01 転生万歳!
キキィー!
「ゲームでもラノベでも良いんだけどさぁ、もし転生するなら行きたい世界ある?」
僕は一抹 光明。中学生だ。学校の帰り道、一緒に歩いていた友人から質問された。
「転生? そうだなぁ、悲惨な運命に巻き込まれるのとかは嫌だけど、主人公無双系なら、どこでも楽しそうじゃね?」
先日読んだばかりのラノベの主人公を思い浮かべた。魔力が人一倍強く、どんな事でも器用にこなし、前世の知識をフル活用し、その世界になかった料理を作り、新たな音楽を広め、たくさんの仲間を得て、楽しく暮らしていく話だ。
「具体的には?」
「自分だけ魔力がぶち抜けていて誰よりも強い系とか、食が未発達で料理開発するとか、絵は無理だけど音楽なら楽器を引けなくても歌を歌えば曲は伝えられるし、なんかそういうの」
答えてふと横を見て思った。こいつ誰だっけ? 知らない相手なのに、なんで友人だと思って話していたんだろう?
「そう。なら、試しに行ってきなよ」
制服だと思っていた相手の服が白いたっぷりした布に変わり、手には杖を持っていて、僕に向けてその杖を振り回していた。
「え?」
次の瞬間、僕は潰されるような感覚を覚え、意識を失った。
昨日の晩に母親から、成績についての説教を長々とくらい、口では「はい。はい。すみません。はい。はい。がんばります」と答えてはいたけど頭の中は、早く説教終わらないかなぁ。早くゲームの続きがしたいなぁ。と考えていた。ゲームの中の僕は最強で、器用で何でも出来て仲間から頼りにされていて、最強コミュニィティを作るために驀進中なのだ。
「光明、勉強は自分のためにするのよ。いつか勉強しなかったことを後悔するときが来るのよ。高校受験を頑張りなさい」
母はくどくどと言い続けていたけど、勉強なんて面倒くさい。こんな長々の説教より、いっそゲームの世界で暮らせたら良いなぁ。口うるさい母も居ないし、僕は万能だ。そんなことを考えていたのを思い出していた。
何か声が聞こえる。あ、僕は夢でも見ていたのかな?
「○△□☆▽!」
何だ?何て言ってるんだ?
目を開けると、知らないおじさんが僕を見て何か叫んでいる。
「オギャー!、オギャー!」
言葉がわからないうえに言葉も話せない。いったいどうなってるの!?
理解できないまま途方にくれていると、知らない若い女性がそばに来た。
「◎▲★、□▽○◎」
フワッと抱き上げられた!
僕って若い女性に軽々抱き上げられるの? そんなに体が小さいの? まさか、転生した!?
考慮した結果、この考えに至り、僕は感動にうち震えた。
前世の記憶を持ったままの転生。勝ち組確定だ!
そのままスクスク育ち、1歳になる前に二語文をしゃべって回りを驚かせた。単語さえ理解できるようになれば、文章なんて簡単だ。3歳の頃には長文だって理路整然と話せた。中身は中学生なんだから当然だ。
「とうさん、かあさん、おはよう」
「スペスルーキス、まだ寝ていて良いのよ」
僕の名前は、スペスルーキス。意味は、「希望の光」らしい。とても偉い人につけてもらったそうで、青い満月の夜に産まれた子は魔力が強くなる傾向にあるらしく、将来有望なんだとか。文明レベルも低そうだし、きっと勉強も簡単だろう。
食も生活もまったく豊かではなかったけど、母はとても優しく、父は力強く、僕は希望に満ち溢れていた。
5歳になり、1次魔力測定の義に呼ばれた。
産まれたときの予想通り、僕の魔力値はとても高かった。有力貴族から養子縁組の話があったけど、僕は断り、家族の元に残った。貴族相手に異論を唱えることが叶わず、泣きそうな瞳の母を見てしまったのだ。僕はこの優しい母が大好きだ。
「スペスルーキス、断ってしまって良かったのかい? オレたちの元では学校へ行くこともできないんだぞ?」
「父さん、だってそこには、父さんも母さんも居ないじゃないか」
何も言わずに母が強く抱きしめてくれた。僕を熱望する貴族からの妥協案として、両親を使用人として雇っても良いと言われたけど、本物の両親から傅かれる生活はしたくない。それに、望んでまでわざわざ勉強なんかしたいと思えない。
畑仕事や家事を手伝いながら育ち、1度も誰からも勉強しろと言われることもなく、少し何かを手伝うと優秀だと褒められ、8歳頃には村の偉い人の困り事(税金に関する割合の計算)を簡単に解決したりして、僕は神童と謳われ、有頂天になっていた。




