拾壱
天界の上層部には、天承院と謂う名の王宮が在った。神々の王が住まう王宮。其処には専任の騎士が居る。
——天承院附けの戦騎騎士。其れは、神との謁見が赦される事を意味していない。其処に至る迄には、更なる功績と確かな力が必要で在った。王宮とは謂え、神々の王が住まう地。人間の理屈が通る事は無い。そもそもが、規格が違うのだ。
【嘆きのエリザ】から、天承院に住まう第一騎士団へと在る連絡が入ったのが三日前。タタラ復活の報は、未だ神々に受理されていなかった。因みに、第一騎士団に報じられた伝達は、タタラ復活とは別の案件で在る。詳しい情報は一部の神にしか報されていないが、天承院は確かに揺れていた。
神に直々(じきじき)に呼び出されて、矢紅は嘆息していた。此の時には未だ、矢紅は何も報されていない。タタラ復活も《開門》の案件も、何も知らない。故に矢紅には、動き様が無いのだ。そして、神からの呼び出しを受けて、実際に謁見する迄には、数日の時を要する。先程も述べたが、神と人間では規格が違う。永遠を生きる神々に取っては、数日は人の数分にも等しい。
故に数日を掛けて、神が熟孝をするのは自然な事で在った。
漸く考えが纏まったのか、神からの勅命を受けて初めて、矢紅は《開門》が近い内に行われる事を知らされる。詳しい時間と場所。そして必要な贄の選定。其の詳細と指揮は、全て矢紅に任せるとの事で在った。第一騎士団も《開門》の実行が、第一優先事項だと謂う報せを受けている事を教えられた。故に此の時点では矢張り、タタラ復活の報を矢紅は知らなかった。
此の時に矢紅の胸奥を占めていたのは、贄の選定で在った。《開門》に携わるのは、矢紅も初めての事で在る。古来から在る資料では、贄の多くは《捧ぐ者》が務めていたとされている。戦騎騎士と《禍人の血族》との関係に、大きな溝を生み出している原因の一つだ。
矢紅に取って、頭の痛く為る話しで在った。
天承院の最大の脅威が、己の手腕に懸けられたのだ。頭が痛く為って、当然で在る。




