君へ…〜愛しい君〜
「では誓いのキスを」
ベールを上げ誓いのキスを交わす。視線を合わせ微笑む二人。
参列者の大きな拍手が大聖堂を埋め尽くす。
参列者が待つ教会前。ウエディング姿の美穂子がブーケを空高く投げた。
結婚式からさかのぼること一年半前
病院の廊下を急ぐ康之と美穂子。二人の顔はこわばっている。
<カシワギカオル様>
プレートをようやく見つけ病室へ駆け込む二人。
「薫!」「薫ちゃん!」
「あ?」
そこにはベッドに起き上がり雑誌を手にしている薫。顔にはられたガーゼが痛々しい。
「何?二人ともそんな怖い顔してどうした?」
「どうした?って…薫大丈夫なのか?」
「意識不明の重体って聞いたけど…」
——その日大学院の研究室で仕事をしていた康之は、たまたま通りかかった他の研究室のテレビから聞こえてきたニュースを耳にする。
『ここで事故のニュースです。今日午後一時過ぎ、都内を走る幹線道路で、10tトラックと警備会社の車が衝突する事故がありました。トラックが道路にある障害物を避けた際、対向車線を走る警備会社の車が避けきれず二台は衝突した模様です。』
警備会社?確か薫も警備会社だったよな
「ありゃ〜こりゃひどいわ」テレビを見ていた教授たちが腕を組んみながらニュースを見ている。
康之は「ちょっと失礼します。」とその研究室に顔を出した。
「おお、相田君か。ひどい事故だよな。うんうん。」
『……尚、衝突された◇◇警備会社の車に乗っていたヤマダコウタさんとカシワギカオルさんの二人は意識不明の重体で都内の病院へ搬送されました。』
…………。
カシワギカオル?
柏木薫?薫?
テレビには事故現場の様子が映し出され画面下には薫の名前と写真が出ている。
動揺した康之の手から研究用の資料がバサバサと落ちた。
「沢田くん?どうした」
怪訝そうな教授達に挨拶をし廊下を走りながら美穂子に電話をした。
——「康之から電話もらって慌てて来たのに……」
二人の心配をよそに
「俺テレビに出たんだ。有名人じゃん!」
薫は笑いながら言った。。
「それにしてもスゴかったぜ。」
まるで他人ごとのように話し始めた。
対向車線からトラックが向かってきて避ける間もなくに衝突。薫たちの乗った車は二回転。
しかしさすが警備会社の車。車体は普通車よりも頑丈にできていた。奇跡的に運転していた上司は右手と肋骨骨折、薫は左足骨折と打ち身、顔の切り傷だけですんだ。
「診察した医者も、あんだけの事故にあったのにこのくらいのケガですむなんて運がいいって。鍛え方が違いますねだってさ」
器具に吊された左足を見て「ニュースは大袈裟なんだよ。」と美穂子と康之をみて笑い飛ばした。
「でも本当に良かった。心配したんだからね」
美穂子が安心したように言うと
「美穂子がキスしてくれればもっと早く治ると思うけど」
と薫は美穂子の方を見て唇を突き出した。
「バカ!心配して損した!」
美穂子はフンッと怒ってみせると、親に状況を伝えるために病室を出た。
美穂子が見えなくなった途端、薫は辛そうにベッドへ寄りかかった。
「おい、大丈夫か?」
「やっぱちょっとしんどいかも……」
薫は目をつむり眉間にしわを寄せて鈍い痛みに耐えていた。
「美穂子の前だからってあんまり無理すんなよ。」
呆れて康之がベッドの横に置いてある椅子に座り続けて言った。
「美穂子な、来る途中の車の中で泣いてたぞ。お前に万が一の事があったらどうしようって」
薫は目をつむり鈍痛に耐えながら「ごめん。迷惑掛けて悪いな」と言った。
多少痛みが緩んだのか「ふーっ」と息を吐き出し目を開けた薫に
「そうそう。美穂子を泣かせたからペナルティ1な」
と康之は冷たく宣告し冷やかすように笑った。
「なんでだよ!?」
有り得ない言葉に薫が抗議した時「病室では騒がない!」と帰ってきた美穂子に二人は怒られた。
「美穂子ちゃんいつもごめんね」
着替えやタオルが入った袋を美穂子に渡す薫の母。
「いいよ。おばさんも仕事忙しいでしょ?
