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Vendetta  作者: tama
タク
14/19

タク 2012 冬 前編

昼休み、カズを捜していた。

カズは、最近よく分からない理由をつけて、、俺達と昼飯を食べなくなっていた。

曰く、委員会の仕事だの、部活のなんたらだの…

お前は、委員会も部活も入ってないだろう…とツッコミたかったが、面白そうなので泳がしていた。


「カズちゃん、嘘下手だよな…」


「アホだからな。」


「突撃しちゃう?」


「ナオの時の怨みを晴らす時が来たな…」


俺とナオも、初めは一応カズとノブに気を使って、隠れて二人っきりで昼飯を食べていた。

だが、ある日物好きなカズとノブが突撃と称して、二人きりの、ラブラブな時間をぶち壊しに来たのだ。


「あの時の怨みは忘れらんねぇぜ…へへ。」


「タクちゃん怖いっす…」


ノブと購買部でパンを買い込んで、カズが飯を食いそうな場所を片っ端に捜した。

裏庭、中庭、食堂何処にも居なかった。


「カズちゃん何処にもいないね…」


「ああ、カズのくせに生意気だ。」


「アレだよね、カズちゃん彼女出来たんだよね?」


「ああ、あの浮かれっぷりは、間違い無くな…」


カズは、隠し事が苦手で、昔から何事も、顔に出ていた。

今日も、浮かれたアホ面で言い訳をしていた。


「じゃあ、校舎裏の一本桜とかは?よくカップル居るよ?」


「ベタだな~…でもカズベタなの好きだしな、行くか!!」


とノブと笑っていたが、フッと気付く。


「俺とナオが見付かったのも、其処だったよな…」


「うん。カズちゃんも同じ事言ってた。」


俺は、カズと同レベルなのか…と軽く落ち込んでしまった。




「あ~ん。」


カズは、待っていた。

口を大きく開けて、彼女が弁当のおかずを食べさせてくれるのを…

彼女は、顔を真っ赤にしながら、


「も、もう…カズ君ったら…甘えんぼさんだな…」


と、頬を膨らませて、

仕方ないな~、と卵焼きを食べやすい大きさに切って、

カズの口に入れてあげた。

ムグムグと食べて、美味しいと満面の笑みを浮かべていた。


そんなやり取りを、さっきから焼きそばパンを食べながら見ていたが、

二人は、こっちに全く気付かない…

ノブなんて、腹抱えながら写メを撮りまくっていたが、

全く気付かない。

仕方ないから、俺は自分の存在をアピールしなくてはいけなかった。


「ちょ~ラブラブっすね~」


と、感情を込めず、棒読みで言ってやった。

二人は、ビクッとしてやっとコチラを見た。


「た、た、タク…」


「た、タクちゃん!?」


「カズ君とヒナちゃん超ラブラブで、羨ましいっす。」


カズとヒナが慌てて、取り繕うとしていたが、

ノブが間髪入れず、あ~んとしたので、


「もう、ノブ君ったら…甘えんぼさんだな…」


とわざとらしく言いながら、焼きそばパンを食べさせた。

案の定二人は、真っ赤な顔になって俯いた。




「つかさ、めでたい事だろ?隠すなよ!!」


「…」


「ああ~もしかして、俺とナオの事気使ったりした?」


「…いや、するだろ。」


カズは、苦笑いしながら俯いた。


「はぁ…カズのクセに…」


「あのなぁ、お前等がくっついて一番喜ぶの、ナオだろうがよ…」


「ヒナは、押しが弱すぎるから、私がギュウギュウ押してやんなきゃって張り切ってた。」


「な、ナオちゃん…」


「で、押して押して、今があるんだろう?」


「う、うん…」


「な?なんだか嬉しいじゃん!」


「また皆で、飯食おうぜ!俺とナオの事散々いじったろ?」


「俺にも、いじらせろ。」


「…そうだな。」


カズが、いじれ!と笑い、つられて皆笑った。

これでいいんだ、カズもノブもヒナも、前を向いている。

高校生活を謳歌している。

祝福しよう心から…




俺は、一人裏庭のベンチに座っていた、

ベンチの背もたれに、背中を預け、空を眺めながら、

自分の心の中の、感情を整理しようと、目を瞑って深呼吸をした。

しばらくその態勢で動かないでいると、足音が近付いてきた。


「隣いいですか~?」


声で、エミだと分かった。


「どうぞ。」


エミは、隣に座って俺と同じ格好になる。


「タクちゃん、何か、悩んでるでしょ?」


「バレバレか…」


「バレバレだ。」


「…」


「カズとヒナが付き合ってる。」


「!」


エミは驚いて、体を起こし俺に向き直る。


「へぇ~!へぇ~!そっかぁ~へぇ~…めでたいね。」


「おう。」


「でも、素直に喜べない。」


「まだ、早いだろ?って思う…」


「ナオの事忘れて、前に進んでしまうのかって…」


「はぁ…心狭いな…」


「うん。」


「あのさ、ナオが心に居続けるのって、辛い事じゃないかな?」


「きっと、壊れちゃうよ…」


「皆それを感じているから、逃げたい…ううん、進みたいって思うんだよ。」


「タクちゃんの心の中には、ナオが居続けるの?」


「…知ってるだろ?」


「…」


「大好きだった。忘れろって言われても、無理だ…」


「…忘れさせてあげる。」


「…」


「私が、ナオの代わりになる…」


「……」


「はは…だよね。」


「知ってる。タクちゃんはナオにベタ惚れだもん…」


エミは、立ち上がって一歩前に出た。


「…タクちゃん、好き。」


「…」


「心の中のナオが居なくなったら、返事下さい。」


そう言うと、エミは走って行った…




俺は、いつも通りナオに会いに来ていた。

ナオに、カズとヒナの事報告して、あのカズが彼女作りやがったと笑ってみせた。

おばさんが、お茶を淹れてきてくれた。

そういえば、今日はおじさんが居ない…


「おじさんは?」


「ああ…お仕事よ。」


「有給も、もう無いみたいだしね。」


「ヒナちゃんのおかげかな…」


「ヒナちゃんが謝ってくれたから、あの人も踏ん切りついたみたい。」


「おじさんも、前を向けた訳ですね…」


「そうね。」


「おばさん、俺ナオのこと大好きです。」


「今でも、大好きなんです…」


「学校に居ても、家に居ても、風呂に入っていても、寝ていても…」


「ずっと、ナオが居るんです…」


「俺は、忘れたくない、前を向きたくない…」


「ずっと、ナオを忘れずに生きていきたい。」


「そうやって、ナオちゃんにすがるの?」


「…」


「タクちゃん、忘れなさい。」


「ナオちゃんの事、忘れなさい。」


「アナタはまだ若い…」


「未来は希望でいっぱいじゃない。」


「でもね、ナオちゃんは違う、もう死んだの…」


「もうこの世に居ない。」


「そんなナオちゃんにすがってどうなるの?もう居ないのに…」


「ナオちゃんの事は、私が覚えておきます。」


「ナオちゃんのお母さんである、私が一生涯覚えておきます。」


「だから、ね?安心して忘れなさい。」


「……」

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