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17。 ショータイムの始まり

 シイナは意気消沈し虚ろな目をしていた。



カエデ(もー……このままじゃシイナが……。何とかしないと……。)



 その時カエデが何かを思いつき、シイナにこう呟いた。



カエデ『今すぐ屋上に行って。』



シイナ『……え、何で?』



カエデ『いいから、早く。まりあと仲直りしたいんでしょ?』



 カエデが激励の意味を込めシイナの背中を押す。そしてシイナは渋りながらも屋上へ向かう事にした。シイナを見送るとカエデは腕時計(エルメス ケープコット Wトゥール)へと目をやる。



カエデ『あ…埃がついてる…。捨てて新しいの買お。………じゃなくて、……もうそろそろ大丈夫かな…。』




 カエデは大きく息を吸い込む。




カエデ『ちょっと待って!!!シイナ!!』




−−−−−−−−



まりあ『…………。』


 まりあは扉へと目を向ける。


マヤマ『今の声はカエデくん……?…シイナって聞こえたけど彼はシイノという名前じゃないのかい?』



 まりあの頭の中に不安がよぎった。急いで扉を開けると、そこにはカエデが今にも泣きそうな顔でへたり込んでいる。



まりあ『ちょっとどうしたの!?シイナは!?』




カエデ『もうバカ!!!あんたやりすぎよ!!!シイナ死んじゃったらどうすんのよ!!?』




まりあ『………え………。』




マヤマ『あのーシイナというのはシイノくんの事でいいのかな?』




まりあ『シイナはどこに行ったの!?』



カエデ『たぶん階段を上って行ったから、おく……。』




マヤマ『あのーシイナくんて』



カエデ(……あれ?これまずくないか…?私がまりあ達よりも先に屋上に行ってシイナと落ち合わなきゃいけないんじゃ……。)




まりあ『ねえ…!!カエデ!!シイナはどこへ行ったの!!!』




カエデ『きっと家庭科室よ!!刃物であんな事やこんな事を……。』



 まりあは家庭科室へと急ぐ。



マヤマ『あのーシイナくんというのは』




カエデ『うっせえ!!!バァ…………』


マヤマ『……………。』


カエデ『先輩もまりあを追ってください!!シイナ…いえシイノが大変なんです!!』


マヤマ『やっぱりシイノくんで正しかったんだね。

よし、僕もすぐに向かうよ。

家庭科室とするとやっぱり包丁か?でも僕はそんな最後、嫌だな。

僕の理想としては北海道のラベンダー畑の中で射殺されたいんだ。

うん。53人ぐらい人、殺めてさ、金田一少年に追いつめられたいよね。あれ?でも待てよ。僕が犯人で、僕は一体誰に射殺されたらいいんだ?まず金田一はないしなあ。剣持さんとか?53人も殺したらバレ次第即射殺かもなあ。そんな最後嫌だなあ。もっと感動的に死にたいなあ。感動的な最後を迎えるにはやっぱり犯行の動機は大事だよなあ。昔つねられたとか?いや、やっぱり愛する誰かのために復讐っていうのが一番でしょ。すると結婚を前提に付き合っていた彼女がつねられたとか?うん。それで行こう。それで。……あれ?カエデくん?』



 そこには既にカエデの姿は無かった。




カエデ『マヤマさんの妄想癖を甘く見てたわ………。とにかく急がないと…。あ…でも念のために。』



 カエデは階段を上りながらある所へ電話をかけ始めた。




−−−−−−−




−屋上−



シイナ『なんだ…?さっきまで曇ってたくせに。』



 ほんの数時間前の空は、よどんだ雲で覆われていたのに対し今は少し汗ばむぐらいの光を放つ太陽が顔を覗かせていた。




シイナ『…ほんと…何でこんな日に……。』



 その瞬間、屋上の扉が勢いよく開かれる。



カエデ『お待たせ。シイナ。』


シイナ『びっくりさせんなよ、カエデ…。』


カエデ『ごめんごめん。』


シイナ『一体どういう事だよ。』


カエデ『ショータイムの始まりって訳よ。』


シイナ『…はあ…?』




−−−−−


−−−





−家庭科室−



 まりあは鍋の蓋を開ける。



まりあ『どこにもいない…。』



 マヤマは冷蔵庫(野菜室)を開ける。


マヤマ『いないなあ…。』


まりあ『んなとこにいる訳ねーだろーが!!!』


マヤマ『君だって鍋の蓋開けてたじゃないか!』



 その時、上の階の方からカエデの叫び声が聞こえてきた。




カエデ『ちょっと!!シイナ!!何やってんのよ!!!』






まりあ『カエデ!?』



 まりあは家庭科室を飛び出していく。




マヤマ『3代目、金田一は僕だな。(亀梨は無かった事にしている。)待ってろ。美雪。』




−−−−−


−−−





 その頃校庭では体育をしているクラスがいた。(既に午後の授業が始まっている。)




「今、思ったんだけどさあ、どうしてこの2007年にうちの学園はブルマなんだろうね。」


「そうだよね。時々パンツはみでてる子いるし。」


「ねえ、あれ見て。」


「え?何よ。さっそくパンツはみでてんの?」


「違うって。あれよ、あれ。」


 彼女の指差す方向を見てみると、今にも屋上から飛び降りそうな男子生徒が目に飛び込んできた。



「でーーーーー!?!?!?」


「ね?驚くでしょ?」


「って言うか何であんたそんな冷静なのよ!?!?」


「これでも充分驚いてるわよ。」


「まったく最近の子供は感情を表に出さないから…ブツブツ…」


「そんな事どうでもいいわよ!!誰かに知らせなきゃ!」


「えー!?どうやって?校庭にSOSって書く!?」


「職員室!!!」




−−−−−


−−−





シイナ(……いったい何でオレは死ぬ気もないのに、こんな所に立っているんだ……?)



