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咎人の詩  作者: 81MONSTER(日本を代表する怪物)ポンコツ犬のタナトス
第九話【銭奴】

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「香流羅よ、どうした?」


「入らないの?」


 家の前で立ち止まる香流羅に、二匹の霊獣が問う。


 霊獣は普段、其の実体を表には現さない。香流羅の衣服に、霊体として憑依しているのだ。


「邪悪な氣を感じる」


 《ガイア》の数珠を身に着けてから、感覚が鋭く成っていた。


 【人外の書】に依って、香流羅は遠くの氣の流れを察知する術を得ていた。故に以前にも増して、邪気に敏感に成っている。


 邪悪な氣は、一つでは無かった。複数の邪気が、別々の位置から感じられた。其れも、相当な力を有している。今の自分で在っても、果たして勝てるだろうか。


 ——此の御影町で一体、何が起きている。


 邪気の一つは、間違いなく魔徒に依る物だ。だが其れ以外の邪気は皆、気配が違う。幸い今は、成りを潜めている。事が起きれば、此の町は恐怖と混乱が渦を巻いて、死に包まれるだろう。他人が死のうが別に、どうだって良かった。家族さえ護れれば、香流羅は其れで良い。だが未だ、今の自分で在っても及ばない。


 闇が動き出す前に、更なる力を身に付けねば成らない。其の為には矢張り、神威が必要で在る。だが、神の許しがいる。


「……お兄ちゃん。そんな所で、何してるの?」


 背後から、声を掛けられた。


 振り向くと刹那が居た。


「何故、封印が解けている?」


 刹那から力を感じた。


 砂羅と共に掛けた封印の術式が、完全に消えている。刹那に封印を解く術は無い。此れまで、何も教えずに普通の暮らしをさせていた。其の命を削りながら、力を使わぬ様に。無用な危険を、避けさせる様に。全ては刹那の事を想って、掛けた封印だった。


 其の封印が、何者かに解かれている。


 一人、思い当たる者が居る。


「神楽と契約したのか?」


 無言で頷く刹那。


 香流羅の問いに、刹那は狼狽えた様子は無い。


 全てを知った上の事なのだと、香流羅は悟った。


「まぁ、良い。ならば、お前も力を付ける事だ。自分で選んだ道ならば、覚悟は出来ているんだろうな?」


 厳しくも優しい光が、香流羅の瞳には宿っていた。


 香流羅に取って、刹那は大切な妹で在った。


 護るべき大切な存在だ。


「こいつを常に、持っておけ。必ずお前の力に成る」


「此れは……?」


 小さなナイフ程の短剣だった。


「《正者のつるぎ》だ。お前の心に共鳴して、相応しい姿と成る」


「ありがとう……」


 はにかむ様に笑う刹那。


 何よりも、いとおしい存在だった。



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