肆
「おっはよー、刹那!」
萌が人懐っこい笑顔を浮かべて、抱き付いてきた。
「そう言えば、知ってる?」
萌は目を爛々と輝かせていた。
「今日から、転校生が来るらしいよ」
二年生の三学期。時期的には、かなり中途半端で在った。
しかも刹那が通う私立晴明女学院は、お嬢様ばかりが通う学校だ。
余程に裕福な者が、何か特別な事情で転校して来たに違いない。
「どんな娘だろうね?」
萌が奇異と期待の籠った声音で言った。
「きっと、お金持ちのお嬢様じゃないかな?」
「刹那も、やっぱりそう思う?」
そうこうしていると、予鈴が鳴った。
暫くして、担任の教師と共に綺麗な女の子が来た。
「え〜……転校生を紹介する。舞織神楽さんだ。皆、仲良くするようにな」
担任の青山が、気懈そうに言った。今年で定年退職の所為か、いつもやる気が無さそうだった。
「舞織神楽と申します。皆さん、仲良くして下さい」
鈴とした佇まい。透き通る様な、綺麗な声。其の落ち着いた物腰は、高貴な品格を漂わせていた。
「其処の空いてる席に、着いて下さい」
青山が、刹那の隣りの席を指差す。
言われる儘に、神楽は席に着いた。
「舞織さん、私は御法院刹那。宜しくね」
「お前の事は、香流羅に聞いているぞ」
「えっ……?」
何故、神楽は兄の事を知っているのだろう。
刹那は明白に動揺していた。
「どうして、お兄ちゃんの事を……?」
「成る程……珍しいな。お前は《捧ぐ者》の様だな」
「捧ぐ……者?」
言っている意味が、解らなかった。
「どうやら、何も知らされていない様だな。其れに、封印の術式が施されているな」
周りの者には聞こえない様に、神楽は囁いた。
「貴方は、一体……」
「何、只の半神半人の半端者だ」
笑みに染まる声で、神楽は応えていた。




