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Vendetta  作者: tama
アキ
2/19

アキ 2011 春

高校の入学式の日だった。

私は、小さな時から、他人とお話するのが苦手だった。

無口。暗い奴。

周りのクラスメイトからの私の評価は大体そんな感じ。

高校に入って、小、中と暗い青春を送ってきた私は決心した、

明るく生きよう、と

お弁当を一人で食べたり、休日を一人で過ごすのは、

本当に寂しかった。


先ずは、挨拶をしよう。

隣の席の女子に、明るく元気に。

目を瞑り、深呼吸をする。

ただ挨拶するだけなのに、緊張していた。

恥ずかしくて、言葉が胸の辺りでつっかえて、心臓が高鳴っていた。


「…お、おはよう。」


「?…おはよ。」




私の隣の女子は、岡恵、メグと呼んでいた。

明るくて、とてもかわいいポニーテールが似合う子だった。

お喋りが大好きで、私はいつも楽しく相槌を打っていた。


そして、メグと仲良しだったミウ、東山美羽とも仲良くなった。

ミウは、なんと言うか…怖い子…ヤンキーだった。

初めは、怖くてビクビクしていたが、話している内に、

荒っぽい口調の中にも優しさがある事に気付き、いつの間にか打ち解けていた。



「何だか、告白されているみたいだった。」


ミウの疑問だった。

曰く、メグがアキみたいなタイプの子とツルムなんて不思議だ、と

失礼な話だったが、実は私もそう思っていた。

メグは、人気者だった。

男子から人気があったし、女子の友達も多かった、

なんと言うか、華やかだった…そんな子が地味で暗い私と…


「可愛かったのよ。」


「か、可愛い?」


「うん!」


メグは満面の笑みで頷く。


「隣でさ、急に深呼吸初めてさ、真っ赤な顔でおはよう、て」


「なんだか、告白されてるみたいでキュンってなっちゃった。」


私は、その時と同じくらい真っ赤になりながら下を向いていた。


「初めましてって、ドキドキするよね?」


「そっかぁ?」


「いや、アンタじゃなくて。」


「あん?」


、とミウとメグがじゃれ合う。


「うん。とってもドキドキした…」


二人が私を見る。

フッとメグが笑い、


「そんな思いしながら、話し掛けてきてくれたんだよ?」


「勇気だして、自分から。」


「もう仲良くなるしか無いでしょ。」


「…だな。」


二人の満面の笑みを見ながら、目頭が熱くなるのを感じた。


「おいおい、泣くなよ。」


気付くと涙を流しながら、


「ふ…二人の友達になれて、よかったよぅ…」


急に泣き出した私を見ながら、

ミウはあわあわと慌てながら。


「あ、アイスでも食いに行くか?奢るよ?」


メグがガッツポーズをしながら、行こう、と言った。




「あの子苦手なんだよね。」


メグがクラスメイトの一人を見ながら呟いた。


金城雛、皆ヒナと呼んでいた。

容姿端麗で成績も学年トップと、ちょっと羨ましくなる女の子だが、

無口で、暗くて、オドオドしている、なんだか自分を見ているような女の子だった。


「私と似てる気がする。」


正直に、そう口にしてみると、


「ヒナが?アキと?」


「あっいや、可愛い所じゃなくて性格が、ね?」


「似てないよ…」


メグは少し、不機嫌になったような顔をして、言う。


「アキは努力してる。」


「えっ?」


私が?何の努力をしてるんだろう?


「アキは、人と話するの苦手、でしょ?違うね、だった、でしょ?」


当たっている、苦手だった。

今は普通に、メグとミウと、或はクラスメイトと、男子と喋れる。

でも、それはメグとミウのおかげだよ。と言うと、

違うよ。


「それは紛れもなく、アキの努力。」


「えっ?」


「だってアキは、話し掛けた、私に。自分から。」


「アキは踏み出したんだよ、自分から、それは紛れもない、努力。」


嬉しかった…自分を変えたかった、一人ぼっちの殻を破りたかった。

それを、努力と認めてくれた。

親友が出来たことが、堪らなく嬉しかった。



「あの子は違う。」


「いつも受け身で…イライラする。」


「ヒナとね、小学生の時からずっと同じ学校なんだ。」


「てか、クラスも一緒。変わんない子だよ。」


ヒナは、私よりずっと暗い女の子のようだった。

小学生の時から社交的だったメグは、声を掛けた。

仲良くなりたくて。

でもヒナは、無言だった、シカトされたんだ、と思い…

メグはもう話し掛けるのを止めたそうだ。




「ああいう子見ると、イジメたくなっちゃうんだよね。」


「えっ?」


ドキリ、と心臓が鳴った。

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