表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Vendetta  作者: tama
タク
15/19

タク 2012 冬 中編

下駄箱で上履きに履き替えた、俺はいつもギリギリに登校していたので、

クラスの連中は、もう殆ど登校しているみたいだった。

少し寝不足で、思いっきりあくびをしながら教室に向かった。

教室に着くと、教室の前でクラスの女子が、ヒソヒソ話をしていた。

朝っぱらから、噂話かよと思いながら、


「おはよー。」


と、挨拶をした。


「あっ…タクちゃん…今入らない方が…」


「ん?なんで?」


ガラッ

女子の忠告を無視し、教室に入った。


「おはよー。」


と、挨拶したが誰も挨拶を返してくれなかった…

なんだよ、挨拶くらいしてくれよと思いながら、教室を見渡した。

なにか様子がおかしかった、皆が俺を哀れむような目で見ていた。

そして、カズとノブとミウとヒナが、黒板で何かをしていた…

黒板には、何やら写真みたいなのが沢山貼り出されていて、それを剥がしまくっている様だ。

ああ、あれかカズとヒナのラブラブ写真撮られて、貼り出されているのかと思い、

手伝うぜ、と近付いた。


「どうした、何貼られたんだ?」


四人は、ビクッとして、数枚の写真を落とした。


「た、タク…」


俺が拾い上げて、その写真を確かめると…

教室のドアを、乱暴に開け放ち、走った。


「やべぇノブ!追うぞ!!」


「う、うん!!」


カズ達が追い掛けてくるのが分かったが、俺はそんなのお構いなしに、

全速力で走った!!