病院、会社から帰る途中だし、ついでだよ」
事故から二週間が経ち、薫のリハビリも始まった。美穂子は会社を経営し忙しい薫の母親に変わって一週間に一度は病院へ着替え等を持って行っていた。
薫の回復力は予想以上に早くリハビリに通う条件付きで事故から2ヶ月後には退院した。
康之と美穂子はささやかな退院祝いをした。
会社の寮で一人暮らしだった薫だが、リハビリ中は身の回りの事をするのに不便だったため実家から会社へ行くという生活が続いた。リハビリにもしっかり通い脅威の回復力をみせた薫は1ヶ月後には完全復活。仕事も元通りできるようになり以前よりもバリバリ仕事をこなしていった。
「俺と結婚しない?」
三人がよく行く行きつけの店で美穂子と薫の二人は食事をしていた。食後のコーヒーを飲んでいた時、薫が突然切り出した言葉。
「ブッ…突然なに?薫ちゃんったら……」
美穂子は冗談でしょ?というように笑いながら返した。
「俺、真剣なんだけど」
薫の真剣な眼差しにどきっとする
結婚。
美穂子だって結婚願望が無いわけではない。
ただ、そのうち誰かを好きになりその人と結婚するんだろうなという漠然とした思いはあった。
「…だってあたし達付き合ってないし」
不必要にコーヒーをかき混ぜ美穂子は言った。
「付き合ってからじゃないとダメなの?これだけ長い間一緒にいるのに?美穂子の事なら誰よりも何でも知ってるつもりだけど…」
「そんなの突然ずるい」
「そのうち誰かを選ばなきゃならないんだぞ……これが今の俺の気持ち。一応覚えておいて」
薫は最後に軽い言い方でこの話を終らせた。
「俺、美穂子にプロポーズした」
たまたま街であった薫と康之は久しぶりに飲みに行くことにした。
「ってか、お前らつき合ってたの?」
酒を飲み料理をつまみながら康之が聞いた。
「いや。こんだけ付き合いが長いのに今更改めて付き合って下さいなんて言えないだろ。」
「まあ、それもそうだな」ビールのジョッキを片手に康之が答える。
「……康之はどう思うよ?」
康之は壁に寄りかかり
「うーん。美穂子を薫にとられるのはしゃくだな。だけど知らない男にとられるのはもっとしゃくに障る。」
まるで父親みたいな言い方だ。
「かといって俺が美穂子を……ってのはまだ仕事も安定してないしな…ってか、そういう相談を俺にするか?」
「お前しか相談できる相手がいないだろ」
薫はジョッキの中身を飲み干す康之をみてそういった。
薫に言われた『結婚』という二文字が、まだまだ先だと思っていた美穂子へ急に近寄ってきた。
「誰か好きな奴いるの?」
薫に聞かれた時なんの返事もできなかった。
一年前、薫や康之は美穂子の事を好きだと言ってくれた。美穂子は二人とも大切な人だと答えた。
好きな人…
薫の事も康之の事も好きだ。ずるいとは思うがそれが美穂子の正直な気持ちだった。
どちらも選べない。
でもこれから先、誰か一人を選ばなくては結婚なんてできない。
2人と結婚なんてできる訳ないし、そんな事は美穂子が一番分かっている。
一応覚えておいてと言われたが…
どうしよう……
「忙しいのにごめんね。」
数日後、研究の為学校へ行っていた康之に電話をし相談にのってもらう事にした。
コーヒーの香りが漂い静かに音楽が流れる心地よい店。康之を目の前にしてなんだか言いづらいが、美穂子は思い切って口を開いた。
「あのね、…薫ちゃんに結婚しないかって言われた…」
「うん、知ってる」
康之の返事に美穂子は驚いた。
「えっ?」
