3。 まりあが笑うとシイナは戸惑う。
キーンコーンカーンポーン。
シイナ『あっ急がないと授業始まる。ほら2人とも席替えするなら早く。』
まりあ『はっ、はいぃー。』
まりあはなぜかおろおろしている。
シイナ『何やってんだよ。ったく、もうー。』
シイナは文句を言いながらも机をまりあから奪い、運び始めた。
まりあ『あっ、ありがとう…。』
「シイナ君も何だかんだ言っちゃって。」
「ね。」
その時、教室の扉が開いた。
ガラっ。
「げっっ。」
「ほらほら!何してるの!早く席について…って…あんた何してるの?」
女性教師は机を持って何やら移動をしている明らかに怪しいシイナに問いかけた。
シイナ『えっ?これは…その…』
シイナはまりあに目を向ける。当のまりあは教師が入ってきたと同時に近くの空いてる席に座っていた。(もちろんシイナと目を合わせようとはしない。)
「もー。まあいいわ。これから職員会議らしくて、とりあえず一旦この時間は自習にします。あっ、そういえば…今日このクラスに転入生入ったって聞いたけど…。」
まりあ『あっ、はい。たぶん私ですが…。』
(たぶんて何だよ。)
「丁度いいわ。まだこの学園の中、案内とかってしてもらってないわよね?」
まりあ『あっ、はい。たぶん。』
(“たぶん”好きだなこいつ…。)
「じゃあ誰か案内してあげて。えっと、そうね……。」
「シイナ君が行くそうです。」
シイナ『えっ、えっ?何でオレなんだよ?』
「うん。そうね。授業も始まる時間なのにそんなことしてるバツよ。シイナくん、お願いするわね。」
シイナ『えっ、えーっ。』
まりあがぼそりと『ごめんなさい』と呟いた。
シイナ『(ったく…。)…分かりました。』
職員会議と言っていたからほとんどのクラスが自習なのだろうが、廊下に出てみると思いの外、静まりかえっていた。校内には二人の足音だけが響く。
まりあ『さっきはごめんなさい…。』
シイナ『別にいいよ。気にしな』
まりあ『お腹すきましたねー。』
シイナ『(こいつは…。)……で、まりあさん。』
まりあ『まりあでいいです。』
シイナ『……。まりあ…。』
まりあ『なーに?シイナ。』
まりあが笑うとシイナは戸惑う。
シイナ『…………。まりあはどうしてあんなにあの席がよかったの?』
まりあ『………………。』
まりあは俯き黙ってしまった。
シイナ『…………?まりあ……?』
まりあ『……ゼアが……。』
シイナ『え…ゼア…?』
まりあ『…ゼアが…悲しむから……。』
シイナ『…。どういう意味?』
まりあ『ほら…ここにいるでしょ?』
まりあは自分の肩の上を指差す。シイナがまりあの指差す場所を見てみるとまりあのブレザーに糸くずがついていた。
シイナ『…あ、ほんとだ…。』
まりあ『えっ!?』
シイナ『…へっ?』
まりあ『あ、ううん。で、ゼアっていうのは私の友達なんやけど…。』
シイナ『…何で関西弁。』
まりあ『ゼアはね、お星様なの。』
シイナ『へー。星って実際はこんな形してるんだね。勉強になるなあ。』
まりあ『魔法の国にいた時、あっ、魔法の国っていうのは私が前住んでいた所で、入場料は大人税込み3800円。』
シイナ『入場料取るんだ。魔法の国も通貨単位は円なんだね。』
まりあ『………。通貨単位なんてあるようでないようなものよね。』
シイナ『あるよ。』
まりあ『(シカト)魔法の国にいた時の話よ。ある夜、街を歩いてたの。その時に空からひゅるるるるぅって音が聞こえて“何かしら”って見上げてみたら、私のもとに向かって流れ星が落ちて来るの。私は持っていた野茂のサイン入りグローブでしっかりキャッチしたわ。話を聞いてみると私の願いを叶えに来てくれたみたい。』