 シイナは足元に目を落とすと、下から自殺を辞めさせようと呼びかける教師や生徒が見える。みんな小さい。もしこんな所から落ちたら冗談じゃなく……。

 シイナは後ろへと目を向ける。まりあ、カエデの2人が目に入ってきた。まりあと目が合う。オレの事を心配してくれているのだろうか。2人の他にも園長を始め教師、生徒大勢が集まっている。




シイナ(本当になぜこんな事に……。)




−−−−−


−−−




−30分前−



カエデ『お待たせ。シイナ。』


シイナ『びっくりさせんなよ、カエデ…。』


カエデ『ごめんごめん。』


シイナ『一体どういう事だよ。』


カエデ『ショータイムの始まりって訳よ。』


シイナ『…はあ…?』


カエデ『いい?狂言よ。狂言。』


シイナ『………。ダブルブッキングの人の?』


カエデ『そっちじゃないわよ。芝居よ芝居。シイナが自殺をするなんて知ったらまりあだっていい加減、正気に戻るはずよ。毒を以て毒を制す。これしかないわ。』


シイナ『誰が毒だ。…え?何?オレ自殺すんの?』


カエデ『だから芝居よ芝居。ほんとに死んでどうすんのよ。』


シイナ『でも何だかそれ、すごい大事になりそうじゃないか?』


カエデ『だからショータイムって言ってんじゃない。』


シイナ『………お前バカか。』


カエデ『これしか方法はないの。いい?従ってもらうわよ。嫌とは言わせない。』


シイナ『………。』


カエデ『儚い男を演じて最優秀主演男優賞目指しなさい!』


シイナ『………。』


カエデ『さて。私はもう一仕事。』


 そう言うとカエデは1人、屋上の入り口まで戻っていく。


シイナ『………。』


 カエデは目を閉じすーっと息を吸い込む。




カエデ『ちょっと!!シイナ!!何やってんのよ!!!』




シイナ『…………。』


カエデ『ほら!シイナも準備してよ!早く!』


シイナ『………。』




−−−−−


−−−





ざわざわ。



カエデ『バカな真似はやめて!死んでどうなるって言うの!?小橋賢児に似てなくたっていいじゃない!』


シイナ(……余計なお世話だ……。)




「園長!いったいどうなさるおつもりですか!例の3人組ですよ!とうとう問題を起こしたじゃありませんか!いいえ!大問題です!こんなことマスコミに知れたら…。」


「うーむ。まりあくん。やるね。春木先生のご意見は?」


「そうですね…。長澤まさみのしゃべり方はいらっとします。」


「……………。」






カエデ『まりあも何か言ってよ!基はといえばあんたがまいた種でしょ!』




「…やっぱり…。」




 まりあは一歩踏み出しシイナに歩み寄る。




まりあ『……あんた一体何してんのよ。』



 シイナはまりあを一瞥すると屋上の縁を歩きながら話を切り出した。



シイナ『んー?一種の現実逃避ってヤツかなあ……。』



 まりあは黙ってシイナをじっと見ている。



シイナ『……心を持たないマシーンになりたい………か……。』


まりあ『…………。』



 シイナはゆっくりとその場に立ち止まり、まりあの方へと向いた。




シイナ『そんな事考えられるだけまりあは幸せなんだよ。』




まりあ『……………。』




「……これコメディじゃないの……?」






シイナ『……昔のオレは何が楽しいとか何が嬉しいとか、そんな感情はもとより、何がつまらない、何がムカつく……そんな事すらも考えて生きていなかった…。だから不平不満も無かったよ。ただ毎日同じ事の繰り返しで…。


まさしくあの頃のオレは“心を持たないマシーン”そのものだった……。』




カエデ『……シイナ……。』




シイナ『でもさ、2年に進級したある日、同じクラスに転入してきた1人の変な女がきっかけでオレのレイジーハイスクールライフが少しずつ、いや急激に音をたてて壊れていったんだよなあ……。』



まりあ『誰が変な女だ。』


カエデ『こらっ。』



シイナ『その子といると、いっつも面倒な事に巻き込まれて、何だかバカバカしくて笑えて、オレも笑顔になって、時々何だか切なくなってさ……。でもやっぱりこれが“生きてる”って言うんだろうな…。


自称魔法使いの彼女が、“心を持たないマシーン”にかけてくれた最初の魔法は“無くしていた物を見つけ出してくれる魔法”だったんだな……。』




タイミング〜Timing〜


作詞 森浩美&ブラックビスケッツ

作曲 中西圭三&小西貴雄



妙にセコセコ生きて

楽しくなくて

昨日と同じで

君と出会う前まで

キモチ張りつめ

折れそうだったよ

小さな事

いちいちムカついて

笑い方も何だか忘れてしまってた


ヒトも街も宇宙も

まわれまわる“タイミング”

ヘンにね合わせ過ぎても

たぶん辛いだけさ

たまに間のワルさも

大事なんだね“タイミング”

君と僕のシアワセ

笑いながらいこう

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