アキ 2012 冬
ナオが亡くなって、十日が過ぎた。
きっと私には、罪がある。
メグにも、罪がある。
ミウにも、罪がある。
メグは変わってないと思う。
ナオの死は、さすがにショックだったみたいだったけど、
もう何もなかったように、マサと楽しそうに過ごしていた。
ミウは酷かった、頬は痩け、髪の毛は艶を失い、
いつも悲しそうな顔をしていた。
ミウは、ヒナへのイジメにあんなに嫌悪感を露わにしていたのに、
ナオに対するイジメには、積極的に参加したいた。
いや、むしろみんなを引っ張っていた立場だった。
何故?と聞いても、悲しそうなそれでいて怒っているような顔をして、
何も答えてはくれなかった。
「友達だったんだ…」
ナオの葬式の時、ミウが話してくれた。
ナオと同じ中学で、同じバスケ部だった。
明るくて楽しい、気持ちの良い奴だった、と。
「そんな友達を、殺した…」
ミウは唇を噛みながら、泣いていた。
罪を噛み締めるように、ごめんなさい、と呟いていた。
放課後、ナオの恋人だったタクちゃんが、話し掛けてきた。
「アキ…ナオの事イジメてたか?」
随分とストレートだな、と内心苦笑いしながらも、
これが私の、罪滅ぼしなのかなと思い、
「うん、イジメてた。」
タクちゃんは、息をのみ項垂れた。
「そっか…」
罵倒されると覚悟していたが、タクちゃんは酷く落ち込んでいるようだった。
「俺さ、知らなかったんだ…」
「イジメは知ってた、けど誰が?なんて…」
「なんで知ろうとしなかったんだろう。」
「俺さ、イジメてた奴恨む筋合い無いのかなって、」
タクちゃんも、罪を感じている…
悪いのは私達なのに、だから言う。タクちゃんの資格を伝える。
「そんな事無い、恨むべきだと思う。」
「私達は皆、罪を感じている…と思う。」
本当にそうなのかな、と自問していると、
「なぁアキ…ナオが何したってんだよ。理由があるのか?」
「理由…」
理由はあったと思う。ある。
でも、
「イジメに関わっていたのは、私、メグ、ミウ、レン、マサ…丸山」
丸山という名前に、腸が煮えくり返りそうになる…
「…あと、関わったって意味で、ヒナも」
「…」
「明日、話させて。」
「?」
タクちゃんは、驚いた表情で私を見る。
「私が全員集めて、皆であなたに、真実を話します。」
私は、罪を償いたかった…
許されないだろうけど、タクちゃんは怒るだろうけど、
軽蔑されるだろうけど、
吐き出したかった…罪を。
「ああ…分かった。」
アキは、ナオと仲良かったと思う。
ミウとナオは、中学の時からの腐れ縁だった。
そんな奴等が、何で…
それに、丸山は担任じゃないか…
ナオが何をしたんだろう…何も分からなかった、
明日だ、アキが約束してくれた、話すと。
知って何になるんだろう…
ナオが褒めてくれるのか?
もう居ないのに…
次の日。
下駄箱で上履きに履き替えていたら、
タタタ…と、エミが走って来た。
「っはぁ…たっ、タクちゃん…」
エミは教室の方から走ってきたようだった。
肩で息をしながら、俺の方に顔を向ける。
「どうした?そんなに慌てて、」
エミは顔面蒼白になりながら、
「アキちゃんが、死んだ…」