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Vendetta  作者: tama
レン
7/19

ナオの亡霊 2012 冬

(ナオ)は、死んだ。

学校の屋上から飛び降り、自ら命を絶った。

(ナオ)が、死んだ瞬間に、私は生まれた。

(ナオ)の葬式で、棺の中に安らかに眠る、(ナオ)を見た瞬間、私は生まれた事を実感した。

(ナオ)が死んだのに、私が生まれたのは、

この心の奥底にある、憎しみが原因だと思う。

何で私が、私が何をした?

いや、した。なにか、した。

でも、正しい事をした、正しくても、捩じ伏せられた。

言葉に、暴力に、二重の意味での暴力に。


(ナオ)は、死んだ後の世界に、次の世界を求めていなかった。

人は死んだら、その瞬間消える、記憶も感情もなにもかも。

でも、絶望なんかしない、全てが無くなるから人生は無意味?

違う、人は消えるから、輝ける。

その輝きを、親が、恋人が、夫が、子供が、孫が、或は友人が、他人が、記憶する。

死ぬ瞬間に、誰かの記憶に残っていたら、(ナオ)は生きていた。と思える。


私はきっと、そんな存在。ネガティブな意味での、そういう存在。

誰かの記憶のナオ。

恨みに心を焼かれた、ナオの記憶。




アキは、どんな女の子だったろう…

いつも、メグの隣に居た。

大人しい、女の子。

アキに何かされた?

何も、されて無かったと思う。

何かされていたのかもしれないが、少なくとも、私が気付く範囲では何もなかった。

ただ、メグの隣で、何時も私を見ていた。

憐れむように、悲しげな表情で…


「アキ。」


タクちゃんと別れ、帰宅していたアキに、声をかけた。

アキは振り返り、私を見る。

私に声をかけられた事に、驚いているようだった。


「どうしたの?」


「貴女には、罪があるんだよね?」


「えっ?」


突然の私の質問に、一瞬戸惑っていたが、やがて…


「ある、よ。私はナオの死の原因。最低な奴だと思う。」


「ナオに恨まれること、いっぱいした。」


「されてる所、黙って見てた。…後悔、してる。」


後悔と言う言葉に、私は思わずふきだした。


「あっはははは!!」


アキは、ギョッとした表情で、私を見ていた。


「後悔って、便利な言葉だよね。」


「やった側が、やられた側に後悔…くっくっ、」


「だったら、最初からやらなきゃいいのに、クスクス…」


「後悔してるって、泣きながら謝ったら、許されるのかな?」


「それは…」


「分かんないよね、死んだんだし。」


「…」


「アキは、後悔したら許してくれるかな?」


アキが、えっと言葉を発する間も与えず、

アキとの距離を詰め、アキの足を引っ掛け、首に肘を捩じ込み、

肘をグッと押し込み、アキを押し倒した。


「ぅ、ぐぁ…」


と、苦しそうな悲鳴をあげ、尻もちをついたアキの頭を、左手で地面に押さえ付けた。

私はしゃがみ、左足の膝でアキの右手を踏み、押さえ、

右足で、アキの両足を抑え込む。


「っ…た…」


アキは、身動きが取れなくなった。

何かを喋ろうとしたが、私の左手が、しっかりと口を押さえ付けていたので、

何を言ってるのか分からなかった。

私は、アキの目を見て、ニヤリと笑う。

そして、視線を自分の鞄にゆっくり動かし、アキの視線を誘導する。

鞄の中に、右手を突っ込み漁り、やがてソレを見つけて、

再び、アキに目線を合わせる。

私は、ニッコリ笑いながら、ゆっくりとソレを取り出す。

刃渡り十五cmくらいの、包丁を。

アキの目は、みるみる恐怖に染まり、体を大きく揺すり、もがいたが、

私に、強く抑え込まれた体は、私の戒めから解かれなかった。

私は、包丁を大きく振り上げ、その切っ先を、アキのお腹めがけて、振り下ろした。

アキは、咄嗟に戒めのない左手で、私の右手を、掴んだ。


「っく…」


アキは、自分を殺さんとする、包丁を必死に押し戻そうとする。

が、私もアキを殺そうと、渾身の力を込め押し返す。


「罪が、あるんだよね?」


「罰を、受けなきゃ。」


アキは、涙を流しながら、必死に抵抗した。


「アハハハ…知ってるよ。本当は、感じてないんでしょう?罪なんて…」


「私は悪くないって、思ってる。」


「顔に書いてあるよ。」


アキは、首を振りたかったのか、頭を動かそうとするが、

私の左手で、固定されて動かなかった。


「死ね、アキ。」


私は、全体重を右手に込めた。

やがて、抵抗していたアキの左手を、押し返し、

包丁の切っ先が、アキのブレザーに皺を作り始める。


「ん~っ…ん~」


唸り声を上げ、抵抗を続けていたアキだったが、

包丁の切っ先が、ズブズブと、アキのお腹に刺さっていった。

アキは、目を見開き、手足をピンと突っ張らせていった。

私は、包丁をグリグリと刺し、勢いよく割いた。


「がっ…ぎぃ…」


と、私の指の間から、悲鳴をあげ、

腹部から、大量の血と臓物を噴き出し、

突っ張らせていた手足の力が抜けていった。


「くっくっ…フフ、アハハハ、」


私は、笑いながら、ようやくアキを戒めから解放してあげた。


「アハハハ…ごめんねぇ…」


「…ご、めん…なさぃ…」


「ナオ…ごめんなさい…」


アキは、朦朧とした意識で、空を仰ぎながら、

涙を流しながら、謝っていた。


「今更…今更謝って、なんになる!!」


「…ごめん、ね、死ぬってこんなに、怖いんだね…」


「止めろ…」


「…ごめんなさい…ナオ…」


「止め…っ」


アキは、もう死んでいた…

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