レン 2011 春
僕の名前は、新山蓮。
大体、レンとか呼ばれている。
この春、晴れて高校生になった。
学園生活にも慣れてきて、友達も出来たが、何かが足りない。
彼女だ、彼女が欲しい。
まぁ、ここだけ聞くと、僕がまるで、女の子に飢えていると思うだろう。
だが、そこは否定させてもらいたい。
僕はモテる。
何故なら、顔が良い!カッコいいのだ、僕は。
しかも、背が高くて頭も良い。
モテない筈がない。
現に、中三の時まで彼女は居た。
ただ、高校入学で、彼女が県外に離れたので、別れた。
彼女は、別れたくない遠距離でもやっていける、と言っていたが、
僕は、やっていける自信がなかったし、あまり未練も無かったので、
別れた…
が、やっぱり寂しい。
ん?結局飢えているのか、僕は…
まぁいい。
僕には、意中の女の子が居た。
金城雛。ヒナと呼ばれている女の子だ。
ヒナは、とにかく可愛かった、クラス一の美少女、と呼ばれるに相応しい女の子だ。
ただ、彼女はとても内気な女の子のようだ、
男子どころか、女子と話をしているのも見たことが無い。
急に話し掛けたりしたら、警戒されるんじゃ……
などとは、微塵も考えなかった。
こんな、イケメンの僕に声を掛けられて、嬉しくない筈がない。
そう思いながら、話し掛ける。
「やぁ、ヒナちゃん。」
ヒナは、ビクッと驚き、恐る恐る僕の方に顔を向ける。
「…あっ…は、はい。」
「あはは、そんなに驚かないでよ。」
「僕は、新山蓮、レンって呼んでよ。」
「あっ…は、はい…知ってます、クラスメイトなので…」
「あ~…だ、だよね、何言ってんだろう。」
「あ、あの新山さん…」
「ん?」
「な、なにかご用ですか?」
「ああ~そっか…ちょっと話がしたいなと思って、」
「わ、私は、お話…無いです。」
ヒナは、そう一方的に告げると、逃げるように去って行った。
「…」
なるほど…こいつは手強い、
僕は、走り去っていくヒナの背中を唖然と見ながら、そう思った。
ヒナには、言葉じゃ駄目だな…
会話にならないし、だからといって、メールってのもダメな気がする。
というか、メアド聞くのに三カ月は掛かりそうだ…
なら選択肢は、ラブレター…だな。
内心ベタだなと、苦笑いしながら、手紙を書いた。
ヒナにはこんなベタなのが、効果絶大な気がする。
と変に納得していた。
「あっ…ヒナ。」
この前の反応とまったく同じように、ビクッと驚き、こちらに振り返る。
「…は、はい…何か?…」
「あの、コレ…」
うぉぉぉ!!ドキドキする!
というか、ラブレター渡すとか、よく考えたら初めてじゃないか!
「…」
ヒナは手紙を受け取って、なんだか困ったような顔をして、
やがて何かに気付いたように、顔が紅潮していった…
「よかったら、読んで。」
「あ…は、はい。よ、読ませて貰います…」
「あ~返事もくれたら、嬉しい。」
「…」
「…で、でわ…し、失礼します…」
「あっ…うん」
ヒナは、ぺこりと頭を下げ、
走り去って行った。
「っはぁ~」
と溜め息を吐く、
何やってんだ…女子なんて黙ってても、寄ってくるのに、
ヒナは確かに可愛いが、こんな苦労してまで…
いや、でもさっきの反応は、脈アリ…だよな、
自分の顔がニヤけているのに気付き、ハッとなる。
いかん、いかん…
…まぁ、待つしか無いよな。
『ごめんなさい。』
綺麗な字で、その一言が書いてあった。
「マジか…」
「僕が…フラれた。」
初めての失恋だった。