私ですか?…そうですね…。今は仕事が楽しい時期ですのでお見合いはちょっと……。」




 他の教師がつぶやく。


「何の話してんだよ。園長、何で転入生あんな訳わかんない教師のクラスにしたんだろ。」


「目には目をって事じゃない?」


「えっ?」






「そうですね。春木先生。私もそんな事は聞いていませんよ。」


「えっ?あっもしかして水曜22時のあのドラマの話ですか?おもしろいんですがあんなのはいませんよね。」



「…………。相手先の学校は何とおっしゃってたんですか?」


「そ…それも…。」


「えっ……こっちは受け入れ先なんですよ?普通相手の学校とも連絡取るじゃないですか?」


「それが…彼女の以前通っていた高校、住んでいた住所、氏名、年齢、番組の感想を書いてどんどん送ってね。」


「何言っとんじゃ、ゴラァ!!!」


「す、すまん。要するに、彼女の過去について調べても何も出てこなかったんだ…。」


「まりあエリザベスで調べてるなら当たり前じゃないですか!!」


「先生。落ち着いて下さい。…ご両親は?ご両親にはお会いしたんですよね?」


「あ、ああ。転校の手続きにはちゃんとご両親そろって来られた。」


「何と話されてたんですか?」


「そ、それが…。」




−転校手続き−


“ええー。今回、お忙しいところ…転校の手続きにいらしていただいたんですが……。”



 園長の前に座っているのが3人。真ん中に若い女の子。彼女がまりあエリザベスだろう。両端に…両端に……両親……?しかし園長にはどう見ても両端に座っているのがぶかぶかのスーツを着ている幼女と幼児にしか見えなかった。



“えっと…失礼ですが…その…お二人は…?”


 園長がまりあに訪ねる。


まりあ“はい?ご覧の通り、父と母ですが。”


(自称)父“むちゅめをよろちくお願いちまちゅ。”


(自称)父と(自称)母がぺこりと頭を下げる。



“………………。あっ……大変失礼いたしました…。いえどうも最近疲れているようで……。”



まりあ“それは困りますね。”



(自称)父は我慢できなかったのかどこからか取り出したドーナツを頬張っている。



(自称)母は“嫌だわー。お父たん。こんなちぇきで。”と言いながら(自称)父のチョコレートでべたべたな口の周りをティッシュでふいている。



“……………。あの…私の目の錯覚でしたら…大変申し訳ないのですが…私には…お二人が…まだ、さしすせそも言えない子供にしか見えないのですが……。”



まりあ“ふふふ。園長先生はご冗談がお上手で。”



(自称)母“むちゅめをよろちゅくおにぇ※жζ§£(噛んだ)”



(自称)父はピクニック(コーヒー)を飲んでいる。



“………………。”







「こういう訳で…。」


「なんじゃそりゃあー!?」


「そもそもいったい何でこんなのを受け入れたりしたんですか?園長先生のお考えをお聞かせ下さい!!」



まりあ(こんなの!?)



シイナ『あ、いたいた!まりあ何してんの?』


 まりあは慌ててストローをしまい立ち上がる。


まりあ『いやぁ、いい材質の扉ですねぇ。』


 まりあはドアをすりすりしている。


シイナ『…渡辺篤史か。』


まりあ『いやあ、ほんといいお家ですねえ。木が生きている。』


シイナ『もういいから。家でも木造でもないし。』




「そもそもいったい何でこんなのを受け入れたりしたんですか?園長先生のお考えをお聞かせ下さい!!」




「……分かった。………彼女は、何か意味があってこの学園に来たのだろう…。我が学園も今年で創立30周年だ…。そんな記念すべき年に彼女はやって来た。これも何かの縁だろう。我々が彼女を拒む理由はない。彼女がこの学園をさらに活気づけてくれる。間違いない。」




「今のままでも充分だと思いますがね。」




「私もそう思ってきた…。でも、何かが足りないと思わないか…?大変嬉しい事だがうちの生徒は真面目な子たちばかりで今まで何の問題も起きた事がない…!でもそれは、つまり“毎日同じ事の繰り返し”という事だ。もちろんここは学園なのだからそれは当たり前だ。結構な事だ。でもこのままじゃ、このままじゃこの学園はどんどん埋もれていってしまう。不謹慎な事かもしれないが、


あっと驚くハプニングがあったっていいだろう…。


笑って済ます事のできる問題なら起きたっていいだろう…?


他の生徒のプラスにもなると思う…。この学園の足りない所を、彼女になら埋められる。みんなそう思わないか…?


彼女はこの学園のヒロインになる…!


絶対にだ……!!」




「…園長先生…。」


「……確かに…この学園はいい意味でも悪い意味でも普通ですね…。」


「そうですね……。私も薄々感じていました…。確かにこのままじゃただのつまらない学園ですね。」


「…この学園の再起を担う転校生…か…。」


「………みなさん…ありがとう……。2年C組担任の春木先生は、いかがですか?」



 園長をはじめ、その他教師全員が春木に注目をする。




「はい…。私も同じ考えです。」




 会議も終了し、春木は足取り軽く自分の受け持つ生徒、2年C組の教室へと向かう。



ガラッ。



 春木は目標の生徒の前で足を止めた。生徒がゆっくりと顔をあげる。



まりあ『どうか…されました…?』



「まりあエリザベスさん。今日からあなたも私の大っっっ事な生徒の一人です。」



まりあ『は、はあ。』




「私も新人で頼りないかもしれないけど、改めてよろしくお願いします!!」




 春木はまりあの手を取り握手をする。




 春木。まりあの転入してきたクラス2年C組の担任。25歳。クラスを受け持つのは初めてだが、園長がまりあをまかせるなら彼女しかいないという事でまりあはC組になった。時々会話が噛み合わない。

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