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咎人の詩  作者: 81MONSTER(日本を代表する怪物)ポンコツ犬のタナトス
第七話【魔窟】

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 温かい雰囲気が、部屋を満たしていた。


 柔らかな砂羅の微笑みが、心を和らげる。羅刹の中で、砂羅に対する警戒心は完全に消えていた。


 心が緩むと言う事は、身体が緩むのと同じ事だ。穏やかな笑みを浮かべながら、砂羅は拳を繰り出して来た。反射的に、羅刹は動いていた。


「あら……中々、良い反射神経をしてるのね?」


 砂羅の拳を、左腕で(さば)いていた。


「何の真似だ?」


「安心して、部屋には結界を張っておいたから」


 何時(いつ)の間にか、刹那の姿が消えていた。


「貴方の力を少し、見せてくれない?」


 微笑を浮かべて、砂羅は姿を消した。


 《禍人(まがびと)の血族》特有の不思議な術で()った。気配はするが、()の姿は何処(どこ)にもなかった。


「勘違いしないでね。さっきも言った様に、私は貴方の敵には成らない。()れは、そう……ほんの戯れよ!」


 背後から迫る気配を察知して、羅刹は動いていた。短剣の鞘でクナイの一撃を受け、身体を反転させて短剣で砂羅を斬り払う。だが手応えは、全くなかった。又、術を使って姿を(くら)ませている。


「凄いわね。香流羅じゃあ、貴方に勝てない訳ね。けど、気を付けて。あの子は今、禁忌(きんき)の書に手を掛けている」


「禁忌の書だと……。どう()う事だ?」


 今度は上から、小太刀を振り降ろして来た。短剣で受けて、鞘で撃ち()ける。()れをクナイでなして、砂羅は前蹴りを放つ。左足で払い退()けて、羅刹は右の(まわ)し蹴りを繰り出していた。砂羅は更に前に出て、近接距離から頭部への(まわ)し蹴りを放った。()れを真面まともに喰らって、羅刹は倒れていた。体術で押し負けるのは、初めての事で()った。


 追撃はして来ない。


 まさか今の距離から、(まわ)し蹴りが放てるとは思わなかった。砂羅の身体は相当、柔軟に出来ている。


 本気ならば、今ので追撃を受けて致命傷を受けていただろう。


「どうやら貴方は、戦騎に頼り過ぎている様ね。戦騎無しで、何処(どこ)まで闘えるかしら?」


 此方(こちら)が構えるのを待ってから、砂羅は回転蹴りを放って来た。其れを左腕で受ける。


「其れじゃ……駄目!」


 足を左腕に絡めて、砂羅は体を捻った。


 砂羅の体重に引っ張られて、羅刹は倒されていた。


 首に絡み付く太腿が、頸動脈を絞め付ける。


「貴方は確かに強いわ。けれども、其れは戦騎が()ってこそよ……。貴方は今、女の私に体術で追い詰められている」


 (くび)を絞める力が、更に強くなって()く。


 ()(まま)だと不味い。


 墜ちてしまう。


香流羅(かるら)は、()れから強く成るわ。今の貴方よりも……私よりもね」


 短剣を砂羅に向けて振るうが、術で逃げられる。


「貴方は、強く成らなければ()らない。でなければ……此れから先、何も護れないわ」


 砂羅は異常な迄に強かった。強さの底が、全く見えない。


「次の一撃は、本気で行くから覚悟してね」


 此の時、初めて砂羅は殺気を放っていた。其の気配は研ぎ澄まされた刃に酷似している。冷たい波紋が、触れる物を鮮やかに両断する様は美しい。そんなイメージを羅刹に抱かせる。


 鋭い刃物で背後から、心臓を刺し貫かれた様な殺気を感じた。其の瞬間、羅刹の背中を砂羅の手が触れる。


 ——全く、動けなかった。


「此れが実戦なら、貴方は死んでいたわ」


 砂羅の手から、温かい力が伝わって来る。不思議な其の力は、己の内側から全身を駆け巡っている。胸を見ると蒼白い光の刻印が、刻まれていた。


「其の術が毒に成るか、貴方の力に成るかは、貴方次第よ」


 見た事も無い刻印で在った。


 だが呪いの類いでは無い事は、確かで在る。気付けば辺りは一面、闇に包まれていた。



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