やがて、職員室に着いた。

ドアを開け放ち、教師の顔を見渡す。


「なんだ、お前…」


近くに居た教師が、俺を追い出そうと近寄ってきたが、そんなのは無視して、


「まるやまぁぁあああ!!!!」


喉が潰れるかと思うくらい叫んだ。

その叫びで、職員室の隅の席に座っていた丸山が、振り向いた。

俺は、バリバリと歯を食いしばり、丸山に向かって走り、助走をつけて右手を振りかぶった。

そのまま右手の拳を、丸山の顔面に叩き込むと、

丸山は、その辺にあった机やら、椅子やらを巻き込みながら倒れた。

鼻や口から、血を垂らしながら蹲る丸山を見下ろしながら、それでも腹の虫が収まらず、

体育教師の机らしき所に、金属バットがあるのを見付け、拝借した。


「ぐぅ…た、がみ…貴様こんな事して、」


「うるせぇよ。」


憎々しく俺を見上げる丸山を、睨み付けながら、金属バットを、ゆっくり振り上げた…

金属バットが自分に向けられている事を理解した、丸山の顔は、みるみる青くなった。


「や、やめっ…」


「死にやがれ、クズ野郎!!」


金属バットを振りおろそうとした瞬間、

後ろから両脇を抱えられ、羽交い締めにされた。

カズが、追いついて俺を止めたのだ。


「駄目だ、タク!」


「離せ、カズ!!止めるなよ!」


「駄目だ、駄目だって!落ち着けタク!」


俺は、カズを振り解こうと暴れたが、ノブやヒナ、ミウもやって来て、

皆で、俺を押さえ付けた。


「お前等…邪魔するなよ!!」


「駄目だって、タクちゃん!」


いきなりの、生徒の暴挙に唖然としていた、他の教師が何事だ!と怒鳴り付け、

それを期に丸山が、


「田上こんな事して、只で済むと思うなよ!」


と、怒鳴り付けてきたが、


「調子に乗るなよ、丸山!」


カズが、ポケットから写真を取り出し、ばら撒いた。

その写真には、ナオが丸山にされていた事が一部始終写っていた。


「ナオは、猿轡をされ両手を縛られてる!」


「明らかに、加害者と被害者だぜ…」


丸山は、その写真を見て血の気が引き、地面に這いつくばり拾い集めようとしたが、

直ぐに、他の教師らが、数枚拾い上げ、その写真の内容に驚愕した。


「丸山先生…これは、一体…」


「ね、捏造だ、こ、こんな写真…」


「捏造じゃない!私はその現場に居た…覚えているよな、丸山。」


ミウが、丸山を睨み付けながら言った。


「はっ…こんな不良の言うこと…」


「わ、私も見ていました…隠れて見ていました!!」


「ま、丸山先生は、ナオちゃんに酷い事…」


ヒナがそう叫ぶと丸山も、他の教師も、ミウも驚いていた。


「二人の生徒の証言があり、証拠もありますよ…丸山先生。」


「どういう事なんですか?」


学年主任の厳つい男性教師が、丸山に詰め寄る。


「…そ、それは…」


「まぁいい、校長室でじっくり話して貰いましょうか?」


「待て!待てよ!」


「連れてくんじゃねぇ…まだ終わってねぇ…」


「田上、いい加減にしろよ…」


「うるせぇよ!!そのクズ野郎のせいで、ナオは…ナオはぁぁあ!!」


「そのクズ野郎がクソみたいな事、ナオにしやがったせいで、ナオは自殺したんだ!!」


「許せねぇ…絶対に!!」


「だからな、田上その事について、今から話し合うんだ。」


「はっはは…話し合ったら、ナオは生き返るのかよ…」


「丸山先生殺したら、生き返るのか?」


「少なくとも、俺の気は晴れる。」


「だからさ…先生頼むよ、恋人だったんだよ…」


「目を瞑ってくれよ…事が済んだら全部俺のせいにしていい…」


「警察に突き出してくれていい…」


「だから…だからっ!!」


すると、後ろからゴンッと思いっきりぶん殴られた。

カズだった。


「先生、コイツは俺が責任を持って、教室に引き摺っていきます。」


「だから、丸山先生の事は頼みます。」


「ああ。」


「ナオとは、俺達も友達でした。」


「だから、適当な罰じゃ許せません…」


「分かっている、これだけの事件だ、然るべき対処をする。」


「丸山先生を殴った事は、不問にするから、さっさと連れて行け。」


「はい。」


俺は、襟首を掴まれ文字通り引き摺られながら、職員室を後にした。




しばらくは、皆無言で歩いていたが、

俺は、引き摺られるのに嫌気がさし、カズの手を払いのけ、ミウとヒナに向き直った。


「これが、隠してた事だよな?」


「ああ、そうだ。」


二人は、隠していたことがバレ、悲しそうで悔しそうな複雑な表情で、

唇を噛んでいた。


「ははは…」


「ミウ、お前等の手引きか?」


「…そうだ。」


ガンッ

俺は、ミウの頬を殴った。

ミウは殴られた衝撃で、吹き飛び壁に背中を打ちつけ、苦しんだ。


「タクっ!」


慌てて、止めに入ろうとするカズだったが、ミウが制した。


「っつぅ…てて。」


ミウは、口から血を垂らし倒れていたが、

俺が、胸ぐらを掴み、立ち上がらせ、壁にドンッと打ち付けた。


「くっ…ぁ…」


ミウは、また背中を打ち、苦しそうにしたが、俺は手の力を緩めなかった。


「あんまりじゃないか…」


「許すとか許さないとか…許すわけねぇだろうが!!」


「何でだ…友達だったんだろ?」


「ご、めん…」


「ミウ、殺していい?」


俺は、外側の窓を開け、ミウの上体を窓から突き出した。

ミウの体を、グイグイ押し俺の手で支えてる状態にした。

手を離せば、ミウは落ちる…


「殺していいか?ミウ…」


「タクこんな事したって…」


カズが、俺の後ろから手を伸ばし、ミウの肩を掴んだ。


「カズ、ヒナが同じ事されて、自殺したらミウを許すのか?」


「そ、それは…」


カズは、押し黙り俯いたが、ミウを離そうとはしなかった。


「いいよ…殺して。」


俺と、カズとのやり取りを黙って聞いていた、ミウが口を開いた。


「私は、ナオを殺した…死に追いやった。」


「自分の為に、ナオを友達を、売った…本当に自分が嫌になる。」


「死ぬことでしか、罪を償うことが出来ないなら…殺していいよ。」


ミウは、泣いていた。

大粒の涙を流しながら、タクの目を見つめていた。


「死にたいのか?」


「死にたくはない…マコの、弟の成長をもっと見たい。」


「でも、それだけの事をした…タクの気が済むなら、落としていいよ。アンタにはその資格がある。」


覚悟を決めたミウの目を見ていると…


俺は、ミウの体を廊下に引き寄せ手を離した…


「ミウ殴ってすまん…」


「殴られて、当然だ…」


「帰るわ。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