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捌
「又、お前か……」
羅刹は溜め息混じりに、男を見た。
時刻は深夜二時。場所は公園。昼間とは打って変わって、煩雑が無い。電球の切れ掛かった街灯が、胡乱な明かりを照らしている。闇夜には調度、良い。
昨夜の男は、刀を携えていた。
静かな殺気を湛えている。
「俺は、お前と戦う気は無い!」
無言の男。
只、此方を見据えている。
「羅刹、魔徒の気配よ」
「此奴か?」
男を見るが、そんな萌しは無かった。
「彼は只の人間。昨日も言ったでしょ?」
「だろうな。じゃあ、魔徒は何処に居る?」
「彼の腰に差している在の刀。彼処から、邪悪な気配を感じるわ」
「なら……此奴は、魔徒に操られてるのか?」
「其れも違うわ。彼が魔徒を操っている。魔徒の意思を、凌駕しているわ。彼、強いわね」
「そんな事は、初めから解っている。実の処、俺も此奴と戦ってみたかったからな」
「殺しちゃ、駄目よ。あくまでも、相手は人間なんだから」
「解っているさ」
羅刹は短剣を引き抜いて、男を見据えた。
「漸く、剣を抜いたな。我が名は、爪倉戎三。貴殿の名は?」
「羅刹だ。悪いが、手加減は出来んぞ!」
羅刹は男に目掛けて、斬り掛かっていた。




