陸
「貴方が、羅刹ね。刹那ったら中々、良い男を連れて来るじゃない」
品定めをする様に、砂羅は羅刹をまじまじと見た。
《禍人の血族》特有の不思議な力を、砂羅から感じた。恐らく砂羅は香流羅よりも、遥かに強い。
タリムが居ない今、闘いに成れば勝てる気がしなかった。
「あら、嫌だわ。取って喰ったりはしないから、そんなに身構えないで」
愉しそうに、笑みを浮かべる砂羅。
敵意は全く感じられない。
「貴方には、何の怨みもないわ。其れに私は刹那を護れれば、其れで良いのよ。だから、貴方が刹那を護ってくれて、感謝してるのよ」
優しい眼差しを向ける砂羅。
「ほら。お姉ちゃんだって、こう言ってるんだから。戦騎騎士と《禍人の血族》だって、きっと解り合える日が来るわよ!」
「其れは、無理だ」
「其れは、無理よ」
羅刹と砂羅の言葉が、重なる。
「私は彼の敵には成らないけど、香流羅は違うわ」
「どうして、そんな事を言うの?」
「あの子は、憎しみに囚われているわ」
「俺も、そう思う。奴と刃を交えた時に、奴から計り知れない憎しみを感じた」
憎しみに妥協は生まれない。
狂気に染まった炎の様に、相手だけではなく己までもを焼き尽くす。
其れに香流羅の過去には、何か在る様に思えて為らない。其れが何なのかは解らないが、憎しみの根源は其処に在る気がした。
そして恐らく、砂羅は何かを知っている。微笑を浮かべてはいるが、砂羅の瞳の奥にも、憎悪の炎は宿っていた。戦騎騎士と《禍人の血族》は、決して相容れないのだ。
「……さ、こんな所で立ち話も何だから、上がって。御節と御雑煮ぐらいしかないけど、心から持て成すわ!」
砂羅の笑顔は、刹那と同様に屈託がない。其れに、温かかった。
羅刹の警戒心は、何時の間にか解れていた。