「この間、薫にも相談されたよ」
「康之はなんて答えたの?」
康之は薫に言った事をそのまま美穂子に話した。
「そうか…」
「美穂子が幸せなら俺はいいと思う。最終的に選ぶのは美穂子だよ。誰の意思でもない美穂子の意思で選ぶんだ」
約1ヶ月あまり悩んだ美穂子は自分の仕事が終わると、薫の仕事が終わる時間を見計らって寮へ向った。
寮に着きインターホンを押したが、薫はまだ帰ってきていないようだった。
仕方がなく寮の周りをウロウロしていると薫と同じ制服を着ている人に声を掛けられた。
「あっ、もしかして薫の?」
「あっ、はい」
「病院でよく見かけたからさ。薫もうすぐ帰ってくるよ」
「なになに?」
「薫の?」
その人と話していると会社仲間の人が集まってきた。
「おーい薫!彼女が待ってるぞー」
と大声で呼ぶ声がした。
周りの人と同じ制服姿の薫は、走るわけでもなく仲間と話しながら歩いてくると
「誰?なんだ美穂子か」
と言った。
なんだはないでしょう!
美穂子は心の中で思った。
更に集まる仲間達。
「なに?薫の彼女?」
「薫には勿体ないんじゃねぇ」
「幼なじみだよ。で何の用?」
薫は周りの同僚からの質問に鬱陶しそうに答え、美穂子ににも質問した。
「あっと……えーと………」
こんなところで「この間の結婚の話なんだけど」とは言えない。
「んじゃ、着替えたいから部屋でいい?」
と口ごもる美穂子を連れ寮に向かって歩き出した。。
「部屋に連れ込んで何する気だよー」
「薫のスケベ〜」
と仲間達が薫を茶化す。
「うるせーな、お前ら。早く帰れ!!」
薫達を茶化して楽しそうにする同僚達を薫はシッシッと追い払い、美穂子を連れてさっさと歩き出した。
「入れよ」
案内された薫の部屋はワンルームだ。
荷物を届いけに来たことはあるが中に入るのは初めてだった。
「着替えるから、そこら辺に座ってて」
と目の前で着替えはじめた。
「ち、ちょっと」
慌てる美穂子に
「あ?いいじゃん。俺と美穂子の仲なんだし。それともドキドキしちゃう?」とシャツを脱ぎながら薫が近づいてくる。
「バッバカ!早く着替えろ!」
薫を押し戻し美穂子はそっぽを向いた。
ようやく着替え終わった薫は「で、今日は?」と煙草をくわえながら美穂子に向かい合って座った。
なんと切り出したらいいのか分からない。
「うーんとね……あのね……」
「何?なに?」
煙草を吸いながら美穂子の言葉を待つ薫はピンときて「もしかしてこの間の話の?」と言った。
見事に当てられ赤面しながら頷く美穂子。
「で返事は?OK?それとも…NG?どっち?」
目をキラキラとさせ矢継ぎ早に言われ
「もー…ちょっとは落ち着けっ」
美穂子に言われ薫は叱られた子犬のようにシュンとなった。
改めて座り直し
「あたしで良かったらもらって……下さい」
恥ずかしくて顔が上げられずうつむいていたが、薫の反応がない。
そっと顔を上げると薫もうつむいている。
「薫ちゃん?」
美穂子が声をかけると鼻をすする音がした。心配して顔を覗き込むと薫は泣いていた。
「な…なんで泣くの。普通泣くのって女の子の方じゃない?」
「ホッとしたらつい……うれしくて」
薫はうつむきながら鼻をすすり涙を指でぬぐった。
「薫ちゃんの泣き虫〜っ」
「うるせー……」
三人の中で一番大きくなり外見はつっぱった感じなのに、中身は小さい頃からちっとも変わってない。
『泣き虫薫ちゃん』のままだった。
薫は顔を上げ、自分を覗き込む美穂子を抱きしめた。
