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咎人の詩  作者: 81MONSTER(日本を代表する怪物)ポンコツ犬のタナトス
第六話【食堂】

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 仄暗ほのぐらい室内を、テレビの照明が照らす。


 狭く寒い部屋の空気を、闇に彩られた様に寂しく染めている。部屋の照明は付けてはいるが、どうう訳か薄惘うすぼんやりとしていた。秘めやかに流れるテレビの音量。の音に、カップラーメンをすする二つの音が絡み付く。何とも寂しい音の様でった。


 部屋の中には、二人の若者がいた。どちらも男で、共に貧乏臭い身形みなりをしている。歳の頃は、二十歳前後と言ったところろうか。寒いのかスウェットの下に、服を着込んだ様子だった。どうにも意気地いきじの見られない様子でった。


「金が欲しい……」


 うめく様に、男の一人——今西健吾いまにしけんごが呟く。相方の岸本華きしもとはなは何もこたえずに只、ラーメンをかじりながらテレビに視線を向けていた。テレビの中では、お笑い芸人の司会者が、滔々(とうとう)と人生について語っていた。の様子を華は、醒めた眼で眺めている。日常が詰まらないのか、人生が詰まらないのか、の表情は暗い。


「俺等、いつまでこんな事してるんだろうな……」


 健吾は空になったカップラーメンの容器を、乱暴にゴミ箱に投げ捨てた。暗澹あんたんたる声音。華と同じく醒めた眼をしている。嘱望しょくぼうとはけ離れた場所で生きている所為せいなのか、希望の一切が感じられない。


 深い溜め息をついて、煙草に手を伸ばす。箱の中には、煙草の吸い殻が入っていた。いずれもだ長い。近所のコンビニで、吸い殻を貰って来た物をり分けて、箱の中に詰めていた。ガスの切れ掛かったライターを、何度も擦っている。呆れた様に華は、健吾に視線を送る。


「金がないなら、煙草ぐらい我慢しろよな。そんな、みっともない真似して……恥ずかしくないのか?」


 文句を言いながら、ガスの入ったライターを差し出すの様は、まるで女房の様で在った。


「恥ずかしくない。そんな事より華。今、いくらる?」


 煙草に火をつけ、煙りを肺に送る。の様が身窄みすぼらしい。


「金なら、貸せないぞ。俺も余裕ないからな」


 二人は家賃が三万五千円のワンルームマンションで、共同生活をしていた。


 バイトはしているが二人共、金が無かった。


 り好みさえしなければ、仕事はいくらでもる。けれど二人は何故なぜか、貧乏を選んでいる。夢がる訳でもない。只、の日をり過ごすだけの生活を二人は送っている。何の生産性も無い、蒙昧もうまいしてばかりの人生でった。だからこそ、金が無いのだ。やる気の無い人間に、大金は決して舞い込んでは来ない。


「俺、れからバイトあるから」


「何だよ、華。いつの間にバイト、増やしたんだよ」


「居酒屋の面接、受けたんだ。時給も割りと良いし、週五日ぐらい入れるってさ」


「そんなに働いて、昼のバイトは続けるのか?」


 昼間は本屋で週五日、働いていた。居酒屋で夜も働くとなると、かなりの勤務時間となる。


「勿論、続けるよ。今は兎に角、金が欲しい」


「マジかよ。お前、そんなに金に困ってたのか?」


 間の抜けた事を聞く健吾。華は立ち上がると爽やかな笑みを、健吾に送った。


「お前よりは、マシだけどな」


「うるせぇな……貧乏で、悪かったな!」


 楽しそうに笑う華。


 釣られて笑う健吾。


「今日、初出勤だろ。頑張れよ!」


 手を軽く挙げて応えると、華は玄関の戸口に向かった。


 一人残された健吾は、溜め息をつく。漫然まんぜんとした様子で在る。何か目的が在る様には、とてもでは無いが見えない。暗い表情。意思の籠らない瞳。だらしなく開かれた口元には、先程のラーメンの食べかすが付着している。意味も無く部屋を彷徨うろついては、何やら逡巡しゅんじゅんしている。


 思い立ったかの様に財布の中身をぶちまけるが、五十五円しかない。れが全財産なのか、何度目かも解らぬ溜め息をつく。何とも情けの無い様子で在る。


「仕方がない。遂に、トントンを使うか……」


 トントンとは、半年前に百円ショップで買った豚の貯金箱の事で在る。


「……お。結構、入ってるぞ!」


 期待に胸を膨らませながら、健吾はハンマーでトントンを叩き割った。乾いた音と共に、無惨に砕け散るトントン。


 破片を避けながら、小銭を拾い上げ数えた。


 ——三千六百七円。


「良し!」


 健吾は一人、ガッツポーズを執っていた。


 小銭を財布に詰めて、コンビニに煙草を買う為、立ち上がった。



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