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漆
「……3、4」
カウントを続けるレフェリー。意識が鮮明に蘇ってきた。
どうやら一瞬、夢を見ていた様だ。チャンピオンに成る夢を、見ていた。此の儘、夢を見続けていたら、チャンピオンに成り損ねていた所だ。
「……7、8」
どうやら、志穂が目を醒まさせてくれた様だ。
志穂は、何時だって供に居てくれる。何時だって、力を与えてくれる。
志穂が居たから、自分は変われた。
志穂が居たから、強く成れた。
志穂が居てくれたから。
今から、其れを証明してみせる。
——ありがとう。
志穂が付けてくれた灯火のお陰で、心に闘志の炎が再び宿った。其の炎は業火と成って、嵐を打ち消して——魅せる。
「9……」
カウントが止まった。
六がファイティングポーズを執った瞬間、4ラウンド終了のゴングが鳴った。
正直、危うかった。もう少しで、負けていた。身体に蓄積しているダメージは思いの外、甚大だった。だけど、不思議と力が溢れていた。志穂の為に、必ず勝つ。
何が在ろうとも、負ける訳には往かない。




