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咎人の詩  作者: 81MONSTER(日本を代表する怪物)ポンコツ犬のタナトス
第一話【化物】

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 幸男は工場の前に佇んでいる。


 怪物の姿から、元の姿へ戻っていた。


 もうすぐ、永井がやって来る時間でる。自分と同い年の永井は、社長の息子とうだけで、何の苦労も無く工場長の地位を与えられている。ゆえに、重役出勤が黙認されていた。


 いつも永井は、就業時間の直前にやって来るのだ。だから、待ち伏せしていたのだ。


 工場は山道に面してそびえていて、人通りはほとんどとって無かった。誰かに邪魔をされる心配も無い。


「もう、来なくて良いって、ったろう。何しに、来たんだよ?」


 永井が幸男を見るなり、睨みけてきた。


 燃えたぎる憎悪を、殺意に結びけて幸男はわらった。自分でも驚く程に、冷徹な声音でる。


「永井。お前を、殺しに来たんだ」


 永井を睨み返した。永井の瞳の奥が、僅かに揺れるのが感じ取れる。明らかに、永井は動揺している。そしてれは激しい怒りと結びいたのか、見る間に険しい表情へと変わっていった。


 以前の自分でったらば恐怖で狼狽うろたえていたが、今の自分には、恐れる物など何もない。


「上等だよ。俺が、殺してやる!」


 幸男の顔面、目掛けて永井は拳を叩きける。頬を撃ちける衝撃が、肌を僅かに揺らす。けれど蚊程かほどにも、効かなかった。どうして今まで、こんな奴を恐れていたのか不思議なくらいだ。気付くと自分が、薄い笑みを浮かべているのが理解わかった。愉悦ゆえつに満ちた笑みだ。


 まで鬱積うっせきした想いを、ようやける時が来た。笑わずには、要られなかった。


「殺してやる」


 永井の腕を掴みながら、幸男は呟いた。強く握り込めば、容易にし折れそうだ。今の自分は人間の力を、遥かに凌駕りょうがしている。


 彫刻刀で、永井の右目を刺し貫いた。彫刻刀を媒介にして、生々しい柔らかな感触が伝わって来る。永井の眼球が潰れる感触だ。心地良く甘美な手触りでる。


 悲鳴を上げる永井の腹を、蹴りける。加減をしなければ、簡単に絶命してしまう。人間は脆い。


 激しく後方へと吹き飛ぶ永井。苦痛に歪んだ表情かおを、恐怖に染め上げたかった。


 ぐに殺してしまうのは、勿体ない。じっくりと時間を掛けて、甚振いたぶって苦しめてやる。自分が味わった以上の辛苦しんくを与えなければ、復讐の意味をさない。自分はずっと、地獄を生きて来たのだ。れを理解わからせてやる。


 倒れる永井の右目を蹴りける。何度も、何度も、蹴り続けた。靴底に触れる感触が、少しずつ柔らかくってく。余りにも気持ちが良くて、法悦ほうえつの笑みが込み上げて来そうだ。愉悦ゆえつの渦中に浸りながら、永井の顔を覗き込んだ。


 右眼球は血にまみれ、グジャグジャになっていた。痛みと恐怖からか、残された左目で涙を流している。良い気味でる。陶然とうぜんとした快感が押し寄せていた。とても、すこやかな気分だ。自分は今、永井を蹂躙じゅうりんしている。殺す事も、の身をぐちゃぐちゃに破壊する事も、自分の意のままに行える。こんなに素晴らしい気持ちは、生まれて初めてでった。


 しゃがみ込み、永井の髪を掴み上げる。ぞくぞくする様な快楽が、脊髄を通して全身を充足してくのが解った。


「許じで下ざいっ。お願いします!」


 涙ながらに懇願こんがんする永井を見て、更なる欲求が沸き起った。そうか……永井はまで、こんな気持ちで自分の人生を支配して来たのか。そう思うと、快楽で陶酔していた心に、再び憎悪の炎がともった。もっと苦しめてりたい。膨らむ想いを抑え切れなかった。


 幸男は彫刻刀を使い、永井の鼻をゆっくりといだ。悲鳴を上げながら、ジタバタと暴れ狂う永井。わざとゆっくりと、長く、永く、痛みが続く様に削いだ。


 堪らなかった。


 心地良かった。


 鼻を失った永井の顔を、なぐける。ぬちゃっ……と、した。拳を舐める永井の血が、生温かい。


 ピクピクと痙攣しながら、永井は小便を漏らしていた。未だ未だ、足りはしない。


「失神するなよ、永井。お前への怨みは、まだまだこんな物じゃない」


 冷淡な自分の口調。


 声にらない声で、助けを懇願する永井。


 幸男はわらいながら、今度は左耳を引き千切った。


「ほら、此処ここにエサがる」


 引き千切った耳を、永井の口の中にじ込んだ。


「喰え」


 永井武に幸男はった。


 幼い頃から自分を苦しめ続けた永井には百万回、殺しても殺し足りない怨みがった。どんなに残酷な仕打ちをしても、ゆるす事が出来ない程の地獄を味わって来た。胸臆きょうおくで増幅する殺意。の程度の地獄では、生温なまぬるい。狂った心には、生半可なまはんかな悲鳴は届かない。断末魔の叫びですら、心は震えないだろう。


「どうした。喰えよ!」


 永井の睾丸に、彫刻刀を突きける。押し寄せる欲求が、最高潮を迎え様としていた。


「お前に喰わされた犬の糞の味を、俺は覚えてるぞ。潰されたくなかったら、早く喰え!」


 永井はゆっくりと、己の耳を咀嚼そしゃくして飲み込んだ。既に倒錯とうさくする様な快感は、消え失せていた。弾切はちきれそうな憎悪と、身を焼く程の殺意が心を満たしてく。もう、我慢の限界だった。


「こいつ、本当に喰いやがった!」


 かつて自分に向けられた言葉を、そっくりのまま返してやる。


 堪え切れなくって、永井の睾丸を滅多刺しにした。刺して抉って、刺して抉ってを、繰り返してく内に心を甘い感触が撫でて往くのが理解わかった。


 睾丸が原型を留めなくなった頃には、永井はショック死していた。


 幸男はわらった。


 狂った様に、嗤った。


 否、うの昔に狂っていた。永井の所為せいで、幸男の精神状態は滅茶苦茶に狂わされていた。


 気がつくと又、怪物の姿に変わってしまっている。


 どうやら感情が最高潮に達すると、人間の姿を保つのが困難な様だ。


 そろそろ残りの奴等やつらも、殺しに行くとするか。


 幸男は工場へと入って行った。



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