「美穂子、ありがとう。大好きだ」
「薫ちゃん……」
タバコの匂いのする薫の広い胸に抱かれ美穂子は目を閉じた。
「薫ちゃん」
何度も名前を呼び両腕を背中にまわしきつく抱きついた。
頬に薫の手がそっと触れ美穂子が顔を上げると唇が触れた。
優しいキスの後、2人は見つめ合い再び唇が重なり今度は少し乱暴なキスを繰り返した。
2人の結婚の意志が決まった後はお互いの親へ挨拶し結婚の了承を得なければならない。
「そんな改まった事いいんじゃない?」
「いや、ケジメだからさ…」
という事で次の日曜日、薫は美穂子の実家へ行く事になった。
報告当日。
「いや…改まって来るとやっぱ緊張するな」
しきりにネクタイを気にしする薫は余裕なさげな顔で言った。
その緊張ぶりに美穂子はクスクスと笑った。
「大丈夫よ。この間会ったばっかりじゃない。いつもとおり『チーッス、おじさん』って言ってよ」
玄関を入る前に緊張している薫の背中をポンと叩いて緊張をほぐした。
「美穂子さんを下さい」
腕組みをし厳しい顔の美穂子の父親。
二人の間に不穏な空気が流れ長い沈黙が続いた。
薫は緊張しすぎて顔があげられない。
この間はなんだ?
汗が吹き出してくる。
長い長い沈黙のあと、美穂子の父は難しい顔をしたまま口を開いた。
「いいよ」
は?
あの間はなんだったの?薫は美穂子の父を見た。
「いや、なんて言おうかな〜って考えてたんだよ。初めから了承するつもりだったしダメだ!はなんかね〜ってね、芸がないっていうか。かと言って説教じみた事を言ってもな…って」
父親はがははと笑った。
ぐったりと疲れる薫。
「ったく」
悪態付くと父に聞こえたらしく
「なんだ薫。文句があるなら美穂子はやらないぞ。」
「いや、マジ勘弁して」
さあさあ、早速喧嘩してないで乾杯しましょ」
美穂子の母親と美穂子が酒と食事を運んで来た。
テーブルにはごちそうが並べられささやかな宴会が始まった。
その数日後、薫の両親にも挨拶をしに行った。
「こんなのでいいの?美穂子ちゃんにはもっといい人がいるんじゃない?」
薫の母親が言った。
「そうそう。俺はてっきり康之と結婚するんだと思ってたんだけどな…」と薫父。
「おい!本人目の前になに言ってんだよ。二人だって『美穂子ちゃんが娘になってくれたら嬉しいな』って言ってただろうが!うれしくないのかよ」
両親の言葉に呆れる薫。
「も〜おじさんもおばさんも。あたしは薫ちゃんで充分よ」
と美穂子は笑って薫両親に言った。
「俺で充分って……。美穂子もかよ」
薫以外の三人で話が盛り上がる中、疎外感でがっくりと方を落とす薫がいた。
後日2人は康之に結婚の報告をした。
「そうか、おめでとう。幸せにな」
「結婚してからも三人でつるんでいこう」
「ああ。美穂子を幸せにしろよな。でも泣かせる様な事があったら俺が奪いに行くからな!待ってろよ美穂子っ」
「おい、この期におよんで人の嫁を口説くな!上等じゃねぇか、受けて立ってやるよ」
お互いニヤリとしながら拳を突き立てた。
「ちょっとー、あたし物じゃないんだけど」
美穂子は二人に向かって叫んだ。
「薫ちゃんのばか!」
結婚式を間近に控えたある日、ケンカをし美穂子は薫の部屋を飛び出した。
角を曲がった時美穂子は誰かとぶつかりそうになった。
「おっと……」
「すみません」
顔を伏せ相手に謝る美穂子。
「美穂子?」
顔をあげるとそこには、たまたま実家へ帰ってきていた康之の顔があった。
「康之……」
「何?またケンカ?」