シイナ『……………。』
まりあ『私にはたった一つの夢があった。それは、人間界で幸せに暮らすこと。そして私はこう言うの。“ねぇ、流れ星さん。私を人間界へ連れてって”そして流れ星はこう言ったわ“(おっさんみたいな声で)ふはははは。いいだろう。お前の望みを叶えてやろう。アリエル。”』
シイナ『流れ星、オレが持ってたイメージとだいぶ違うな。と言うかまずアリエルですらないしね。もっと言えばアリエルは人間界じゃなくて人間に』
まりあ『そしてまりあは流れ星と友達になってその流れ星に“ゼア”って名前をつけてあげたの。
それからゼアが目を瞑りなさいって言うんだけど、まりあが“まだ何も支度してない”って軽いクレームを言ったら“(おっさんみたいな声で)うるさい。こっちだってイヤイヤなんだ。燃やすぞ。”って言ってきたからまりあも少しカチンときて“おんどりゃあ、誰に口聞いとんねん。保険金かけて殺すぞっっ”って言ったらまたクソ流れ星が』
シイナ『……。話進めていただけますか。』
まりあ『で、何とか和解してまりあが目を瞑るとカウントダウンをするゼアの声が聞こえてきたの。“(おっさんみたいな声で)3・2・1・ダァーっ”』
シイナ『…何だかなあ…』
まりあ『…………そして、再び目を開いた時には私はこの東京という場所にいた……。』
シイナ『……ふーん……。それで?』
まりあ『…驚いた……。話で聞いていた街とは違った……。………東京にも、空がある……。
……“東京にもまだ、こんなにも青く広がる空を見られる場所がある……”。』
シイナ(……まりあ……?)
まりあとシイナは足を止め窓から空を見上げる。さっきまで曇っていた空は今ではその雲もどこかへ消え、眩しい光を放つ太陽が姿を表していた。そして何よりその空を見上げるまりあの眼が、どこか哀しみを帯びているようで シイナは気になってしょうがなかった。
まりあ『最初に見た空は赤い夕焼けだった……。すごくきれいで、、何だか、、涙がこぼれた…。』
シイナは黙ってまりあを見ている。
まりあ『だから、こんなにきれいな空なら、こんなにきれいな空を毎日見ていられるなら、ゼアも寂しくないんじゃないかと思って。』
シイナ『……そっか。』
まりあ『…でも私…過去の記憶を全て無くしているので……。覚えてないんですよね。実は。』
シイナ『えっ!?じゃあ今言った事は?』
まりあ『たぶん今ので合っていると思います。』
シイナ『………さいですか。』
まりあ『え…えへへ。』
シイナ『……つまり君は流れ星、ゼアに願いを叶えてもらって魔法の国からこの人間界に来た(という設定の)自称魔法少女まりあ。』
まりあ『そしてあなたは私の前世からの運命の恋人シイナ。』
シイナ『うーん。……何かよく分からないけど……。』
シイナがまりあの目をじっと見つめながら言葉を続けた。
シイナ『これから、仲良く楽しくやりましょうか。』
まりあ『はいっ!!』
まりあはにっこり微笑むとゆっくり歩きだした。シイナもこれからの学園生活はもっと楽しくなるだろう。そう感じていた。
シイナ『こらこら待ちなさい。』
まりあ『何ですか?手でもつなぎましょうか?』
シイナ『だめです。』
まりあ『ちぇっ。』
(自称)魔法少女まりあの第1の被害者、シイナこと、椎名明人。彼はこれからゆっくりと、でも着実に彼女の恋の魔法にかかっていくことをまだ、知らない。
シイナ『でも何で流れ星が糸くずに……。糸くず…糸くず…星屑…。あっ!そういうことか。』
まりあ『え?何か言った?』
シイナ『で、こっちが家畜室ね。』
まりあ『家畜室って何…?』




