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Vendetta  作者: tama
ヒナ
9/19

ヒナ 2011 秋

私は、手を引っ張られ、下駄箱に連れて行かれる。

手を引っ張る人は、とても力強く、ズンズンと進んで行く。

やがて下駄箱につくと、そこには、メグとアキとミウが何か話をしていた。

彼女は、メグの前に立ち、

パシィィン…


「ってぇ…」


メグの頬を打った。


「何するのよ、ナオ!」


「アンタ最低だよ…メグ!!」


「…」


私は、ずぶ濡れの体を震わせながら、立っていた。


「ヒナに、こんな酷い事…」


「ミウ、アンタも?」


「違うよナオ、ミウは今メグを止めてたんだよ。」


アキが、ミウを庇い話す。


「そう、か…」


ナオは、少し嬉しそうに、ゴメンとミウに謝った。


「メグもう止めなさいよ、こんな下らない事。」


そう言うと、ナオちゃんは再び私の手をとり、


「行こう、ヒナ。」


と、学校を後にする。

学校を出て、しばらく歩いていると、


「家近くだから…」


「え?」


「そんな恰好じゃ、お家の人心配しちゃうよ?」


「あ、そ、そっか…」


「家で乾かしていこう。」


「…うん。」


変な話だけど、私は少し嬉しかった。

友達の家に行くなんて、初めてだったから。




「あら、お帰り直美。」


「うん、ただいま~友達連れてきたから。」


ナオちゃんの家にお邪魔すると、すぐに階段を上がった。

階下から、お母様の声が聞こえる。


「何か飲み物持っていこうか?」


「あ~うん、温かいのがいいな。」


「はいはい」


ナオちゃんの部屋に入る。

自分以外の女の子の部屋に入るなんて初めてだった。

綺麗に整頓された部屋、カーテンやベッドカバーは青で統一されていた。

机の上の壁に、コルクボードがあり、

タクちゃんとのツーショット写真や、ミウちゃんや友人との写真が大切に飾ってあった。


「殺風景でしょ?はは」


と、笑うナオちゃん。

そんな事無いと、首を振る。


コンコンと、ナオちゃんの部屋の扉がノックされる。


「ココア淹れてきたわよ。」


「うん、ありがと。あっそうだアイロン借りるね?」


「いいけど。何に使うのかしら?」


「いいから、いいから」


ナオちゃんは、お母様を一階に返し、


「アイロン持ってきたよ。ヒナ服脱いで。」


「う、うん…」


服は、上着から下のシャツ、スカートまでとにかくずぶ濡れだったので、

全部脱がなくてはいけなかった。

少し恥ずかしかったが、女の子同士だと思い、脱いだ。


「私の服あるけど、ヒナ胸大きいし、キツいかな?」


と、ニッコリ笑って、おっさんくさいねと言っていた。

私は、赤面してフルフルと首を振った。


「この布団でも被ってて。」


と、ベッドの掛け布団を渡してくれた。

フワッと私の体を、包んでくれて、冷えた体を、ゆっくり温めてくれた。

ナオちゃんの匂いがして、とても心地よかった。

ナオちゃんが、アイロン台を組み立て、私のスカートを乗せた。


「あ、じ、自分で…」


「いいから、いいから、ココア飲んでて。お母さんのココア美味しいよ。」


ナオちゃんは、当て布を使いながら、器用にアイロンを掛けてくれた。

私は、ココアを頂きながらその様子を見ていた。

美味しいココアが、私の心と体を温めてくれた。

私は、いつの間にか泣いていた。

悲しくて泣いていたんじゃない、ナオちゃんの優しさが、お母様のココアが美味しくて、

泣いてしまった。

その涙に気付いたのかは、分からなかったがナオちゃんは、穏やかな声で、


「いつから?」


テキパキとアイロンを掛けながら、自然に聞かれたので、


「夏休み明けから…」


と、自然に答えられた。


「そっか、ゴメンね…気付いてあげられなくて。」


私は、首を振った。

だって、気付いてくれたから…気付いてすぐ助けてくれた。

私は救われた?

まだ分からない、メグに文句を言ってくれただけ、明日には変わらずイジメられるかも…

ううん、私は救われた。

たとえ明日からまたイジメられても、ナオちゃんがいてくれる…

それだけで、私の心には勇気がわいていた。


「これからは、私が守るから、大丈夫!!」


ナオちゃんは、そう力強く言ってくれた。

その言葉が嬉しくて、私はみっともなく泣いた。

やがてナオちゃんは、両手を胸の前に広げ、おいでと言った。

私は、ナオちゃんの大きな胸に飛び込んだ。

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