泣いている美穂子を家に上げ、お茶の入ったコップを渡し康之が聞いた。
美穂子は顔をあげずにコクンと頷く。
ため息をついた康之は美穂子の頭を撫でながら
「こんなに泣かせてばかりいる薫に美穂子を渡さなければよかった。今更後悔してももう遅いけどな……。でも今だったらまだ間に合うか?何だったら俺が美穂子をもらおうか?」と美穂子の目を見て言った。
その言葉に顔を上げた美穂子が何も言わず康之をみていると、康之は美穂子を抱きしめた。
「……なんてな、ごめん。こんな時にこんなこと言って。俺って最低だな」
美穂子の頭を撫でながら悲しげに康之は言った。
康之からの連絡を受け薫が迎えに来た。
「美穂子帰るぞ」
「いや!!」
「美穂子!」
押し問答を続けた二人だったが、仕事や式の事でピリピリしていた薫は「勝手にしろ!!」とドアを思いっきり閉め部屋を出て行ってしまった。
玄関で靴をひっかけ出て行こうとした薫は、振り向かずに後ろにいる康之に
「ちょっと頭冷やしてくる。わりぃけど美穂子を頼むわ」と言い出て行った。
「やっぱりここか」
子供の頃よく三人で遊んだ小さな公園のベンチに薫は座っていた。
康之が隣に座り無言のまま煙草を差すと薫も無言で煙草を一本抜いた。火をつけ並んで煙をはいた。
「美穂子は?」
「家。一人になりたいって言うから……。美穂子、最近薫の気持ちが分からないってさ…」
「あー俺だってわかんねぇんだよ」
乱暴に煙草を踏みつけ、薫がもやもやした気持ちを吐き出した。
「これからは美穂子を支えてやらなきゃって思って仕事も精一杯やってんだけど、なんか気持ちだけが空回りばっかりでよ」
頭をかきむしって薫がつぶやく。
「それ渡すつもりだったんだろ」
薫が両手で握っている箱を見て康之が言った。
「お前らさ二人揃ってマリッジブルーなんじゃないの?」
美穂子はともかく俺が?
康之が立ち去った後薫はしばらくベンチに座ったまま考えた。
しばらくすると、うつむく薫の前に美穂子がやってきた。
「結婚やめる?」
顔をあげずに薫が言う。
無言の美穂子。
薫は髪をかきあげると顔をあげ美穂子の目をみて話し始めた。
「俺さチームリーダーになってから美穂子を構ってやんなかった。結婚式の準備もお前に任せっきりで。仕事のストレスで美穂子に当たったり…全然美穂子の気持ち考えなかった」
美穂子も心の内にある不安を全て薫に吐露した。
「結婚にあたしだけ舞い上がってて…薫ちゃんは全然嬉しそうに見えなかった。本当にあたしと結婚したいの?って疑心暗鬼になってた」
「ごめんな」立ち上がり美穂子を抱きしめる。
薫の胸の中で美穂子は小さく首をふった。
「これ……遅くなったけど」
ポケットから指輪が入った箱を取り出し、美穂子の左手薬指にはめる。
「辛い思いをさせて悪かった。この先もずっとずっと美穂子を愛してるから」
薫は美穂子に優しくキスをして強く抱きしめた。
数年後、美穂子は愛おしそうに大きなお腹をさすりながら話している。
「女の子だったら美穂子のように、男の子だったら俺のように…」
「美穂子に似た女の子は可愛いだろうけど薫のような男の子?今から将来が不安だな」
康之が大真面目な顔で言うと美穂子は笑い薫は口をとがらせた。
「幸せか?」
「うん」
康之の問いに満面の笑みで返事を返した美穂子。
「康之も早くいいお嫁さんもらいなよ」
「美穂子よりいい女なんてそうそういないよ。今は研究が恋人かな?」
「うわっ…暗っ」
薫と美穂子は同時にいった。
〈完〉